07
冒険者ギルドの依頼ボードにはたくさんの依頼が貼られている。
残念ながら手紙の配達のような依頼は見当たらなかった。
シュンはどのくらい自分が戦う能力があるのか、護身のためにも確かめておく必要があると考えて、敢えて討伐依頼を選んだ。
もちろん難易度は低いものを、だ。
「すみません。ワイルドドッグの駆除依頼を受けたいんだけど」
「え? あの、それはいいですが依頼料しか出ませんよ?」
「? はい。それでいいです。俺、今日冒険者になったばかりなんですが、受けられますか?」
「もちろん。受理しますね、カードを提示してください」
「どうも」
カウンターで事務処理を終えたら、早速、ワイルドドッグ――野犬狩りに行くことにした。
なぜか「あいつワイルドドッグ狩りの依頼を受けたぞ」と後ろ指さされているのが気になったシュンだが、初心者ゆえ理由が分からない。
気にしても仕方ない、と依頼に邁進することにした。
野犬ならばこの街に来る途中で見かけていた。
【全周視界】スキルは360°を見ることができる視覚スキルで、常に発揮することができる。
最初の街からこの街ヘインズワースまでの間にあったものは大体、見えていたのだ。
その中で魔物もちらほら見えていたし、おおよそ回避しながら走ってきた。
今度は積極的に野犬のみを狩る方針で行けばいい。
シュンは街を出ると早速、野犬を探して軽く走った。
時速40キロくらいで走りながら早速、最初の野犬を発見する。
「よし、腕試しだ。いくぞ!」
グン、と加速して一気に時速80キロにまでもっていくと、野犬との相対距離はあっという間に縮まった。
ワイルドドッグは急接近するシュンに気づくもそのスピードに驚き、噛みつこうと口を開いた。
咄嗟にシュンは腕で犬の噛み付き攻撃を受けてしまったが、【物理装甲】が効果を発揮しているため傷ひとつつかない。
痛みもなかった。
――なるほど、犬の噛み付き程度じゃ怪我はしなさそうだな。
シュンは自信を持って拳を繰り出した。
ドグンっといやな感触とともに野犬が吹き飛ぶ。
地面を転がる野犬は悶絶しながら、息絶えた。
「そっか。【格闘】スキルのおかげで喧嘩ひとつしたことないのに、パンチが上手く打てるのか」
自然と身体が動いたことに感動すら覚えたシュンは、討伐依頼の証明のためにワイルドドッグの尻尾をブチリと引き抜いて、アイテムボックスに入れた。
「しまったな、ナイフを買っておくべきだった……」
いまから街に戻って買うこともできるが、引き抜くことでも構わないと知った今では手間に思える。
シュンはそのまま野犬を狩り、尻尾をブチブチと引き抜くことに専念した。
結果、2時間ほどで辺りの野犬は絶滅した。
「……これじゃどのくらい俺が強いのか分からないな。少なくとも野犬程度には負けないことが分かったから、それでいいか」
冒険者ギルドに戻ったシュンは、受付に依頼完了を報告した。
「え、もう終わったんですか? 何体くらい狩られましたか?」
「ちょっと待って、いま出すから」
アイテムボックスから野犬の尾をドサっと山積みにすると、受付のお姉さんは「ひっ」と息を呑む。
たった2時間で狩れる量ではないし、なにより切り口がなく引っこ抜いた血塗れの尻尾が山になった積み上がった光景は一種のホラーである。
周囲で面白半分で眺めていた連中も流石に度肝を抜かれた。
「あ、あの……数えますので少しお時間をいただけますか?」
「はい」
その数、53匹。
ベテランならばいざ知らず、初心者が狩れる量ではなかった。
「では一匹につき銅貨5枚ですので、銀貨2枚と銅貨65枚になります」
「どうも」
依頼料を受け取り、シュンはナイフを買いに武器屋に行くことにした。




