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5.運命は大体最悪の出会いから

仮天使生活2日目。


「新人、評価まあまあだな」


天界の金髪上司が腕を組む。


「72点だっけ?」


「新人にしては上出来だ」


「このまま平和な人助けだけで頼む…」


俺は切実だった。


恋愛とか事件とかいらない。

コピー機直して評価もらって、

静かに生きたい。


本気で。


しかし天界はそうさせない


「次の担当」


空中モニターが出る。


映像:

朝の通勤ラッシュ。


満員電車。

人、人、人。


その中に一人の女性。


黒髪ロング。

目つき悪い。

イヤホン。

明らかに機嫌が悪い。


「…怖」


「対象:人間女性」


名前が出る。

上原玲奈かみはら れいな25歳


「営業職。転職して3ヶ月」


「普通だな」


「問題はここから」


未来映像が開く。


最悪ルート


まずは駅で石に躓いて転けるところから始まった。

そこで歯車はくるいだす。


重要な案件の会議で

上原玲奈は言い返す。


「それ、非効率じゃないですか?」

正論。

でも言い方が強い。


場が静まる。

上司の顔が変わる。


「チームでやってるって分かってる?」

「分かってます。でも――」


食い下がる。


引けない。

引いたら負けだと思ってる。


その場はそれで終わる。


でも――



トイレの個室。


ドアを閉めた瞬間、座り込む。

「……言いすぎたかも」


さっきの空気を思い出す。

視線。沈黙。

一気にくる。


強気に言った言葉が、

全部自分に返ってくる。


翌日から距離ができる。


雑談に呼ばれない。

話しかけづらい空気。


本人も気づく。


でも――


「別にいいし」


強がる。


本当は、よくない。


フォローが減る。

一人で抱える仕事が増える。

ミスが出る。


「ほらやっぱり」


そう思われてる気がする。


焦る。

空回る。

また会議。


少し指摘される。

本当は軽い注意。

でも今の彼女には重い。


「……はい」


それだけで精一杯。


帰り道。


誰もいないところで、小さく呟く。


「向いてないのかも」


落ちていく


成績ゼロ。

自信ゼロ。


でも外では強がる。


「別に気にしてないし」


でも一人になると、


「……なんで私だけ」


泣く。


ある日、糸が切れる。


「辞めます」


引き止めも、特にない。


ブラック企業転々。

次も、その次も似たような環境。


余裕はなくなり、

人に対して棘が増えていく。


性格さらに悪化。

笑わなくなる。

信じなくなる。


「どうせまた同じでしょ」


本来の強さが、ただの攻撃性に変わっていく。


「うわ」


「気性が強いタイプだな」


「正直、面倒くさそう」


「だからお前担当」


「なんで!?」


金髪天使がニヤつく。

「相性」


「何が?」


「お前とこの女」


「やめろ怖い」


「数値的に運命干渉率が高い」


「何それ怖い!!」


俺は天井をすり抜ける。


朝の駅。


満員ホーム。


上原玲奈が立っている。


(…美人だな)


でも雰囲気が完全に

近寄るなオーラMAX。


天界イヤホン:

「今日の任務はシンプル」


「聞くだけで怖い」


「この女を“石に躓かせるな”」


「え?それだけ?」


「少し考えればわかるだろ」

金髪天使が怠そうに言った


そして


電車が来る。

ドアが開く。

人が流れ込む。


上原玲奈も乗る。


その瞬間――


俺と目が合った。


「……」


「……」


(見えてる、絶対見えてる)


彼女が眉をひそめる。


口が動く。


「…なにあれ」


(やばい)

(田中さんは見えてなかったよな!?)


直後


頭に声。

「おい新人」


「なに!?」


「その女」


「うん」


「天使視認可能体質だ数万人に一人のレアだな」


「レア引いたなじゃねぇよ!!」


電車の中。

超満員。


俺は浮いてる。

彼女は俺を見てる。

完全に見えてる。


そして――


小声で言った。


「ねぇ」


「……」


「なんで浮いてんの?」


終わった。


俺の仮天使人生、

2日目で身バレ。


しかも


次の瞬間。

電車が揺れる。

彼女がバランス崩す。


倒れる。

俺、反射的に支える。


がしっ。


抱きとめる形。

近距離。

顔、数センチ。

彼女が固まる。


そして一言。


「…痴漢?」


「違う!!!!」


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