08
武器屋は【ナビゲーション】で探せるので、迷うこともなくたどり着けた。
「すみません。冒険者なんですが解体用のナイフを探しているんですが、ありますか?」
「んん? あるぞ。……初心者か? なんの装備もなしで……武器と鎧はどうした」
「俺は格闘家なのでこれでいいんです」
「いいわけあるか。格闘家でも付与のかかった武道着を着るし、拳を守るために手袋などをするだろう。そんななにもない状態で魔物と戦えるのか」
「野犬程度なら勝てましたけど……そうですね、その手袋と武道着は幾らくらいするものですか?」
「ふん、人の話は聞けるようだな。硬化の付与された手袋が両手一組で銀貨1枚、防刃の付与された武道着が同じく銀貨1枚だ。それと解体用ナイフが銅貨10枚だな」
ナイフがやけに安いのか、それとも手袋と武道着が高いのか、相場が分からないシュンは言われるがままに支払った。
手袋は革製だが、拳を守ると言うだけあって鉄のように硬かった。
なのに可動部分は柔らかいので、少し感触が不思議だ。
恐らく錬金術によるものだろうと当たりをつける。
武道着も普通の布製なのに防刃効果があるというのだから、不思議なものだ。
これもきっと錬金術の付与がかかっているのだろう。
恐らく値段の差は錬金術の付与の有無で決まっているのだろうと、シュンは想像する。
ナイフは普通のものより厚手で、魔物を解体するためにあるものだと判断できた。
それをアイテムボックスにしまうと、店主は驚いて二度見してきた。
「アイテムボックスか、驚いたな。ただの初心者じゃないのか」
「ただの初心者ですよ」
武道着と手袋を身に着けたシュンは、強くなった気分になった。
とはいえ、そろそろ日が傾いてきた頃。
街灯が見当たらないし、夜になったら基本的に休むのだろう、みな宿や酒場に向かい、街の門も締まり始めていた。
シュンは今日の仕事は終わりにして、宿に向かうことにした。