第57話 公務ですから!
調印の墨が乾いてから三日、大通り本店には奇妙な静けさが戻っていた。
謁見の間を揺るがした第二王女の爆弾発言は、結局、国王の深いため息と「式を進めよ」という低い一言によって、無理やり蓋をされた。床に落とした白い手袋を拾い上げたルイーナも、顔を真っ赤にして妹の口を手袋で塞ごうとした第一王女も、調印の筆を握ったまま白目を剥きかけていた書記官も、最後は形通りの礼法の中に収まったのだ。
結果として、十七工房連合には国家基準原器と、一次納入分である保冷コンテナ四十台、規格ボルト・ナット一万二千組の正式発注書が届いた。前金として軍務局から支払われた銀貨は、すでに連合の各工房へ頭金として分配され、下町からは朝から晩まで鉄を打つ快音と旋盤の回る音が響いている。
大通り本店の帳場机の上には、整理された納品台帳と、各工房の進捗を示す木札が整然と並んでいた。
商売としては、完璧な船出だった。
「……リョウさん。首のあたり、少し固くないですか?」
帳面の端を揃えていたフェルが、ふと顔を上げてこちらを見た。緑色の瞳が、リョウの襟元から肩のラインをじっと見つめている。
「そうか? 普通だぞ」
リョウは首を横に振ろうとした。が、振れなかった。
後頭部から背筋、腰、そして太ももの裏側にかけて、まるで焼き入れした鋼の板を一本そのまま背骨に添え木されたような、凄まじい突っ張り感がある。無理に顎を引こうとすると、首の筋がギリギリと軋むような音を立てた。
原因は、分かりきっていた。
昨夜、工房の地下奥深くにある『極秘・サイズ回復研究室』で、リョウは一週間かけて調合した【局所硬度・持久延長薬(試作第5号)】をあおったのだ。
竜根草の根を三倍に濃縮し、白銀蜘蛛の粘糸抽出液で保形性を高めた自信作だった。結果として、自信を取り戻すべき最重要の局所には指一本分の変化も起きず、なぜか全身の骨格筋だけが限界まで張り詰め、丸太のようにカチカチに硬直してしまったのである。
歩くことはできる。だが、体を曲げたり、首をかしげたりといった柔軟な動作が一切できない。立っているだけで、まるで王宮の近衛兵が直立不動の閲兵式を続けているかのような姿勢になっていた。
「嘘をおっしゃらないでください。朝から書類を取る時も、腰ごと回っていらっしゃいます」
フェルが羽ペンを置き、心配そうに眉尻を下げてカウンターから出てこようとした。
その時、店の前の石畳を揺らして、重厚な車輪の音が止まった。
下町の荷馬車とは明らかに違う、油の切れた軋み音すら立てない滑らかな制動。二頭立ての純白の軍馬が鼻息を鳴らし、扉の外の光を遮るように巨大な影が落ちた。
店の窓から見えたのは、白銀の地に王家の百合と天秤を浮き彫りにした、見紛うことなき王室専用の紋章馬車だった。馬車の前後には、儀礼用の甲冑に身を包んだ近衛騎兵が四騎、通りを威圧するように控えている。
「……おい」
奥の作業台でヤスリの目を立て直していたカーナが、道具を置くのも忘れて顔を上げた。
入口の引き戸の脇で壁に背を預けていたルイーナが、音もなく腰の剣帯の位置を直す。帳場の隅の丸椅子に座っていたセリアの狐耳が、ピンと真上を向いた。
店の引き戸が、外から勢いよく開け放たれた。
「リョウ! こんにちはー!」
薄紫の上等な外出着の裾を翻し、弾むような足取りで飛び込んできたのは、第二王女アイリスだった。小柄な体をいっぱいに使って駆け寄ってくると、帳場のカウンターに両手をドンとつき、満面の笑みでリョウを見上げる。
