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最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます  作者: あまうい白一
第6章

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15話 昇った先

振り落ちる飛沫の中を駆け抜ける感覚を、ローリエは味わっていた。

 

 ……これは中々……逆らう力が強いわね……!


 後ろ向きに進もうとする道の上を無理やり駆けるような感覚だ。


 それを、アクセルの背中にいるだけで、ローリエは感じている。

 

 実際に走っているアクセルは、自分以上に抵抗を感じているだろう。けれど、

 

「――!!」


 止まる事は無い。あっという間に中間にある「2」に触れ、更に飛ぶ。

 

 ……ここまで四秒もかかってない……!

  

 あっという間の速度だ。

 チェックポイントに触れる際、片手を離すだけでも、怖い程に。けれど、

 

 ……そこで怖がったら、頑張ってるアクセルに申し訳が立たないでしょう……!!

 

 その気持ちと共に、ローリエは、目をつぶることなく、前を見ていた。

 

 だから、それ(傍点:それ)が来るのも、分かった


「……!? 上から木が……!」


 降ってくる。


 上流のどこかで落ちたのだろう。

 

 枝というには太すぎる、丸太と言っていい木の一部が、上空に見えたのだ。だが、それはアクセル達にも見えていたようで、


「ローリエ、デイジー。このままいくぞ。捕まっていてくれよ」

「え、ええ」

「おうよ、親友! 思う存分動け! 姫様の固定は任せろ!」


 デイジーがそう言った瞬間、自分とアクセルの身体を結ぶ縄が一層光輝いた。

 

 強化されたのだろう。

 それを見てからアクセルは、

 

「飛ぶぞ……!」


 今までで一番の跳躍をした。

 

 まるで、弾丸が発射されたように、真上へと飛び上がり、そして、体を回転させ、

 

「……!」

 

 飛び蹴りの要領で、丸太に足を激突させた。

 

 ――ドパン!

  

 という派手な音と共に、アクセルの脚は、そのまま濡れて重いはずの樹木を砕き切った。


 当然、足を振り回したことで、その衝撃は自分にも伝わり、身体が振り回されようとするが――

 

 ――ググッ

 

 と、デイジーが作った縄と、自分の身体をガッシリホールドしてくれるアクセルの手のお陰で、離れることは無かった。

 

 そして、樹木を蹴りはらった先には、

 

「ローリエ! 最後だ」

「……ッ!」


 オレンジ色に光る「3」があった。

 

 即座に自分はそれに触れる。すると懐の、神書は輝きを見せて


【チェックポイント、全達成】


 との文字を刻んだ。

 

「良いわアクセル! このまま、あの光の渦に入って」

「あいよ!」


 アクセルの跳躍により、自分たちは光の渦に突っ込んだ。

 

 そしてローリエたちは、光に包まれていき――、


【道程奉納・完了。三名を簡易神域へ】


 滝の直上から、光と共に姿を消すのだった。



滝の上の渦に突っ込んでから数秒。

 最初に俺の目に飛び込んできた景色は、

 

「……森と泉?」

 

 新緑の木々が辺りを囲む、静かな泉だった。


 先ほどの大瀑布の轟音が嘘のような静けさ。


 空気もどこか透き通っているような感覚がある。

 

 足元には地面があり、俺はそこに立っている。

 湖畔、というべき場所だ。

 

 そして、目の前にあるのは、浅瀬だ。

 嵩としては、足首程もないだろう。そこの砂利まで見える透明な水があった。


 先ほどまで近くにあったはずの滝は、姿は勿論、音すらなく。静寂な泉のみがあった。

 

「やった……わ。ここが、精霊神の泉よ」


 静寂の中で、隣からそんな声が聞こえた。

 

 見れば、これまたいつの間にか背から降りていたローリエが、地面に座った状態で、涙を目に浮かべながら泉を見ている。

 

 その上で、先の台詞が出たという事は、

 

「姫さん。到着できたのか、オレたちは」


 俺の隣で、人間形態に戻ったデイジーが聞くと、ローリエはこくりと頷いた。

 

「ええ。ココこそが、ずっと望んでいた『精霊神の泉』よ」


 ローリエは、とても嬉しそうにそう言った。そして、


「ありがとう、アクセル。ここまで連れてきてくれて……」


 こちらの手をぎゅっと掴んできた。

 

 感謝の気持ちが伝わってくる。

 

「いやいや。運び屋としての仕事を、果たせてよかったよ。……さあ、立てるか」

「ええ……」


 握手しつつ、彼女を立たせて、魔導椅子に座らせる。


 ……いつまでに地面に座っているのも具合が悪いだろうしな。

 

 と思いながら、ローリエの補助をしていると、

 

 ……ん?


