彼が私を甘やかす理由〜A〜
岩田ゆきは俺の彼女だ。付き合いは幼稚園からで中学は違ったがもうかなり長い。周りより小さめで人を信じやすいし可愛い、だからモテる。けど俺が大切に護っているから変な虫は寄せ付けない。
大学に入るときに「1人暮らしより同棲の方が安全だし、家賃も安いよ」とゆきを説得した。自分で言うのも何だが…この説得で同棲を決めてしまうゆきはやっぱり危ないと思う。だからこそ俺が護らなくてはいけない!
「ねえ那月、何で私を甘やかすのかな君は?私をダメ人間にするつもり?ダメ人間を作るのが趣味かい?ダメ人間製造機かい?」
「ん?ダメ人間製造機?いやゆきをダメ人間にする気はないし、趣味でもないけど…何で嫌だった?」
ダメ人間製造機か、まあ言いたいことはわかるな。ゆきが1人で何も出来なくなれば俺に頼るしかない訳だし…俺だけに頼る、それいいな。
「嫌ではないんですがねーなんか私に甘すぎませんかね那月さん?お菓子の新商品買ってきたりさ、私が悪いのに謝ったり…」
「いや、新商品は俺も食べたいだけだよ?それに謝るのはさ、本当はよくないんだろうけど喧嘩するよりいいじゃん」
ゆきは俺に甘やかすなと言ってくるがそれは無理だ。新商品はゆきに外出させないため、謝るのは喧嘩して家出させないため。甘やかして囲って護っていないとゆき何処かに行ってしまうだろう?
「それに大学生だよ?那月だって友達多いんだからもっと遊んできても…那月だけの時間作って、私に合わせて行動しなくても平気だよ?」
「大丈夫だよ遊ぶときは遊んでるし、あいつらは大学もバイトも一緒だからな問題ない。俺だけの時間って別に趣味も特にないしな。ゆきに合わせてると言うか、やりたいことが一緒だからいいんじゃないか?」
別に遊んでいない訳じゃない、ただ遊ぶときはあいつらの彼女とゆきも一緒に遊びに行く。あいつらは俺がゆきを護っているのを知ってるからだ。趣味って言ったらゆきを世話するのが俺の趣味だからな…
「…ならいいけど。無理してるなら言ってね?私もう22歳なんだし1人でも平気し色々できるからね」
「ああ、わかった。何かあったら言うな」
ゆきのよくある確認だ、今回のダメ人間製造機は面白かったけど。また誰かがゆきに「甘やかされてる」とでも言ったのだろう…見つけたら半殺しだな。
「そうだゆき、今度新しい部屋探し付き合ってくれ」
「いいよーそっか那月はもう就職決まってるもんね新しい部屋探さなきゃね!」
付き合う前までは行動的だったのを少しずつ俺の横が定位置だと覚えさせて、勝手に行動しないようにさせた。もしどこかに行くときは相談するようにも。洗脳?いや、そう育てただけだ。
ゆっくりと慎重に外堀を埋めていかなくてはいけない、だって焦って失敗すればゆきは離れて行くだろう?だからこそ甘やかして、1人では行動させないように変えた。今では俺が居ないとゆきは不安になる。
「そうだ、今度は広めの部屋にしような?」
「このぐらいの部屋でも平気だったけど、広い部屋がいいならそれでいいよ!あっ、駅は近くにしてねー」
ゆきは就職する気だろうがさせる気はない。就職したら流石に行動を制限できなくなるからな。
計画は順調に進んでいる。あと数週間でゆきは生理が来なくなったと焦り始め、数ヶ月後には籍を入れる。大学を卒業後はすぐに出産になるだろうから就職はできなくなる。
「次は日当たりのいい部屋がいいなー、ここちょっと洗濯物乾きづらいからね」
「確かに。日当たりのいい部屋にしような」
ここまでゆっくり育てて来たんだ離すわけがないだろう?ゆきは知らなくていい、自分が甘やかされている理由も着実に進んでいる計画も。
でもそれでいい、俺がしっかり護ってやるからなゆき?
最後まで読んで頂きありがとうございます。もし要望があれば宝来くんの友達たちの話も載せます!