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空飛ぶレイちゃん

 翌朝。空はすっきりと晴れていた。


 これは飛行日和。


 我々は屋敷を後にして、魔法陣で騎士団の練習場へと移動した。


 タミーさんと家はもちろんお留守番である。


 オレとアニカ、それにレイ+セツが青白く光る魔法陣から出ると、そこには平らにならされた土地が広がっていた。


 赤いおリボンと大きな目を輝かせながら、レイは練習場をキョロキョロと見まわしている。


 練習場には巨石もないし、目立つ大きな建物もない。


 騎士たちが練習に使っている道具類はあるが、あとは広大な空き地だ。


 空き地の周りには木が茂っていて、外からは中が見えにくくなっていた。


 木々と空き地の間には簡易なものではあるが防護壁も張ってある。


 街からも、王城からも遠い場所にあるから、いろんな意味で安全だ。

 

 だが何故かカイル王子とお付きの爺やがいた。


「さぁ、ここなら安心して暴れられるよ、レイちゃん」


 胸を張ってカイル王子が宣言する。


 いや、王太子がいる場所で大暴れされたら困るでしょう。


 にこやかに見守っている場合ですか、爺やさん。


 なんか言ってやってください。


 何も言わない爺やさんの代わりにカイル王子が言う。


「私も見ているから頑張ってね、レイちゃん」


「ありがと、カイル」


 満面の笑みを浮かべるカイル王子に、ベコンと頭を下げるレイ。


 スカートの両端をつまむようなしぐさも加えた、カーテシーもどきの礼だ。


 レイの体は服と一体型になっているので実際にはつまめない。

 

 それでも昨日アニカとタミーさんに仕込まれていたカーテシーを披露出来たレイは、得意げな顔をしている。


「私のために覚えてきてくれたのか?」


 カイル王子は、ハッとした表情を浮かべと、感動に震えながらくねりだした。


 うんうん、小さな頃は毎日が感動だよね。


 お兄さんにも覚えがあるよ。


 相手は人間だったけどね。


 そんな小さな恋のメロディ的なモノを丸っと無視して、アニカが異性よく言った。


「さぁ、レイちゃん。思い切り実力を見せてちょうだいっ!」


 アニカは片眼鏡にガラス板をくっつけたような例のヤツでレイの状態をチェックしている。


 手にはペンとメモ帳。


 深い緑色のフード付きのマントを羽織ったアニカは、すっかり研究職の魔法使いモードだ。


『レイさま。石を投げるのはナシで、というルドガーさまとの約束を忘れないでくださいね』


「ん、わかった」


 セツに言われてコクンとうなずくレイが、どこまで理解しているかは分からない。


「私はこの国の王太子として、しっかりと見届けよう。レイちゃんの実力を」


 いや、それ以前にカイル王子は別枠でしっかりしようか。


 レイに流されて、石を食べようとしたり、土を食べようとしたりするのを止めるとかさ。


 今日も無駄にキラキラしている王子は、レイへのアピールに熱心だ。


 爺やはそれを温かく見守っているが、それでいいのか?


「さぁ、やっちゃってレイちゃん」


「あいっ」


 アニカに促されて、元気な返事をしたレイが勢いよく駆け出す。


 縦横無尽に駆け回っても、何もない広い敷地なら安全だ。


 土埃凄いけどな。


「おお、凄いスピードだ」


 王子が感動に頬を赤らめている。


 相変わらずレイを見るとクネるんでキモイんですが、爺やさんが何も言わないので放置です。


 大きくなったり、小さくなったり、バーベル代わりに爺やさんを持ち上げてみたりとやりたい放題だ。


 バーベル代わりにされた爺やさんを羨ましそうに見ていたカイル王子も、小さくなったレイに持ち上げてもらって満足そうだ。


 子どもはバランス感覚がいいなー、と微笑ましく見ているしかない。


 爺やさんからの突っ込みが入らない以上、一般ピープルの私たちは見守るしかありませんよ。ハッハッハッ。


 などと思っている間に、レイがクルンと宇宙船に変型した。


「おお。異世界の乗り物か?」


 宇宙船が分からなくても萌えてしまうのが男の子なのだろうか。


 カイル王子が大興奮で宇宙船型のレイに乗ろうとしている。


 もちろん、中へではなく上にだ。


 オレたちは全力で止めたがな。


 安全装置もないのに無茶しないでくださいよ、未来の国王さま。


 地上に残された未来の国王さまは少々不満げな顔をしていたが、フワッと浮いてビュンと飛んだレイに表情を変えた。


 興奮と驚きに呆然としつつ、レイの姿を追って空を見上げている。


「うわぁ~。本当に空を飛んでいる」


 カイル王子は素直な感想を口にしながら、顔ごとレイの動きを追っている。


 アニカは一生懸命にペンでメモ帳へ何かを書きこんでいるが、そんなことをして意味があるんだろうか。オレにはよく分からない。


 なんせ研究者は実地で魔法を使っている人間とは物の見方が違うからな。


 レイは気持ちよさそうに空を飛んでいる。


 ビュンと一層加速すると空高く飛んで、やがて見えなくなった。


「えっ⁈ レイちゃんは、大丈夫なのか⁈」


 空を見上げてカイル王子が心配そうに叫ぶ。


 その点はオレもちょっと分からないな。


 本当にレイの姿が見えなくて、ちょっと不安になる。


 宇宙空間に出て行ってしまったのだろうか?


 などと皆で空を見上げていたら、今度は落ちてくる勢いでレイが戻ってきた。


 おいおい、あのスピードじゃ地面に刺さるんじゃないか?


「えっ⁈ 落ちる!」


 アニカが叫ぶが早いか、ドーンという大きな音がして地面が揺れた。


 もうもうと上がる土煙。


「レイちゃんっ!」


 カイル王子が叫びながら駆け寄ろうとして、爺やに止められているのが目の端に見えた。


 オレはレイが落っこちた方向へ一目散に駆け出す。


 アニカが後ろについてきているのは分かったが、まずはレイの状態を確認しなければ。


 駆け寄った先の土煙が風に運ばれて消えると、そこには宇宙船型への変型を解いたレイがゴロンと転がっていた。


「レイッ!」


 オレは思わず叫んで駆け寄る。


 膝をついたオレは、土まみれになって地面にめり込んでいるレイを抱き上げて体をあちこち確認した。


 傷付いてはいるが、折れたりしている場所はないようだ。


「レイちゃん、大丈夫⁈」


 少し遅れてやってきたアニカが、オレの横からレイを覗き込む。


「うぅ~ん、だめ」


「どうしたの? どこか痛いの?」


 アニカに聞かれたレイは、息も絶え絶えに答えた。


「おなか……すいた」

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