 目の端。

 ふと、景色にそぐわない、不思議なものを見つけた。

 

「なあ、ローリエ。あの甲冑は、なんだ?」


 それは鈍い銀色をした、大柄な全身鎧だ。


 鎧としては少し古いが《騎士》などの職業者が愛用する板金鎧タイプのもの。


 それが、泉の彼方に起立している。

 

 周囲が自然物だからこそ、金属の色が浮かんで見えた。だから聞いたのだが、


「え……分からないわ。なにかしら」


 ローリエは首を傾げた。

 彼女でも知らないようだ。

 

「前に来た時は無かったのか?」


「なかったし。今まであんなものがあったっていう記録もないわよ」


「姫さんがそういうってことは、誰かが忘れてった物、ってことはないよなあー。あんなの忘れたら、目立つし」

「ええ。忘れ物だなんて出来るほど、ここに入って気を抜くことはないもの。神様の領域なんだし」


 ローリエは、ううん、と目を細めて鎧を見たあと、

 

「うーん、とりあえず、分からないものは置いておいて。やるべきことを済ませましょうか」

「ああ、まあ、そうだな」


 ここに来た目的は、そもそもローリエの身体を治すためだ。

 

 であるならば、その目的はさくっと達成してしまうのが吉だろう。

 

「ちなみに治す方法はどうやるんだ?」


 皮算用になるのも良くなかったので、具体的な事はここに来てから聞こうと思っていた。だから聞いたら、


「この泉に二十四時間以上、顔から下の身体を入れるのよ。それで、泉の魔力を体に循環させて、よどんだ場所を調整する感じね」

「足だけじゃなくてほぼ全身浸かるのか」

「ええ。この手の呪いって全身を蝕んでいて、症状が足に出ているだけだから。そうしないといつまでたっても治らないの」

「姫さんの言う通り。錬金術で薬を作るときも、そういう所気にするんだよなあ」


 ローリエのいう事にデイジーも同意している。

 医療系の知識は、基本的には応急処置程度しかないので、呪いの治療など専門的な事を聞くのは何とも面白いものだ。

 

 そう思いながら、

 

「じゃあ、このまま浅瀬に寝転がる感じか?」

「そうね。水温も、これまで通りなら、そこまで低くないだろうし。……ちょっと触って確かめてみるけど」


 魔導椅子を操りながら、ローリエは湖畔の淵に立つ。

 

 そして手を伸ばし、泉の水に、指先を触れさせた。

 

 その、瞬間だった。


「――!」


 泉が、光を放ったのは。

 そして、泉から――というよりは、この空間から、声が放たれたのは。


「試練未達成により――【天罰覿面:強制排除】!」


 瞬間、泉が暴れた


正確には、ローリエが触れた箇所の水が一気に集まり、触手のようなものになり、

 

 ――バチン!

 

 と、魔導椅子事、彼女の身体を弾いたのだ。

 

「きゃっ……!」

「……!」


 俺は咄嗟に彼女の背後に回り、吹き飛ばされた魔導椅子と彼女の身体をキャッチする。

 

「大丈夫か」

「あ、ありがとうアクセル。ええ、杖でガードしたから、何ともないわ」


 見れば彼女は咄嗟に体の側面に杖を構えていた。

 だから、打撃によるダメージはなく、吹き飛ばされただけで済んだようだ。

 けれど、

 

「どういうことだ?」


 泉に浸かれれば治るという話だったが、これでは浸かれるようには見えない。

 そう思ってローリエに問うと、しかし彼女も戸惑っているようで、

 

「わ、分からないわ。今までこんなこと、無かったもの」

「泉に弾かれる事か?」

「ええ。そうよ。私が代替わりした時も、この泉に入って沐浴したけれど、こんな現象は起きなかったもの」


 ローリエは、驚き半分、分析半分というような目で言ってくる。

 

 彼女にとってもこれは予想外であることは分かった。

 

 そして、俺としても、今ので気になった点があり、


「『試練未達成によるペナルティ』って声が聞こえたな。ってことは、まだ神の試練とやらは終わってないんじゃないか」

「ええ、私も、そう思うわ」


 ローリエも同意してくる。

 

 そうでなきゃ、あのような声が聞こえてくるはずもないだろうし、さもありなん、という所ではあるが。

 

 どういうこと何だろうなあ、と思っていると、

 

「なあなあ、親友。オレは、触れられるみたいだぞ」


 デイジーが、そんなことを言っていた。

 見れば、彼女はその手で泉の水に触れているが、

 

「……弾かれてもいないし、さっきの声も聞こえてない、か」

「ああ。なんかローリエが触った瞬間に変な魔力が発生した感じがしたから、オレだったらどうだろうと思って試してみたんだけど。全然、魔力が出ている感じがしないんだ」

「ふむ、なるほど?」


 デイジーが平気で、ローリエだと弾かれる。となると、


「俺の場合はどうなるんだ?」

 

 俺も泉の水に触れてみた。その結果、

 

「……」


 何も起きなかった。

  

「デイジーと同じか」


 なんだったらざぶざぶと泉の中に入ってみる。

 足まで浸かった。

 けれど、やはり何も起きない


「ああ、魔力が発生したりもしないし。水の変化もないな」

「うーん、アクセルたちのような同伴者は別枠扱いなの、かしらね」


 ローリエがそう言ってくる。

 

 確かに開始時、あくまでメインはローリエだという文章が神書に刻まれていた。だから今回の件は起きたのかもしれないが、

 

「だとすると、ローリエが触れた時に出た魔力ってのが気になるな」

「ああ、それなんだがな。泉の魔力は勿論、あの鎧からもちょっと反応がしたんだよ」


 デイジーが指さした先には板金鎧がある。

 だが、先程とは少し違いがあり、

 

「……近づいてきているな」


 一歩、また一歩と、機械的な動きで、板金鎧がこちらへ歩を進めていたのだ。

 

「叛逆の血戦術士」のコミックス第一巻が本日、9月9日に発売されます(表紙画像↓から公式サイトへ行けます)。


是非一度、お手に取って頂ければ嬉しいです

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