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ep.12 追っ手

家づくりの魔法を披露するユラ。一方、ユラとアレムを追う「目」が近くまで迫っていて——。

「殺されるー!殺されるー!殺され——っ」

ザンッ。

叫んだ男の首が跳んだ。周囲にいた人々は悲鳴をあげないように、自分の衣服や手のひらを噛んで耐えた。

「ああ、これで静かになった」

ヴァシルスは剣を仕舞った。男が死んだ理由は、声が大きかった、からだ。

数分前、ヴァシルスが肉を口に入れようとした瞬間、店主が「ヴァルシス様、この肉は最高級ですよ」と大声で話しかけて来た。

ヴァシルスが立ち上がり、「声が大きい。耳障りだ」と、剣を抜いたので、店主は「ぎゃ〜っ!」とさらに大声をあげ、店内を逃げ回った。


「あちらの食事はいかがいたしましょう?」

側近のシェリが、テーブルを指して言った。

「もう要らない。あそこまで血が飛んでいるだろう」

ヴァシルスは店を出て、シェリは後に続いた。


ヴァシルスは王弟である。正しくは先王の不貞によってできた腹違いの弟である。物心ついた頃から気性が荒く、ヴァシルスに仕える人々は皆、いつ機嫌を損ねて殺されかねないと、毎日疲弊して、担当がころころと変わった。

「アレムはユラをどこへやったんだ?忌々しい……」

次期皇帝となるはずだったユラは、6年前、ヴァシルスの息子、アレムと共に行方不明になった。幼心の反発だろう、と1年帰って来るのを待っていた。が、帰って来る気配がないので王は、弟であるヴァシルスに命じた。

「ユラを()()()私の前に連れて来い」と。

数年かけて王都を隅々まで探したが見つけられず、王都を出てようやく手がかりが見つかった……はずだったのに。


フィリエの街外れにある、石造りの家の前で腰を曲げた老人がヴァシルスを待っていた。馬に乗ったヴァシルスは、同じく馬に乗った家来を数人引き連れて、その老人の前で止まった。

2m50cmはある大男のヴァシルスが、同じく2m50cmほどの大きな馬に乗ってやって来て、老人は腰を抜かした。

「アレムとユラは?」

「い、いませんっ。おっ、贈った金のブレスレットは、……テーブルに置かれていたようです」

老人が家の方を向く。ヴァシルスの右にいたシェリが、「私が行きます」と言い、家に入った。

テーブルがあったであろう場所は、焼け焦げていて、木の破片が家のあちこちへ飛び散っている。

「かすかに王子とアレムの香りが残っています」

シェリは家を出て、戸を閉めながら言った。

「2人は今どこだ?」

「あっ、あなた様に、こ、この家のことをご報告をしている間に……。ど、どこかへ逃げてしまったようで……」

「どこかへ?」

腰の曲がった老人とは、目線の高さが違いすぎることもあってか、一切目が合わない。ヴァシルスは、馬から降りて老人の胸ぐらを掴み上げ、無理やり目を合わせた。灰色の目はずっと泳いでいる。

「まさか、わしの名を言ったのではあるまいな?」

老人はブルブルと震えている。

「王からの贈り物だと言ったなら、テーブルにブレスレットを置いたまま出て行くはずがない」

「す……すみません!あたくしめは、物覚えが悪いのです!でも!きっと!また彼らを探知いたしますゆえ!」

老人は見ているこちらが哀れに思えるほど、小便を漏らしながらヴァシルスに命乞いをしている。

「命だけは!どうか、命だけ——」

ザンッ。


老人の首がコロコロと草原に転がった。ヒィッ。一番後ろで馬に乗っていた太った男が声をあげた。

「いくら探知能力を持っていても、ボケていては使える筈もない」

ヴァシルスは、老人の身体を首ある方へ放り投げた。

「シェリ、一番後ろの男、殺しておけ」

ヴァシルスはそう言うと、フィリエの中心街へ向かった。

常に機嫌が悪い父、ヴァシルス。そんな彼から逃げているユラとアレムですが、その事を知らないメイは、次回家づくりに励みます。

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