リバース
言っていませんでしたが、章の区切りでリメイクするつもりです。
未完成品ですが、お楽しみください。
住宅街を駆け抜けて2分、たどり着いた立て籠りの現場は既に厳戒態勢が敷かれており、警察と野次馬でごった返している。
事件が発生した銀行は、外からは中の様子が見えず、包囲はしたものの警察達は下手に動けずにいた。
「はじめ、まずは【鑑定】で中の状況確認して」
「もう見てます」
能力を使用した事ではじめの瞳が蒼く発光する。
【鑑定】は時間制限の能力で、使用時に集中して観た物の情報を得られる。
はじめの目には今、犯人の個人情報と壁の先の状況が映っている。
「犯人はリバースではないですね。ですが、手に持っているフラスコ状の凶器はリバースが生み出した物で、強い衝撃で破裂して周囲に強い毒性物質を撒くみたいです」
「地面に叩き付けて使う感じかな」
「はい、おそらく。言うまでも無いですが犯人は違法で製造された拳銃も持ってます。俺は周囲に協力者がいないか観てくるので、犯人はよろしくお願いします」
「待て、人質と犯人の配置は?」
「肉壁は作ってません!人質は全員、姿勢を低くして手を後ろに回してるだけです。ですが一人だけ犯人に近い人質がいるので気をつけてください」
伝えることだけ伝えると、はじめは銀行の周囲を調べにいった。
比較的長めな茶髪と低身長が相まって、走り去る姿はどこかリスっぽさを感じる。
練は現場に入った時に貰った内部情報で作戦を立てる。
(犯人は今現在の情報だと素人一人、後ろから近づければ制圧は容易かな)
「後ろから近づきたいんですよね?私が囮になりましょうか」
「………いける?」
頭の中の情報が他人の口から出てきて練は戸惑うが、かえでを囮にするのは正解だ。本人もやる気の様だし囮は彼女に任せよう。
「勿論」
「なら合図を出すまで入口付近で待機してて、合図を出したら突入、なるべく犯人を刺激しない様に意識を逸らしてくれ」
「了解」
作戦を決めた練は裏口へと回って、銀行内部に侵入する。関係者用の通路から窓口の前に来ると犯人の姿が見える。
見た目は三十代後半といった感じの男、キョロキョロと周りを警戒しているがこちらには気づいていない。
入っても問題はなさそうだが、こちらに気づいた人質の反応から犯人に気づかれたくは無い。
スタンガンを取り出しながら、かえでに突入の合図を出す。
「動くな!!」
自動ドアの開閉音と共に犯人が叫ぶ。
なるべく自身からの音を消して練は移動する。犯人、人質共にかえでに意識を取られている隙に遮蔽まで移動する。
「武器を置け!!」
かえでは持っていた武器をゆったりとした動作で地面に置くと、両手を上げて敵意が無いことを示す。
「これでいい?」
「話すな!」
「話すなって言われても、あんたが電話に出ないから人質の解放の交渉に来たんだけど?」
「…こいつがどうなってもいいのか?」
犯人は近くにいた人質に拳銃を向けてかえでを脅す。
「なんだって?もっと大きな声で言ってもらっていいか?」
「こいつがどうなってもいいのか!!」
「うるさっ」
犯人はかえでの挑発に苛立って、確実に視野が狭くなっている。練は犯人から最も近い遮蔽物までの移動を終えると、再び様子を伺う。
(距離は五メートル位、銃をかえでに向けるまで待ちかな。)
「大体、武装もしていない私に何ができるっていうんだ。早く要求を話してくれないかな?」
「ならまずお前が人質になれ」
「悪りぃ、声が小さくて聞こえなかった。もう一回言ってくれ」
かえでの態度に堪忍袋の尾が切れたのか、遂に犯人はかえでに銃を向けた。
「女!お前が人質になれって言ってんだよ!!」
瞬間、かえでと練はほぼ同時に犯人に向かって突撃する。
「【イージス】」
犯人がパニック状態で拳銃を乱射するよりも早く、かえでの前方に半透明の壁が展開される。
乾いた発砲音と共に、まばらに飛んだ弾丸は全て【イージス】に止められる。
銃が効かない事に慌てた犯人は、今度はフラスコを投げようとする。
「あ?」
しかし時すでに遅く、練は左手でフラスコを掴むと、右手に持っていたスタンガンを犯人に押し付ける。
「アガッ!」
バチバチという音ともに、犯人の身体に電流が走る。想像を絶する痛みに犯人がのたうち回っている間に、練は拳銃とフラスコを回収する。
「かえで」
「わかってる」
まだ電流の痛みが抜け切っていない犯人を、かえではうつ伏せにして拘束する。
流れるような作業で手を後ろに回して、手錠をかけた。
「犯人確保」
数秒後、警察官が流れ込み立て籠り事件は収束した。




