第1章 始期の序曲≪オヴァンチュア≫
今回は主人公の登校シーンが主な舞台です。
私立習魔学園とは、どんな所なのでしょうか!?
それでは、はじまり~はじまり~
桜が舞う4月の始め。
その日の空は何か不吉な事を暗示しているかのような、暗いどんよりとした曇り空だった。
「ギャ~~~!?」
そんな中、ある建物の一室から絶叫が響き渡った。
声からするに声の主は男。それも声変わりが終わり安定してきた、高校生ぐらいの声だ。
悲鳴が上がった部屋の中には男女が一人ずつ。
そして、絶叫の声の主であろう黒髪の男が、髪の長い金髪女に向かって何かを言っていた。
「だ~、何でお前が俺の部屋にいんだよ奈々!!いくら幼馴染だといっても今はお互い高こ…。離れろ、抱き着くな!………だから離れろって、…いつまで俺に引っ付いてんだよ奈々!」
「あぁ~、それが寝坊しそうだったところを起こしてくれた幼馴染に向ける言葉?もっと他に『ありがとう』とか無いわけ?」
「無い、断じて無い!!!というか俺は鍵をかけて寝たはずだ。いったいどうやってお前は部屋に入ったんだ!?」
「抜け道」
「NO!!何でそいうもん作んの?やめてって言ったじゃん!!」
「そうはいっても、こんな美人な幼馴染な朝から会えて嬉しいくせに~」
「別に嬉しくない」
とは言ってもこの少年、『美人』というところは否定しなかった。
なぜなら、事実美人だからである。
外国人を思わせる金髪を肩の少し先までのばし、その大きな瞳は茶色をしていた。
そして、整った顔立ち。
また、鈴の音を思わせるような声、は言い過ぎた。
とりあえずマジで美人さんなのである。
それに比べ少年の方は黒髪を首の後ろが隠れるぐらいにのばし、その瞳は茶色に黒が少し混ざった様な色をしており、その上に角ぶちの青い眼鏡をしていた。
ここは裏東京23区の一つ、川戸江区にある、私立習魔学園。
4つの寮棟と1つの本棟を持ち、その周囲は森で覆われていた。
広さは東京ドームが3個入るぐらい、しかしそれはあくまで外見の話であり、実は東京ディズニーランド2個分ぐらいの広さであり、裏東京随一の広さを誇っていた。
生徒の数は1~7年生までで各学年300人程度。合計約2100人もの生徒がこの学び舎で将来『マジック・マスター』になるべく、日夜魔法を勉強していた。
また4つの寮棟には各々名前があった。さっき少年がいたのが青竜棟(通称ブルー)、ほかには朱雀棟(通称レッド)、白虎棟(通称ホワイト)、玄武棟(通称ブラック)、があり全ての生徒がそこに寝泊まりしていた。
ちなみに寮は一人一室で、男女の区別はなかった。
「ほらっナッツ~、急いで急いで~!遅刻するよ~」
先ほどの金髪美少女が、ローラースケートをカシャカシャ鳴らしながら歩道を走っていた。
「だから今走ってんだろうが!!っていうかお前はローラースケートだろうが!スピードが違うんだよ、スピードが!!!」
「ナッツのグズ…」
少女がボソリとつぶやいた………。
…それを聞いた少年は、ピキリ、と額に青筋を浮かべると、髪を後ろにかきあげ言った。
「よし、わかった。後で後悔すんなよ…」
言うやいなや少年はポケットから生徒手帳を取り出す。
そして、それを見た少女の顔がみるみる内に青くなっていった。
「ナッツ、待って、待ってってば!魔法は強化魔法だけは…」
わたわたしている少女を肩にかつぎあげ、ボソッ、と少年がつぶやいた。
「肉体強化」と。
その瞬間、少年の身体と少年が持つ生徒手帳が青白い光を放ち、次の瞬間、少年は先ほどの5倍ほどのスピードで走り去っていった…。
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