リバース・2
警察に捜査の譲渡を終えると、ものの数分で私達は解放された。
本来ACTは捜査から処理までの行程全てを終わらせるのだが、警察からの要請ということもあり事後処理は向こう持ちになった。
リバースによって作られたフラスコは、念のためはじめさんが再び鑑定したが、制作主は分からなかった。
現在は、行き帰りに使用した借りていた警察の車両を返して、徒歩で支部まで戻っていた。
「あ!言ってなかったけど、君ら一ヶ月後位に二週間研修ね」
「何処でやるんですか?」
「ここ、特別講師に来て頂く感じだよ」
普通の研修ならこちらが向かう形のはずだ。
となると、講師は特定の拠点を持たないタイプだろう。
となるとほぼ一択だ。
「何か質問とかあったら受け付けるけど」
「はい」
「講師の人って第二の蓮さんより強いですか?」
「うん、間違いなく」
ACTの現エースより間違いなく強い人、多分それはあれしかない。
「え!?じゃあもう確定じゃないですか…」
「ンフフ、頭が高いって言われちゃうかもね」
何故かは知らないが、質問の答えを聞いたはじめさんの顔が真っ青になっている。
あまり二人の会話に混ざらないのでわからないが、どうやら【アルテラ】の人は相当ヤバいらしい。
「あ、俺達はここ曲がってご飯食べに行くから。また三日後ね」
「はい、お疲れ様でした」
二人は通りかかった繁華街にご飯を食べに行くらしい。
楽しそうに話しながら食事へと向かう二人を、気づいたらただぼーっと眺めている私。
孤児院育ちという環境のせいか、個人の気質か、私は周囲に馴染む力がない。
ただし普通への憧れはある。あんな風に私もいつかは誰かと仲良くなれるのだろうか。
(今はまだ無理かな)
二人の姿が消えて、現実に帰される。
意味のない悩みをため息に変えて吐くと、少しだけ空を仰いで私は帰路についた。
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「それで話って?」
仕事の帰り際、立ち寄った繁華街の中華料理屋の角、平日の昼過ぎという事もあり人がおらず、踏み込んだ話が出来る最適のロケーションだ。
「はじめはリバースとしての生存目的が特にないんだよね?」
「はい、能力を活かした仕事がしたいとは思いましたけど、あまり変化は無いですね」
リバースは能力の発現時、大なり小なり何かに執着する様になる。
それは基本的には能力の強さに比例し、【ステージ】が3、6、9のリバースは特にその執着がわかりやすい。
「能力の強さの基準に【ステージ】って単語が使われてる様にさ、力は人としての何かを狂わせるんだよね」
「はじめ、多分君の執着は【再生】のタイミングで起きる」
「あの…再生って?」
いきなり知らない単語が出てきて、反応に困ってしまう。
隊長は俺の反応を予想していなかったのか、目を見開いたまま静止している。
「…知らなかった?」
「はい」
「蓮ちゃんに鑑定した時に出なかった?」
「出ませんでした」
「マジか…」
どうやら隊長は俺が蓮さんに鑑定した時に、【再生】について知ったと思っていたらしい。
恥ずかしすぎるだろ、と頭を掻きながら隊長がぼやく。
少しだけ申し訳なくなってきた。
「まあいいや、【再生】は簡単に言うと能力の進化だね。単純に能力のスペックが向上するのと、使い手が使いやすい様に能力が少しだけ改変されるわけ」
「なるほど」
「まぁそこが本題じゃなくてね、肝心なのは再び能力が生まれ変わるって事」
再生という文字通りのものなら、今の能力とはある種別物になるという事。
今現在はリバース化に伴う執着が無かったとしても…
「再生が起きれば執着が発現する可能性がある…」
「そう」
リバースの執着は社会問題になるほどのもので、ACTやアルテラがいる日本でさえ、リバースによる犯罪が起きてしまうのは執着による物が大きい。
自身が犯罪者になるとは考えたくも無いが、可能性はゼロじゃ無い。
「悩んで欲しいわけじゃ無いんだけどね、けど」
「知ってると知らないとじゃダメージが違うって事ですよね」
「流石の理解力だ」
おそらくだが、一ヶ月後の研修はリバースとしての戦闘技術を養うのが目的だろう。
その前に、隊長は俺にリバースとしての自分を考えて欲しかったのかも知れない。
たまに気持ち悪いが、こういう所は素直に尊敬できる。
「まぁ、もうここで話す事もないし帰ろうぜ」
何やかんやで店に長居してしまった。
会計を済ませて外に出ると、二人揃って体を伸ばす。
長く座っていたせいか、それとも悩みのせいか、人通りの減った繁華街の空気は心地よかった。




