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ep.14 念願

満月の夜、ユラからの誘いで、森の広場へ行くユラとメイ。魔力が高まる今夜は、念願が叶いそうな気がして——。

アレムは自分のベッドにシーツをかけようとして、ふと、窓の外を見た。ユラとメイが2人で森の広場へと向かっている。(2人で出かけるのか? こんな時間に? 護衛として付いて行こうか?)と、思ったが、今夜だけは、まあいいか、とシーツを広げた。


「満月の夜って、こんなに明るいんだね」

メイが空を見上げて言う。いつもなら、暗い、怖い、と夜は外に出たがらないユラだったが、今日は背筋も曲げず、堂々と歩いている。——かと、思ったが、メイは気づいた。ユラの手が震えていることに。

「手、繋いでもいい?」

メイが照れ臭そうに、手をユラの胸の前に差し出すと、「ありがとう」と、ユラはその手を取った。2人とも、嬉しいような恥ずかしいような気持ちで歩いた。でも怖いという気持ちは全く無くなった。


広場へ着いた。着いたが、2人は自然と手を繋いだままでいた。

「昔の家の記憶、所々ボンヤリしてるって、前に言ってたよね?」

ユラとメイは目を合わせた。メイはコクリと頷いた。

「そういうボンヤリした記憶はね、想像で埋められると思うんだ」

月明かりに照らされたユラは、金色の髪が発光しているようで、この世のものとは思えない美しさだ。

「想像で埋める?」

「うん。メイが思い描く、理想のイメージだったとしても、再現できるよってこと」

「そうなんだ……うん、やってみる」

ユラと繋いでいる手に、力が入った。

「僕の魔力が力になれるように、手はこのまま繋いでおこうか」

ユラが、はにかんで言うので、メイも同じように、はにかんで頷いた。


広場の中心へ向かい、メイは杖を構えた。ふう、とひとつ息を吐いて、呪文を唱え始めた。

いつもは不安な気持ちのまま唱えていた呪文が、今夜は絶対にできる、という自信を持って唱えることができている。ユラの手の温もりのおかげだ、とメイは思った。

詠唱が終わった。本当ならここで、地面に魔法陣が浮かぶはずなのだが……。

広場はシーンと静まり返っている。

ああ、今夜もまたダメだったか……、メイが俯いた瞬間。

パァーっと赤く光る魔法陣が、地面に大きく表れた。

メイとユラの繋いだ手に力が入る。

ゴクリとメイが喉を鳴らす。魔法陣から光の柱が立つ。その光が、あたりに飛び散って消えた。

——その時。

家が、メイが、ずっと想い、願い続けてきたあの赤い屋根の家が、目の前にそびえ立った。

「ああっ……」

メイは目に涙を浮かべた。

「これだ……この家だ。間違いない。本当に全く同じ。お父さんと、お母さんが……いた、あの家!」

ポロポロと涙を流すメイを、ユラは抱きしめた。

「良かったね、本当によく頑張ったね。すごいよ」

ユラの目にも涙がにじんでいる —— 、その時。


ドカーン!!という激しい音と共に、メイの作った家は崩れた。いち面に土煙が舞う。

メイはあまりの出来事に立ち尽くした。何が起きたのか、頭では考えられない。

ユラは空を見上げた。空から何かが降ってきたのだろうか?いや、満月があるだけで、何も無い。

家に何かが突進してきたのだろうか? ユラはゆっくりと家に近づき、目を凝らした。

——っ!

ユラは腰を抜かした。2mはある甲冑を着た大男が土煙から表れたのだ。

「ヴァシルス!!」

ユラは苦虫を噛んだような声で叫んだ。

その声にメイは、ハッとした。そしてユラを見た。地面にへたり込んだユラは、後ろから見てもわかるほど、全身がガクガクと震えている。

「ユラ?」

メイは吐き気にも似た、胸騒ぎを感じた。

次回はピンチな回です。

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