姫様と銀の魔王
魔王城には恐ろしい魔王がいる。
それは人々の間で絶えることのない真実でした。
魔王はその言葉だけで国を支配しました。
指先で人を殺めることもできます。
視線で、
魔王は
女性を至高の快楽へと落とすことも可能でした。
魔王城には恐ろしくも美しい銀の魔王がいました。
「む、ふーんふふーん。お風呂は好きなのじゃー」
宰相の気に怖気、足元を濡らした姫様は欠片の羞恥も反省も落ち込みもないままに暖かい湯に身を伸ばしていました。
「お、そうじゃ、わらわの兵隊を出さねば。宰相、ジョー大佐を呼ぶのじゃ」
「・・・かしこまりました」
嫌な顔一つ、隠しもせずに宰相はジョー大佐を召集するために立ち上がります。
湯から立ち上がった宰相の体は均整がとれていて、その肌に湯が伝い落ちる姿には色気がありました。
その妖艶な姿を見れば誰もがよからぬ妄想をし、この青年を我が物にしたいと浅ましく願うでしょう。
「宰相、ジョー大佐の部下も忘れるでないぞ」
満面の笑みを浮かべる姫様の頭には可愛らしい脳みそしかありませんでした。
宰相は籠に入れられた、姫様がご所望の一軍を乱暴に湯の中に振り落とします。中から零れ落ちたのは色とりどりのアヒルやガチョウやカモのおもちゃ。
「皆のもの、ジョー大佐に続いて泳ぐのじゃぞ」一際大きいアヒルのおもちゃにキスを一つ落として姫様は好き勝手に浮いているおもちゃに命令します。
ジョー大佐は、先日里帰りをした仲良しの侍女のお土産です。
「大佐は素晴らしい男じゃ。そうじゃ、今日はコロッケが入院したので今宵の伽はジョー大佐に命じる」
宰相は湯の中を歩き姫様に近づきます。
影が落ち宰相を見上げた姫様。
当然、お風呂なので真っ裸です。
「姫様、今すぐにその下らないゴミを処分して差し上げます。まずは姫様の胸を突付いているアヒルから」
「ま、まてジョー大佐は数々の戦場で戦功を挙げた有能な将軍じゃ。熾烈な戦いにも一歩も引かぬ男の中の男じゃ。気安く触るでない」
「気に入らないですね。ゴミ如きが男の中の男とはね、全くイライラする」
宰相は自分の裸を見て照れもしない姫様がアヒルのおもちゃを男の中の男と評価したことに苛立ちます。
「それから、ゴミに向かって大佐なクセに将軍とか言う姫様は後ほどきっちりと教育しますから。まずはそのゴミをよこしなさい」
姫様の可愛らしい脳みそには先に討たれたコロッケの姿が浮かびます。次は優秀な軍人でありながら茶目っ気もあるジョー大佐の危機。
「くっ、大佐は部下を連れて撤退するのじゃ、わらわが宰相を食い止めておる間に逃げてたもっ」
宰相の手が届かないように遠くに投げると、姫様は宰相に向かって突撃し、その体を自身の体で拘束したのでした。
プカプカと浮かぶおもちゃたち。
「ああぁ、なんということじゃ。皆のものジョー大佐をお守りするのじゃ」
宰相にしがみ付きながら周りで浮かぶおもちゃを遠くにやるために体をひねる姫様。
美貌とフェロモンに溢れた宰相にパンツをはかせてもらっても頬を染めぬ姫様。勿論、全裸の宰相を下から見上げても、全裸の宰相に抱きついても、恥ずかしがることはありませんでした。
本当に姫様の教育には大問題があります。
「宰相、おぬしも一時は武人であったのだろう?ならばジョー大佐のような男に恥をかかすような真似はやめるのじゃ」
「・・・」
「さ、宰相?」
「今日は見逃しても良いでしょう。湯冷めしてしまいますよ、体を洗ってしまいましょう」
「う?、うん。そうじゃな」
なぜかご機嫌な宰相に恐怖を覚えながらも姫様は頷くのでした。
湯上りに飲む牛乳は格別だ。
姫様は高らかに宣言をして、全ての牛に祝福を捧げるのが日課になっております。
「今日はなにやら素晴らしく気分が良い」
朝から宰相にお尻を打たれ、愛するコロッケが二つになり(胴体と首)、脅されて足元を濡らした姫様は決して過去を恥じ入り悔やむことはありません。
姫様の長所にみえる最大の欠点でした。
「私も姫様のおかげでスッキリいたしました」
「?そうか深く感謝するのじゃぞ」
「さて、それでは今日の授業は・・・」
「なっ、だめじゃっ今日はお休みすると決めたのじゃ」
「姫様に関する一切の権利は宰相である私にありますので」
「わらわの権利はわらわのものじゃっ」
「姫様、今日の授業は保健体育ですよ。私が特別に実施いたします」
「算数とか歴史ではないのか?なら良い。保健体育とは初めて聞く。楽しみにしておるぞ」
「かしこまりました。姫様に最高の快楽を」
魔王の城には銀の魔王がいました。
その隣には黒髪の姫がいて二人仲良く、いつまでもいつまでも幸せに暮らしていきました。
「な、宰相、お父たまはどこにも銀色などないのに、なんで皆は銀の魔王と言うのじゃ?銀色はむしろ宰相ではないのか?」
魔王の城の銀の宰相。
本当の支配者は、誰?
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