彼女との出会い (2015年10月6日 改稿)
恋の予感?‥‥それとも‥‥
梅雨入りした6月、例年なら雨降りの日が続くはずだけど、今年は全く降らず暑い日々が続いた。
「外はやっぱり夜でも暑いなぁ・・・店の中は冷房が効いていて涼しいけど」
ガチャン!
私は、お酒の瓶が入ったケースを持ち上げた。今、ダイニングレストランでバイト中なのだ。
高校に入ってから、両親の元を離れ、一人暮らしをしている。マンションの家賃と、学費と最低限の生活費は、親に援助してもらっている。学生だからマンションじゃなくても、安いアパートとかでも良かったのだが、親が反対して渋々マンション暮らしに。
それでも、3年経つと慣れてくるから恐ろしい。
本来なら高校3年生の私は、大学受験とか就職活動とかで忙しいハズだけど私は違った。大学には行かず就職する。その就職先も、既に決まっている。だから私は、友達皆が就活や勉強に勤しむ中、こうしてバイトが出来る。
「遥ちゃん、それ置いたら上がっていいよ」
「はい」
私に声を掛けてくれたのは、この店のチーフさんだった。
私はお酒の瓶が入ったケースを、所定の位置に置いてから更衣室に行った。
「よし、着替え完了」
私は私服に着替える。学校の制服で来ても怒られないが、こんな良い店に制服で行くのは、やっぱり憚れる。なので私は、いつも学校が終わると家に帰り、着替えてからバイト先に向かう。
今日の服装は、薄いピンクのブラウスに白系のパンツ、そして少しヒールのある靴を履いていた。
「お疲れ様でした!」
私は、厨房に居る人達に声を掛けてから、店の裏口から出た。今は丁度、午後9時を過ぎた所。流石に平日のこの時間帯では、学生は居ない。サラリーマンやOLの人達で賑わっていた。私は、バイトの疲れからか、さっさと自宅に帰ろうとしていた。
通りを歩いていたら突然、私に誰かが近付いてきて話しかけられる。
「お姉ちゃん、一人~? 俺と飲まない?」
声を掛けてきたのは、酔っぱらいのおじさんだった。
「す、すみません‥私、急いでますから」
無理にその場から離れようとしたら、男性に腕を掴まれた。
「逃げるの~? 」
男性は更に近付いてくる。私は腕を掴まれているせいか、どうにも出来なくなり、困り果てていた。
「ちょっとくらい、いいじゃんかよ!」
男性は、私の肩に腕を回そうとした瞬間、誰かに腕を掴まれた。
「イテテテテ!! なにしやがる!」
男性は、腕を掴んできた相手を睨んでいた。男性の腕を掴んでいたのは、長身でスタイルの良い女性だった。
「女の子に何しようとしているのかしら?嫌がっているじゃない、腕離しなさい」
女性の迫力に怯んだのか、酔っぱらいのおじさんは逃げて行った。
「大丈夫?」
女性は私の方を見ると、優しい声で話しかけてきた。
「え?あ、大丈夫です」
「ここら辺は酔っぱらいが多いから、貴女みたいな可愛い子はさっきみたいに連れて行かれちゃうから、早く帰りなさいね」
彼女はそれだけ言うと、その場を去ってい行った。
私は、去って行く女性の後ろ姿を見て・・・
「カッコイイ!!」
気付いたら、一目惚れをしていた。