第1話 ギルドの繋がり
夕暮れの水の都、シルベスタの港には、幾つもの船が停泊している。
大小さまざまな船からは荷物を持った船員たちが降りて、港を賑わせていた。
そんな港で特に目立つのは、大型の帆船だ。
その上で今、船長であるヴィルヘルムと、海事ギルドマスターであるライラックが言葉を交わしていた。
「どうだった? 新型艦の乗り心地は」
「良い感じだ。推進力も段違いだし、前回の失敗点も踏まえて改修したのが功を奏したみたいでな、揺れを制御魔法も効いていて安定感もある」
「ほうほう。同乗してた子達から、海の魔獣から歓迎を受けたって聞いたけど?」
「ああ、そいつらの攻撃でも、ビクともしなかった。それに……玄武公との戦いを乗り越えたお陰で、船員たちも逞しくなっていてな。全員返り討ちの上、結構な魔石や素材ゲットだったさ」
玄武公に立ち向かうあの戦線を潜り抜けた――正確には潜り抜けさせて貰った――船員たちは、一皮むけたようで。魔獣たちを恐れる事もなく、倒した。
ヴィルヘルムが、船の上から港を見下ろすとその結果が見えた。
そこには、今回の航海で仕留めてきた魔獣から得た資材が積まれたコンテナが置かれている。
「結構な収入になりそうでな。船員たちにボーナスが出せそうだ」
「はは。そうかい、初航海は上手く行ったようだね」
「ああ。新型魔導機関のテストはばっちりだったさ。……増産に踏み切るにはまだ早いがな。もうちょっと実際に使って確かめていかねえと、他の船に乗っけられねえ」
性能は良いのは分かったが、何度かテストを繰り返す必要がある、とヴィルヘルムは思う。
「ふむ。まだまだ、航海の高速化には遠いってことかねえ」
「まあ、速度を優先する場合は、輸送系の職業に頼ればいいから。焦る事でもないんだけどな」
そんなヴィルヘルムの言葉に、ライラックはふふ、と微笑と共に反応した。
「輸送職といえば、アクセルさんたち、また、色々とやってくれたみたいだねえ。ギルドの報告、見ただろう?」
「ああ、神林都市を助けてくれたって話だったな。思わず笑っちまったよ。お前のトコもかって」
神林都市には錬金ギルドがあり、そこのマスターから速達が来たのだ。奇跡を起こして貰った、と。
「はは、そうだね。まあ、神林都市の一件は、割と大事だったみたいだし。アクセルさんの行動も、大分噂になってるけどね」
「みたいだな。港にいた外部都市から来た野郎どもも話していたぜ。……大分眉唾も交じってるけどさ」
その言葉に、ライラックは苦笑する。
「誰もがそこまで正確な情報網を持っている訳じゃないから仕方ないさ。まあ、悪い噂じゃないから良いだろうさ」
「だな。――よし。アクセルの兄さんに世話になった時のこと思い出してやる気出た。この後、工場の方でもうひと頑張りしてくるか。新型魔導機関の事以外にも、やる事山積みだしな」
「ああ、そりゃいいね。ただ、まだ航海の報告を聞き終えていないからさ。もうちょっとだけ付き合って貰うよ」
「あいよ。分かってるさ。これもまあ、ギルド会議のネタだからな」
そうして、シルベスタにおけるギルド長同士の話は、アクセルの思い出話を交えつつ続いていくのだった。
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