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運命への抵抗を発動。効果は、何が起こるか知らない

 美しい月光が海面を照らすなか、海面から10mくらいの空を駆け抜ける、派手な色合いの影が一つ。


「いぃぃぃ、ヤッホー」


 オヴェリスクを倒してから一年。俺は今現在、空を飛んでいる。道具を使って。自転車のハンドルやサドル、乗馬する際に使う鞍の一部である鐙、そしてどう見ても箒にしか見えない推進器の魔道具。それらが融合を果たした「エアランナー」と呼ばれる、道具だ。推進器兼制御器に足掛けと腰掛け、操舵装置をつけて無理矢理飛んでるとも言える。空飛ぶバイクの様な物である。

 そんな生身で乗ったら事故った時は、死ぬしかない死神御用達魔道具。しかし、無茶な速度と高度を確保しなければ、俺はまず死なない。理由は簡単、防御術式のおかげだ。うっかり、ぶっ飛んでも持ち前の魔力が尽きるまでは、傷一つ負わない。

 嘘だ、防御術式の防御感度が高過ぎると、少し速度を上げた際の空気抵抗や重力にすら反応して、俺の魔力を一瞬で持っていくから、かすり傷は負うようになっている。


「箒で空を飛ぶのは夢じゃなかったが、やっぱ中々コレも楽しいなぁ!」


なお、これは爺さんが封印していた、骨董品の一つだ。魔剣「激流」もこのエアランナーもそういった意味では爺さんのお下がりだ。


 話は変わるが、ここ半年ほど封召魔術は使っていない。

 理由はシンプル、ある意味で成長限界を迎えたのだ。術の展開速度と封印速度、封印出来る物の組み合わせ、順番などなど、『単純な決闘形式』でという制約こそつく、がやれる事は一通り試し終えた。

 日常的に携帯しておく召喚紙も「激流」、携帯食(乾燥保存食擬)、エアランナーの3種だけ。になり、現状の限界は探り切ったと言える。

 

 不満は、ある。


 全ては一年前爺さんに言われた事が原因だ。『ワシの生物系で封印されているモノは、性格も去ることながら根本的に強すぎる。故に今のシヴでは相対するだけで命の保証が出来んのじゃ』


 成る程。

 成る程、成る程。

 爺さんの戦闘センスは確かだ。本当に俺だと死にかねないのだろう。


 だが、こんな事なら最初から教えてくれるな、俺に夢を見させず何もわからせずにいて欲しかった。

 故に俺は家出を決意した。話が飛んだ?いやいや、空は飛んでいるが話は飛んで無い。

 あの何もない孤島にいるから、成長限界が来ただけなのだ。魔石以外まともな余剰が発生しない孤島。封印出来るものも空気、海水、爺さんの物資ストック、魔石、時々釣れる魚の死骸なんかの物凄いしょぼさ。

 

 なら、あるはずの所に行くしかない。爺さん曰く、

『東は死地永遠と続く海の果てに陸があり竜の巣となっている。余程のことがないと陸に上がることすら叶わん。

北は海を少し行くと陸と木が見える、その木は、非常に巨大で、距離感覚を狂わせるに足る大きさじゃ。名を世界樹といい、木人の支配域には必ず存在する巨木じゃ。腕に覚えが無いなら近寄らないことじゃ。

西の海を少し行くと陸と枯れ果てた巨木が見える。巨木は、枯れ果てた世界樹であり魔虫の巣じゃ。一時期は木人の支配域になったこともあった様じゃが、今は完全に放棄し、魔虫が支配しておる。話は基本通じんから、行くのはお勧めできんのぅ。

南へ降っていくと、陸が見える。しかし、そこは魔獣の住処じゃ、半人半馬の魔族や頭がいくつもある蛇の魔獣。そんな、生物の域を出た生物が、迷宮内部でも無いのに地上を跋扈しておる。地下にはそんな魔獣に追いやられた土人が暮らしているらしい。が、魔獣供に話が通じなさすぎて命が大切なら行かないことじゃ。』

 との事だ、要するに四方に進めば危険地帯に辿り着くらしい。


「人外魔境とは、この事か。爺さんも元々人間だったって話から人間が居ない訳では無い筈なんだけど。」


 かと言って他の方位に何が有るか分からない。故に、他よりマシに感じられる北へと進路を進めていた。


 荷物は、肩掛けで少し大きめのバックそれに入るだけの魔石。そして、自分の生活用品が小分けに入った召喚紙十数枚と空の召喚紙いっぱい。


 魔力が多く篭っているものほど封印が安定しないと言う封召魔術自体の構造的問題だ。

 故に魔力を大量に保持した生き物、海水なんかは封印が安定しない。しかし、無理矢理封印するのでは無く。自分から封印されるのであれば負荷がどっへる。だから生物系は、封召魔術を扱うならとても重要なのである。



「生物系は、少しずつ段階を上げてより強い生き物を服従させる事も出来る。実家に居ても限界があるなら飛び出すしか無いよぁ!」


 自覚は無いが、すんごくハイになっている。少なくとも意思疎通できる存在が爺さんとオヴェリスク以外に出来るのはでかい。


(楽しみだぁ!!)


 俺の冒険はこうしてようやく始まった。





 一体の密航者を連れて。

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