「また会いに来たよ! あのね、ふわふわ座布団のお礼に、今日はお姉様を連れてきてあげたの! 二人で仲良くお話ししてね!」
澄み渡るような童女の声が、静まり返った店内に響き渡った。
直後、開いた扉の向こうから、優雅な乗馬用の短外套を羽織った長身の女性が、凍りついたような足取りで店内に滑り込んできた。
銀白色の美しい髪を後ろで束ね、細身の騎士服に身を包んだ第一王女エレオノーラである。
その手には小さな扇が握られていたが、扇の骨が悲鳴を上げるほど強く握りしめられており、耳の先まで鮮やかな朱色に染まっていた。
「ア、アイリス……っ! 勝手に飛び出すなと、あれほど車内で言い聞かせたであろう……っ!」
エレオノーラは扇で口元を隠し、わざとらしく激しく咳払いをしながら、リョウと店内の面々を交互に見回した。視線が泳ぎまくっている。
「こ、公務だ! 国家調達規格の原器の正式発注に続き、第一王女直属『王国物流・備蓄近代化計画』の第一期実証モデル路線に関し、技術検証を委託する予定の貴工房と綿密な事前調整を行うのは当然の責務! 断じて、私的な来訪などではないぞ……っ!」
必死の弁明だった。誰一人として何も尋ねていないのに、淀みなく一息で言い切った。
店内が、しんと静まり返った。
フェルの手の中で、置き直されたばかりのペンの軸が、ピシリと微かな音を立てた。
カーナが槌の柄を握り直す。
ルイーナの青い瞳がすっと細くなり、近衛の礼を取りながらも、その視線はエレオノーラの首筋のあたりを正確に射抜いていた。
セリアは無言のまま、カウンターの横から歩み寄り、リョウのズボンの裾を両手できゅっと握りしめて離さない。
「……王女殿下自らのご公務とは、恐れ入ります」
フェルが完璧な営業用の笑みを浮かべた。だが、その笑みの背後から漂う冷気は、冬の北風よりも鋭い。「事前のご連絡もなしに、ずいぶんと迅速なご足労でございますね」
「うむ……いや、軍務局の決裁が昨夜下りたばかりでな。一刻を争う案件ゆえ、直接参ったのだ」
エレオノーラは扇で顔の半分を覆ったまま、何とか王族としての威厳を取り繕おうと背筋を伸ばした。だが、リョウと目が合うと、すぐに視線を天井の梁へと逃がしてしまう。
リョウは心の中で小さく息を吐いた。
謁見の間での大騒動の余波が、まだ生々しく尾を引いているのは明白だった。
「アイリス殿下も、ご機嫌麗しゅう。……エレオノーラ殿下、立ち話も何ですから、詳しいお話は二階の特別応接室で伺いましょう。フェル、お茶の用意を頼めるか」
リョウが極力自然を装って告げると、エレオノーラは露骨にホッとした表情を浮かべた。
「す、すまないな、リョウ。では、二階へ上がらせてもらおう。アイリス、行くぞ」
「はーい! お茶菓子あるかな!」
アイリスの手を引き、エレオノーラは逃げるように二階へと続く階段を上がっていった。
その背中が見えなくなった瞬間、店内の空気が再び氷点下まで落ち込んだ。
「……お婿さん、ですってね」
フェルが低い声で呟き、お茶の茶葉を取り出す棚の扉を、少しだけ強めの音を立てて閉めた。
「公務公務って、馬車を乗り付ける口実なんざいくらでも作れる身分だからなあ」
カーナがヤスリを放り出し、腕を組んで鼻を鳴らす。
「護衛を店外に待機させたまま、王女殿下お二人だけで下町の店に入られるとは。……無防備すぎる」
ルイーナが眉をひそめ、腕組みを解かない。
「……リョウ、とられる?」
セリアがズボンの裾を引っ張った。
「取られないし、お婿さんにもならない。ただの国家事業の商談だ」
リョウは首を振ろうとして、激痛に顔をしかめた。
「ぐっ……」
