問題発生
「すっげえことになってんなぁ……」
大炎上するギネガの街を、待ち合わせの時計塔の上から眺めまわす青年。
とんでもなくダイナミックでエキサイティングでマーベラスで、心躍る光景だった。そして、これを創り出したのが自分達だという事が愉快で愉快で仕方がない。森の火事の方が良く燃えていたが、ここには人の悲鳴が、嘆きが、怒りがある。押さえつけなければ、大声で笑いだしそうなほどの悦楽だった。
それと共に、こんなことを計画した少女にも頭が下がる思いだった。
ギネガには、第2の災害が襲来していた。
火災だ。
広範囲魔法で焼き払うことで、スライムを効率的に各所で駆除していた冒険者達は、ある時突然、ドリセアやグレンと同じ運命を辿った。
スライムが炎上したのである。
燃えるスライムは至る所に配置されていたようで、次々と引火し、炎の勢いは留まるところを知らず、広がり続ける。もちろんその炎は仲間のスライムをも焼くのだが、火の勢いもスライムの湧き出る速度も一向に衰える様子はない。
「わざわざ近隣の村を回って油を集め続けた甲斐があるってもんだな」
良く燃える油を大量に含ませたスライム、以下油スライムと呼ぶ。
油スライムの軍団を作り出し、通常のスライムの中に紛れ込ませる。最初は通常のスラムで冒険者たちの油断を誘う。スライム駆除を作業だと考え始めた頃合いを見計らって油スライムを投入、そして大火災を引き起こした。
生きたまま焼かれるスライム達の苦痛は如何ほどであるか、想像すると胸が痛むような気がしないでもない。
「まぁ、世界の王になるための先駆けだと思えってエリーザも言ったしな」
赤く燃える街に見惚れていたヴィレジーは、足元に矢が刺さったことで気を取り戻した。
「いたぞ!」
「あそこだ!」
あれ、ヤバくね?
ヴィレジーはいつの間にか囲まれていた。
そんな時、誰にも気づかれず、異変は静かに起こっていた。
ドリセアやグレンを倒したことで、更にエリーザの手持ちのスライム達はレベルアップし、その数を増やしていた。
ぷるん、と一匹のスライムは震えた、
それは、召喚魔法の枠から外れたスライム。召喚魔法が、同一の個体だと見做さなかった、特異なスライム―――突然変異。
「ここは大したものが無いわね、次、行くわよ」
ぞろぞろと仲間だったスライムが少女の後に続いて部屋を出ていく。
突然変異したスライムは、最後尾の少し遅れたスライムに近寄ると、触手を伸ばし、声を上げさせる暇も無く、一瞬で飲み込んだ。
その後、突然変異したスライムは、仲間だったスライムを取り込み続けた。
煙で遮られた視界の中、少女は気付かない。配下の軍勢が、着々と数を減らしていることに。
「ごほっ、燃え過ぎたかしら……これじゃ、私達まで丸焦げになっちゃうわ。次、あれを持ってきなさい」
そう指示し、しかし背後のスライムが何の動きも見せないことを訝しく思ったエリーザは、恐ろしい物を見た。
天井までとどく程の、巨大なスライム。
そのスライムが、触手を振り翳し、猛スピードでこちらに迫っていることに。
「キングスライム!! どうして―――増えている間に突然変異したかっ」
自我を持ったキングスライムは、種の為でなく自己の為に、かつての仲間を吸収し続けた。
既にそのレベルは100をとうに超えている。史上最強のスライムが完成しつつあった。
「い、嫌ぁあああああアアアアアアアアアア!!」
更に数百の支配下のスライムを召喚すると、エリーザはスライムと反対方向に駆けだした。
突然変異に考えが至っているにも関わらず、大丈夫だろうと楽観視して計画を進めてしまうエリーザ。
甘過ぎィ!




