sep5:Y〜よろず〜ハウンド-4.
元の世界への帰還を控えた俺たち万'zハウンドはマロウド組合からの頼みで在留マロウドからの手紙や小包を預かることになった。
受け取りの場の日々山公園にて、逃げ出した少女。蓬継伊来、公園の帰りに行き倒れていた彼女を保護し伴乃洋食店で気を失っている間に食事をとらせる。その後警察に保護してもらった。
なんでもこの世界に適応していくほど元の世界への帰還が困難になる。なのでそうしない為に伊来ちゃんは最低限しか食事をしない。
かくして、彼女を心配した警官の加狩氏からの依頼でなんとか伊来ちゃんに食事をとらせようと画策するのだが……。
自然と祠がある場所にキィイイーッという車が横滑りする音と共にデコトラ!! アイスクリンと湯気立つワッフルにキャラメルソースが絡められたスイーツ。
「学校の女子が喜びそうな物を持ってきた。まだワッフルも温かい」
伊来ちゃんは無言で首を振る。
「伝のある業者から仕入れた熟成肉で作った牛鍋」
伊来は無言で首を振る。
「スペシャル栄養フレッシュジュースです」
「素材は合法です。ビタミンって光るんですよ」
ビタミンの光り方じゃないだろう。硝子のコップに注がれた黄緑色に光る液体。
「ライムみたいな味と香りだな。これは?」
「スダチ」
「スダチかぁ……」
「無理! 食べたい食べたく無い以前に怖いそれ」
ガチ拒絶。
その後も克彦くんが用意した33種の一口アソート、俺と総一が出前でとった特上寿司も伊来ちゃんは首を振って拒否。全滅だ。次行ってみよう。
さて、用意した料理の数々を棄てるなど罰当たりなので、なし崩し的にこの場に集まった我々で豪華なピクニックを敢行する。
美味そうに食べていれば伊来ちゃんも食べる気がおきるかもしれないし、次の方策を考えるにしても先ずは腹ごしらえだ。
周りも俺たちの意図を察したのか楽しそうに野外パーティーをはじめた。祠の前で手を合わせている克彦くんが目につく。
「ちょっと気になったんだけど、克彦くん。君の連れて来た友達みんたツーブロックなんだけど流行っているのかい?」
「偶然なんだよ。ボクはその時いなかったんだけど六門君達が学校に入った頃たまたま同じ髪型で周りからセット扱いされたんだってツーブロックスリーとかゴンモンブンとか」
ははーん、荒児権伍郎、笹田六門、波羅七文で
権門文、ゴンモンブンか。
そんなこんなで野外パーティーを楽しんでいたが祠の方から少し嫌な気配がして来た。俺は除霊とかも少し嗜んでいる。
「ちょっとデコトラの荷台に入っててくれ、食い物も忘れるなよ」
察しの良いヤツらで何より、理解したヤツ、勘のいいヤツはあまり言葉を重ねずに動くし、良く理解ってないタマや伊来ちゃんも誘導されて荷台に乗り込んだ。
「ナムサンナムサンソワカソワカ……」
一方で俺はハウンドに乗り込み、数珠を取り出しお経を唱え始める。
デコトラの天井が開き、天井が滑走路に変形し、発射台のように上に伸びた。電磁加速充填、悪霊が飛び出すタイミングでハウンドは……。
「工程オールカット発進」
ーーー宙へ跳び出したーーーッ!
にわか仕込みの除霊術で挑発されたソレは、紫色のスライムを気体化させたような見た目をしていた。飛行機雲を思わせる軌跡で俺のハウンドを追ってくる。
ハンドガン二発、放つ。命中するも手応えなし、上昇中に追いつかれ包まれたダメージは軽微。マニュピレーターで殴りかえす。手応えなし。
「類児。今、祠の碑文を読んだ。行き違いで死んだり、取り残されたマロウドを祟らないように祀っている祠らしい」
総一からの通信が飛んできた。
「それにしたって、強いな。外理とか何やらか?」
多少オカルトにも精通している今の悪霊は規模や格の割に強力に思える。
「さあな。七文が言うには何か強い外理力に影響されて活性化したらしい」
「霊的なモノに違いないんだな。精神さえ集中すれば有効打は可能だ」
コックピットのモニターで外を見る。加速度は0になって今が一番高い。
帝都の街に海に山……まだ行っていない所が殆どだ。風がうるさい。計器の警告音も鳴っているはずなのに、妙に静かに感じた。
知らない場所ばかりで、知らないまま帰るのかと思うと、どうにも落ち着かなかった。
それに、伊来ちゃんの事もあるから「これでは気持ちよく帰れないな! 類児コンビでの依頼はコレで最後だ。達者でな」
「おい、何言ってんだお前!?」
自由落下していく悪霊をまとったハウンド。
「集中、集中、集中……パラシュートが使える直前まで集中して殴る。成仏しろ」
胸に確信あり、拳、手ごたえあり、悪霊は霧散した。
5分後、ハウンドから降りた俺は総一と伊来ちゃんに僅かに間を置いた後、告げる。
「俺はここに残るよ。伊来ちゃんには帰る権利を譲るから総一頼んだぞ」
「…………」
「な!? 何言っているの? グズグスしていたら帰れなくなっちゃうんだよ」
黙って考えている総一とは対照的に伊来は信じられない物を見るような目で俺を見る。ガキがやつれてまで人を心配するものではない。
「だからソレで良いって、天涯孤独だし死んだ爺さんの山売ってハウンド買ったし……。それに、タダで返す訳じゃない。これ、他の残留マロウドからの手紙とか小包とか代わりに郵便局に出しといてくれ」
「んー、じゃあ俺も残る。良く考えたら実家から勘当されているし」
「信じられない。なんなのアンタ達」
「野外パーティの途中だったしなんか食おう。ガリガリのまま帰ったらご家族が心配する」
ひょいっと伊来の軽い身体を持ち上げると席まで運ぶ。釈然としない目を向けながら彼女はチビチビと料理をつまんでいる。まるで毒見でもするみたいに、ほんの少しずつ。それでも口に運んでいるだけ、それでも昨日よりはマシだ。
総一が光る液体の入った硝子コップを2個持って来た。受け取りどちらともなくコップをぶつける。ネオンのような輝きがやけに美しいと思えた。
周りでは相変わらず騒がしく、笑い声と食器の音が混ざっている。テーブルの方を見れば克彦君達に伊来ちゃんが少しだけ馴染んでいた。
その中で、俺たちは小さくコップをぶつける。乾杯。
外伝Yーよろずーハウンドをご覧いただきありがとうございます。別視点からスワンプワールドを描いてみたくて執筆いたしました。これからは不定期掲載でアイデアが降りてきたり、掘り下げて欲しい声が来たら描いていく予定です。
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