第十七話:背尾つかさは本気出す
「瀬尾つかさ」だと同姓同名の人がいるとの指摘を受けたので、漢字を少し変えました。
背尾という人も世尾という人もいますが、姓名完全一致じゃなければご容赦願います。
火の中でちょこまかと動き回り温度を調節してくれるクマちゃんをうっとり眺めながら、鍋を火にかける。沸騰したお湯の中に、少し湯をとり水を混ぜて温度を下げると、そこにナオリ草の葉と茎を刻んだものを投入。
あれ、刻んでいると気が付くけど、ナオリ草によく似ているけれど葉っぱの形が少し違うのが混じっている。間引いているんだから、当然種類の違う花が混じって咲いたら抜くよね。これは薬草とは効果が違うかもしれないから除けておこう。
そんな風に検品を行いながら、しっかり同じ大きさになる様に茎と葉を切り分ける。
今回は茎は茎で煮出して、葉は葉だけで煮てみる。
カレーなんかを作るときに野菜の大きさを揃える事に気を付けると思うけど、同じ大きさなら同じタイミングで熱が通る。一部が煮崩れているのに別のは生なんて事を避けられるのだ。だから、サイズをそろえるのは大切。
さらにお湯の掛け方も一手間掛けてみる。沸騰させないという事ならば鍋を二重にして湯煎したらどうなのかな、と。最初に沸騰するのは外側の鍋のお湯なので内側の鍋を管理するのは楽になるはずだ。
干して乾燥させた葉も試してみたいけど、これはちょっと時間がかかるので後日。そこで並行して細かく刻んだ物を、フィルター代わりのきれいな布の上に山盛りにして、カップの上にかぶせて一滴ずつ熱湯を垂らすなんてことも試してみる。ドリップ方式だ。
ようは、沸騰させると変質するお茶を、低温でなるべく濃く抽出したいという事なのだから、こんな方法で楽に質を上げることができるんじゃないだろうか。
水出しとか、サイフォン方式も試してみたい。
そんな風にウズウズとしながらいろいろ試していると、通りから大きな声が聞こえる。
「たぁまご~い、たぁまごっ」
おいもだよぉ、おいもっ!みたいな節をつけているけど、たまご売り?
わたしがクマたちと顔を見合わせて一緒に首をかしげていると、タバサさんが厨房に入ってきた。
「つかさ、たまごを料理に使うなら買っておくかい」
「中央広場の辺りの市場でも卵売ってましたけど、売りにも来るんですか?」
「そうだよ。少し古くなってきたら売り切っちゃいたいだろ。そういう物は売って回る事もあるんだ」
やっぱりこの世界の商売、ユルい。
でも卵があればお菓子がつくれる。ひいろ様にもお菓子作ってあげる約束してたし、高くなければ買おう。
「買います。ミルクもあったら嬉しいですけど、ありますか?」
「ミルクは裏に植えてあるから持っていきな、じゃ、卵屋呼び止めるよ」
「買ってくるので火加減見ててください」
「あたしが買ってくるからいいよ、実験みたいになってるじゃないか。代わりたくないよ」
そう言ってタバサさんは窓から卵屋を呼び止めて一山買っている。8個ほど入って角銅貨を払っているので、日本に比べるとちょっとお高い食材になるみたいだ。大事に使おう。
しかしミルクが裏に植えてあるとはいったい?
聞いてみると、どうやらこの世界ではミルクと言うのは牛や山羊の乳ではなく、ミルク草という草の物が主流の様だ。夏に凍らせてパキッと二つに折って食べるアレみたいなのが、とうもろこしみたいに生えている。もいで絞り出せばコップ一杯分のミルクになる。まぁ、ココナッツミルクだって植物性のミルクだし、気にしない。
プルルン樹の枝でかき回して湯煎とドリップのナオリ草茶をジェル状にすると、卵とミルクと小麦粉と砂糖を用意してクッキーを焼く準備をする。オーブンじゃなくてフライパンで簡単に焼いてしまおう。
そこでふと抽出をおえたナオリ草が目に入る。
茶葉、みたいな物だよね。少し入れたら風味付けになるかな?




