第1章 始期の序曲≪オヴァンチュア≫Ⅶ
さぁ、今回で始期の序曲編もラストです。
それでは、はじまり〜はじまり〜
習魔学園本棟一階大食堂
「うまい!!」
久吉が『習魔学園特製塩バターもやし葱コーンチャーシューナルトキムチラーメン』を口いっぱいに頬張りながら、感想を述べていた。
ちなみに『習魔学園特製〜(以下略)』は色々混ぜ過ぎてヤバいラーメンである。そのヤバさ故に今では久吉以外ほとんど誰も食べることの無くなった伝説のメニューである。
「ナッツ…、良くそんなの食べられるね」
「そんなのとは何だ、そんなのとは。これは最近ではあまり見る事の出来ない、『味のデパート』と呼べる神作品なんだぞ!!」
「うっ、これについてナッツに語らせるといつまでも続きそう…」
奈々がげんなりとした顔で自分の『ハム辛サンド』を食べていると、カレーをお盆にのせた維新が笑いながらこちらに歩いて来た。
「西小金さん、ナッツは中学時代もこんな感じだったんだよ。え〜と、たしか中学時代のナッツの学食の好物は『そうめんうどんラーメンそばちゃんぽん』だったよ。学食のおばちゃんが麺系が好きだったせいで、いろんな麺をまぜたらそうなったんだ…。で、やっぱり食べてたのはナッツだけだったよ」
「おお、懐かしいな。確かあのメニューって俺が卒業した後に無くなったんだよな〜。いやー、惜しい事をした」
そんなくだらない事を3人でわいわい話していると、向こうからお盆にラーメンらしき物をのせた愛美が近づいてきた。
「あれ、マナもラーメンにしたの、って…え?まっまさかナッツの他にも『習魔学園特製(以下略)』を食べようとする人がいたとは…。マナ、悪い事は言わない。やめなさい、勿体ないけどやめなさい。まだ命を捨てるには早過ぎるわ」
「…大丈夫、これ見た目程酷くないわ…」
そう言うと愛美はラーメンをレンゲに乗せ、口へと運んだ…。
「…美味しい…」
隣で心配そうにしていた奈々はその言葉を聞いて、理解出来ないという顔をして自分の食事に集中していった。
四人は昼食を食べ終えると、中庭の方へと散歩に出かけた。
すると、そこでは2-Bの生徒が三年生らしき人物に絡まれていた。
それを見て奈々はクルリと久吉の方を振り返ると、ニッと笑った。
「ナッツ〜、クラストップの出番みたいよ〜。いってらっしゃい」
「めんどい、とは言えないのがクラストップか…。」
ハァ〜と溜息をひとつすると久吉は絡まれている生徒を助けるべく、喧騒の中に身を投じていった。結果を述べよう。
一瞬だった。
久吉は絡まれている生徒の前に立ち、自分の身分を明かす。
それを聞いた三年生は良くわからないが、とりあえず邪魔をされたと感じて久吉に襲い掛かった。
刹那、次の瞬間には三年生の身体は宙を舞っており、久吉には傷一つ無かった。
その場にいた者は皆、何が目の前で起こったのか理解出来ていなかった。
理由は単純。
皆の視覚スピードを上回る速さで三年生の懐に入り込み、襟を掴み、袖を取り、自身の身体を捻り、柔道の基本技である『背負い投げ』で相手の身体を宙へと投げ飛ばしたのだった。
時間にしてコンマ数秒以下…。
皆が何が起こったのか理解出来ないのもしょうがない。
投げ飛ばされた三年生は
「ばっ、化け物か…」
と一言吐き捨てると、そそくさと逃げていった。
「ヒュウ、さすがナッツだね。年上相手に一瞬でケリをつけるなんて、そうそう出来ないよ」
奈々が驚嘆の言葉を述べると、助けた生徒からお礼を言われていた久吉が奈々の方に顔を向けた。
「えっ?そうなんだ…。ゴメン、いつもこんな感じだからわからないや」
「サラっと聞き捨てならないことを言ったね、今」
「事実を述べただけだがな…」
奈々は正直、とても驚いていた。
なぜなら、奈々が知る久吉は小学校6年で止まっていたから。
そして、6年の時の久吉はこんなにも強くは無かったから。
(そういえば、久吉がこんなに強くなったのは、私の背中の傷がついたアレが原因かもしれない…)
奈々が久吉を見ながら物思いにふけっていると、突然窓ガラスを思いっきり割ったような音が学園中に響いた…。
同時刻…。
外から来た『ソレら』は学園の防御壁を一撃で砕くと、学園内に侵入していく。
『ソレら』のリーダー格らしき人物が口を開く…。
「さぁ、平和を貪り喰う学生達よ、平和は終わりだ!!これから、闇による闇のための侵攻パーティーを開始する!!!!」
こうして、永久に続くと思われていた学園の平和は破れ、阿鼻叫喚の地獄が幕を開けた。
今回はいままでで1番長い文章になりました。
とうとう出て来たぞ、敵キャラ!!
という事で、これから学園の平和はどうなっていくのでしょう?
では、次回予告です。
次回から『強襲の狂想曲』編をお送りします。
どうぞ、よろしく