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014_嫌な気配の正体 ①

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あらすじ:ワイスさん達は早めに切り上げて

     都市へ帰ってきました



視点:【鈍亀亭】の店主 トータスさん

『』:フールさん

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《オオヤシマ歴2994年 5月 2週3日目》


◆冒険者専用の安宿【鈍亀亭】◆



(ガチャッ、チリンチリンチリン)


「ん? ………ああ、お前らか」


「おっちゃーん! ただいまー!」


『かっかっかっ!

 今戻ったぜ~、おやっさん』


(ゾロゾロゾロ、ワイワイ)


「おう、今日は遅かったな。

 ギルドじゃ大騒ぎになってたが

 お前らも巻き込まれた口か?」


「えっ? 違うよ?」


「ん? 違うのか……まあいい。

 それで? 今日はもう遅いが

 晩飯はどうするんだ?」


「(ニコニコ)あっ、トータスさん。

 今日は晩ごはん無くて大丈夫です!

 …むっふっふっふ……実はですね!

 皆でそこの料理屋に行ってきたんですよ!」


「(ニコニコ)うん! そうなんだよ!

 ロゼもおなか一杯食べたんだよ!」


「(ニコニコ)僕、初めて行きました!

 料理屋さんってあんなに色々な

 料理があるんですね!!」


「お、おう…珍しいな。

 姉ちゃんの方もテンション高ぇってのは。

 …そこの飯屋か、確かにうめぇよな。

 俺も昔、現役時代によく通ったもんだぜ」



 まあ正直、味はそこそこなんだよなぁ。


 もちろん、飯屋の中ではって事で


 当然、俺の作るなんちゃって料理とは


 全然別もんで普通にうめぇ部類だろ。


 あそこは【冒険者ギルド】の加盟店だから


 値段が安めで量が多いんだよな。


 そっか……こいつらもやっと


 あそこの飯屋に行けるようになったのか。


 いくら、安めっつっても駆け出し冒険者じゃ


 さすがに通うのは、無理だからなぁ。



『なあ、おやっさん。

 さっきギルドで大騒ぎが~とか

 巻き込まれた~とか言ってたけどよ。

 やっぱ…何かあったのかい?』


「ん? お、おう。

 もう解決はしたみてえだがよ。

 草原に【異常個体ユニーク】が出たらしいぜ?」


「「ええっ!?」」


『へえ…【異常個体ユニーク】ねえ。

 一体ぇ何だい? そりゃ』


「ん? 知らねえのか。

 …ま、簡単に言っちまうと

 仲間内とか外敵との生存競争に勝って

 Lvが飛びぬけて上がっちまった

 野生動物とかモンスターの事だな」


『ほー………なるほどなるほど?

 モンスターや野生動物がねえ?

 ………なるほどなぁ。

 つまりは、そうゆー世界とこって事か』


「おうよ、そう言うこった」



 あー、そういえばそうだった。


 こいつは異世界から来たんだったな。


 今は普通の服装してやがるし


 三姉弟こいつらに馴染みすぎてて


 すっかり忘れてたぜ…。


 俺もギルドや知り合いの異世界人達から


 聞いた話でしか知らねえが


 よその世界だと、色んな神様が居て。


 冒険者とかになった者にだけ


 その神様が加護を与えるとか何とか…。


 だから、モンスターや動物とかにまで


 Lvってもんは無えって事らしいな。



「ひえぇ…、早く戻ってよかったよね」


「そうだね、フールの嫌な予感ってのが

 大当たりだったって事ね。

 何の【異常個体ユニーク】か知らないけど

 そんなのと遭遇しちゃってたら

 今頃帰ってこれなくなってたかも…」


「はえ──…つまり…うん。

 すごいな、おっちゃんの勘!!」


『かっかっかっ!

 そーだろーそーだろ~~!!』


「うん…? 勘だと?」


「ええ、まあ。

 フールが嫌な気配がするって言うんで

 今日はもう稼ぎは十分だし

 早く帰ろうって事になって…。

 昼過ぎには帰ってきてたんですよ」


「それでね! おっちゃん!

 ロゼ達が育った孤児院へ行ったんだよ! 

 お肉持ってったんだ!

 みんなびっくりしてたよ!」


「お? おう。

 それは、良かった…な?

 …おう、そうだな。

 世話になった所へ差し入れたぁ。

 良い事したじゃねえか! お前ら」


「えへへへ! そうでしょ!?」


「あ、あはは…それに孤児院出た後は

 生活するだけで大変だったから

 話しに行く暇なくって……。

 ついつい話し込んでたら

 いつの間にかこんな時間に…」


「(ニコニコ)それで、帰りは

 料理屋さん行ってきました!」


「そっか! そりゃあよかった!

 ほれ、それはそうとお前ら。

 いつまでも受付ここで話してねえで

 とっとと部屋に行った行った!」


「「「はーい!」」」


(ガヤガヤ、ゾロゾロゾロ)



▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


▽ ▽ ▽ ▽ ▽


▽ ▽ ▽




 へっ…、ついこの間まで


 お先真っ暗って感じで暗ぇ顔してた


 ワイスの嬢ちゃんまで良い表情ツラしてたぜ。


 …俺も冒険者を引退して宿屋やってから


 そこそこ長ぇ事経ってるしよ。


 そりゃあ、色んな奴が客に居たさ。


 上級市民まで出世したやつも居れば


 いつまでも先が見えなくて消えた奴も居た。


 だからよ、何となくわかんだよ。


 正直、三姉弟あいつら、あのままじゃ長くなかった。


 実際、似た様な奴が大勢居たぜ…。


 追い詰められて、日に日に表情がヤバくなって


 一か八かって覚悟決めてた奴も居たし


 英雄に憧れ、希望に満ち溢れた若ぇ奴も居た。


 …嫌なもんだぜ? そいつらが朝出て行って


 そのまま帰って来ねえとかな。


 しかも、数日経ってギルドが来てよ


 そいつの遺品を回収していくんだよ。


 ありゃあ、未だに慣れねえな…。


 ……三姉弟あいつらが拾ったあの異世界人。


 何かステータスが全部1だとか聞いたし


 他の冒険者共にはバカにされてるらしいけどよ。


 なぁ~んか裏があるな、ありゃ。


 ……ま、俺にとっちゃただの客の一人だけどな。


 三姉弟あいつらは運良く異世界人フールを拾って


 この先何とかやっていけそう。


 そして、俺はあいつ等の宿代に心配いらなさそう。


 …たまにおこぼれも貰えるみたいだしな。


 それだけだ。


 それで、いいじゃねえか。

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