初めてのチュウ?
「……ルド……ルド?」
アニカの声が聞こえる。
ここはフワフワでホカホカで心地よい。
オレはどこにいるんだろう?
天国かな。
死んだのかな、オレ。
それならそれで仕方ない。
前世でロクなことしちゃいないのに、異世界で見た目も能力にも恵まれた野郎に生まれちゃってごめんなさい。
オレなんかがチートに生まれちゃってごめんなさい。
色々と持て余すばかりで、ちゃんとできなくてごめんなさい。
心地よいモノにオレは目を閉じたまま身をゆだねる。
唇にふんわりと温かな感触。
そして、口の中に流れ込んでくる何か。
途端に体の中を駆け巡る力強い何かに驚いて、オレは目を開けた。
視界に入ったのは胸の谷間の向こうから覗き込む、心配そうな表情のアニカの顔だった。
「ルド? 目が覚めた?」
アニカは優しく語りかけてきた。
「ルドガーさまは気を失ってしまわれたのです」
心配そうな様子のクリスティンさまの声がした。
「魔力枯渇を起こされたようです。ご気分は?」
アズロさまの不安げな声がする。
そうか、魔力枯渇か。
チートな魔力を持っているオレでも、無尽蔵にいけちゃうわけではなかったんだな。
魔力の使い過ぎで倒れたのかぁ。
カッコ悪い。
「だいじょうぶ?」
レイ、大丈夫だよ。
ちょっと疲れちゃっただけだから、少し休めばもとに戻るよ。
『ルドガーさまは、魔力枯渇を軽く考えてらっしゃるようですが。アナタ、死にかけましたよ?』
えっ⁈
そうなの⁈
オレ、死にかけたんか?
AIセツ、そういうデリケートな話は、もう少し慎重に言おう?
「ルド。もう少し、ポーション飲む?」
アニカの声がして、それにオレはうなずいた。
うなずきはしたが……まさか、アニカの顔が近付いてくるとは思わないじゃん?
「んっ……」
変な声が出たのはオレ。
アニカはオレの唇に自分のソレを重ね……流れ込んでくるポーションの気配。
……ちょっと待って?
えっ? ポーション? 唇?
えっ⁈ もしかしてオレってば今、アニカから口移しでポーション飲ませてもらってんの⁈
アニカの顔がゆっくりと離れていく。
目の焦点がはっきりとしてくるのと同時に、アニカの顔がはっきりと見えた。
そして現状の把握がくっきりしてくる。
オレ、いま、アニカとキ……。
「ルドは一人で頑張り過ぎだよ?」
アニカの声が近い。
「一人きりで頑張ることなんてないのに。ルドは何でもできちゃうから、私なんて役に立たないと思ってるかもしれないけど……」
そんなことはない。
アニカはオレにとって大事な――――
「私にできることなんてほとんどなくて……だから魔法の研究をしてるんだけどね」
え、魔法研究ってオレのためだったの?
単純に魔法好きってことじゃなくて?
「このポーションも、ルドのために作ったんだ。ようやく役に立てて、よかった」
ふふっと笑うアニカは、いままで見てきた中で一番きれいだった。
イラッとくるほどモテて、優秀な魔法使いで、ロボット生命体のお守りにも宇宙魔族との戦闘にも困らんほどチートな奴として異世界に生まれたオレ。
とんでもなくオレにとって都合のよい世界だけど、前世のコミュ障引きずったままで生きていることは、ご褒美なんだか罰なんだか分からなくて、戸惑ってたけど。
そんなもんに意味を求めたって、意味はないのかもな。
ただ、これだけは言える。
オレ、生まれてきて良かったぁ――――――――
~おわり~




