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一件落着!


 エイヴァラルは油スライムに引火する寸前、氷の障壁を作り出し、炎の衝撃に耐えようとした。

 だが炎の勢いは凄まじく、まるで紙のように容易く障壁は吹き飛ばされた。まるで炎の拳に殴られたように床に叩き付けられた後の記憶は、ない。


「メリア……」

 目覚めてすぐ、幼馴染の少女の名前を呼ぶ。

 あれから、どうなった? 俺は生きている? 皆は無事なのか?

「起きましたか、セシルっ」

 見慣れた薄茶の髪には、真っ白な包帯が巻かれている。頬にも、大きな白い布が当てられており、痛々しい。

 けれど、生きていた。生きていて、くれた。

 それだけで嬉しい。


「全く、無茶するわよね。私達三人の上に覆いかぶさって来るなんて、死にたいの?」

「は……笑えない冗談だ」

 死にたい訳では無かった。それよりも、仲間を死なせたくないという思いが強かった。それだけだ。そうか、今自分が一番重傷なのか。


「アルダ、リュウは無事か?」

「そりゃアンタよりは。もう復興の手伝いをしているわよ」

「そう、か」

 どうやら望みは果たされたらしい。一気に安心感が湧く。途端に、眠くなってきた。

 ああでも、復興に参加しなければ。エイヴァラルが復興に参加したとなれば、皆も元気付けられるはずだ。


「すまない……15分だけ寝る。すぐに復興作業に行くから……起こしてくれ」

「はいはい、わかりました。ぐっすり、眠ってください」

 メリアの手が、目に被される。暗くなった視界に、暖かい手の平に導かれるように、セシルは眠った。



 無論、メリアはセシルを15分などという短い時間で起こす気など毛頭なかった。一番ひどい火傷を負っているのである。

 治癒魔術をかけ直した後、二人は治療院から出た。

 この治療院は、焼け残った家を借りたものである。本来の病院は、最後のあの爆発に巻き込まれてしまった。セシル以外にも治療院は怪我人で一杯である。


「アルダ……私は、あの二人を絶対に許すことは出来ません」

「奇遇だね。あたしもだよ」


 メリアとアルダは、銀髪赤目の青年と、金髪碧眼の少女を思い浮かべた。


 ギネガの町は荒廃していた。どこもかしこも真っ黒に焼け果てており、人々も火傷の痕だらけである。

 この惨劇を作り出した張本人。その少女の方を救い出そうとしたおかげで自分達のリーダーはあんな怪我まで負っている。


 去り際、少女と青年は楽しそうに笑っていた。あの笑顔を思い返すだけで、腸が煮えくり返る。


「こんなことをしておいて、笑ってられるなんて頭の螺子が吹き飛んでるとしか思えないよ」

「全く持ってその通り。だが、待っていればああいった輩はまた何かやらかす」

 黒い着流しの、刀を佩いた男が、いつの間にか二人の背後に立っていた。頬に傷のある、鋭い目をした男だ。

「リュウ! 作業の進み具合はどうですか?」

「上々だ。皆が一丸となって物事に取り組むのなら、これほど早く進むのかと驚くほどだ」

 鐘の音が鳴り響く。六回鳴ったという事は、正午。お昼ご飯の時間だ。作業を進めていた人々も手を休め、中央広場へ集まっていく。


 この鐘の音は、変わらない。

 エイヴァラルがまだ無名のギルドだった時から、ギネガはこの鐘の音で動いている。


「リュウ、あいつらがまた動くってどういうことさ」

「簡単な事。あいつらが、まだ満足した様子は無い。きっとまた何か仕掛けてくるだろう」

 たしかに、とアルダは頷く。

 ドリセアによると、彼らは金銭が目的だったようだが、そうであればここまで事を大きくする必要もないはずだ。


 別の目的があるに違いない。

 何より、あの様子では金銭をほとんど持ち出すことは出来なかったであろう。


「次こそは、彼らの企みを阻止しましょう」

「もう、こんな真っ黒な景色は見たくないもんね」

「ああ」



 中央広場では、食料の配給が行われていた。パンとスープという簡単な食事だが、町の皆はそれを平等に美味しそうに食べている。


 それを、上空から眺める二つの影があった。

「皆楽しそうね、ヴィレジー」

「ああ、俺達も混ぜてもらいたいものだな。エリーザ」

 近くの町に避難していた二人は、ギネガの様子を見るために戻って来ていたのだ。


「全然、収穫は無かったな。ほとんどキングスライムに吸収されちまうしよぉ」

「あら、今回の目的が本当に金銀だけにしかないと思っていたの?」

 違うのか?と問いかけたヴィレジーの頬に、エリーザがキスをする。そんなことをするのはエリーザがこれ以上なく機嫌が良い時だけだ。


「今回の目的は、これよ」

「これ?」

 とんとん、とエリーザが自分の頭を指す。

「これで、情報は集まったわ。次こそ、世界征服するわよ」

「まだ計画があるのか?」

 あったりまえじゃないの、とエリーザは邪悪に嗤う。ヴィレジーはその笑顔に見惚れたが、エリーザを抱きしめるだけに留めた。


「そうだ、忘れていたわ」

「どうした?」


 にっこりとエリーザが微笑む。その笑みは正しく天使の微笑みだった。

「今回はよくやったわ、ヴィレジー」

 そう言うと、エリーザはヴィレジーの頭を優しく撫でた。



一章、終わり。

更新するかどうかは未定。

話はあるのですが、他に更新したいものがありまして……。

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