「リョウさん!?」
全身の筋肉がピンと張り詰め、ついに耐えきれなくなって、リョウはカウンターの天板に両手をついて突っ伏した。前屈みの姿勢すら取れず、板のように体が突っ張っている。
「どうしたんだ、リョウ! 急に倒れそうになって!」
カーナが駆け寄ってくる。
「……いや、なんでもない。ただの、極度の筋肉疲労だ……」
「そんなわけないでしょう! 顔色が真っ青ですよ!」
フェルが慌ててリョウの腕を支え、奥の私室兼休憩室へと誘導した。
休憩室の壁際には、来客や作業の合間に体を休めるための長椅子が置かれている。
リョウは何とかその上に腰を下ろしたものの、背もたれに体を預けることすらできず、背筋を真っ直ぐに伸ばしたまま脂汗を流した。
「リョウさん、連日の激務が祟ったんですね……。調印式の準備に、下町の工房巡り、その上こんな突然の王室案件まで重なって……」
フェルがいたたまれないような顔をして、長椅子の背後に回った。
「私がほぐします。少し力を抜いてください」
「あ、いや、フェル、これはそういう疲労じゃなくてだな――」
弁明する暇もなかった。
フェルが背後から長椅子に膝を乗せ、リョウの肩に覆いかぶさるようにして手を伸ばしてきた。
エプロン越しに、ふっくらとした胸の柔らかな圧迫感が、リョウの後頭部から首筋にかけて押し当てられる。甘い月光花のハーブの匂いと、耳元をくすぐる温かい吐息。
「ひゃっ……硬い……! 本当に鉄板みたいになっています!」
フェルが両手の平をリョウの首筋に当て、体重をかけて揉みほぐしにかかった。
だが、そのたびにフェルの胸元の柔らかさがリョウの後頭部に密着し、逃げ場がない。男として硬直している身体に、別の意味での刺激が直撃してリョウの脳内が火花を散らした。
「おいおいフェル! エルフの細腕でそんな硬いもんがほぐせるかよ! あたしがやってやる!」
見かねたカーナが踏み込んできた。
カーナは長椅子の前に回り込むと、リョウの硬直した両太ももを自分の膝で挟み込むようにして腰を下ろした。
「ちょっと腕を貸しな! 筋を引っ張って伸ばしてやるからよ!」
カーナがリョウの手首を掴み、ぐっと手前に引き絞った。
鍛冶仕事で鍛え上げられたしなやかな筋肉と、ドワーフ特有の小柄ながら充実した体つき。薄い作業前掛け一枚の奥から、焼けた炉のような熱い体温がリョウの膝頭へとダイレクトに伝わってくる。
「ちょ、カーナ、引っ張るな、そこは今――」
「我慢しな! 一気に伸ばした方が効くんだからよ――うおっと!?」
リョウの体がビクとも曲がらないため、体重をかけすぎたカーナがバランスを崩した。
前のめりに倒れ込んできたカーナの体が、リョウの胸元へとゼロ距離で激突する。
引き締まった太ももがリョウの腰を挟み込み、薄い布越しに、熱く火照った豊かな胸元がリョウの顎の下にすっぽりと埋まった。
「ふああっ……!?」
「ぐ、お……っ!?」
背後からはフェルの柔らかな胸と甘い吐息に包まれ、正面からはカーナの熱い体温と引き締まった肉体に押し倒される。二人のヒロインの香りと柔らかさに挟み撃ちにされ、リョウの息が完全に止まった。
その時、廊下の向こうから足音が近づいてきた。
「……おかしいな。リョウの姿が見えぬが、どこへ行った?」
聞き覚えのある凛とした声に、リョウの背筋が別の意味で凍りついた。
「リョウ、技術検証の件で確認したい図面があるのだが――」
ガチャリと、休憩室の扉が開いた。
羊皮紙の束を抱えた第一王女エレオノーラが、そこに立っていた。
時が止まった。
長椅子の上で、直立不動のまま脂汗を流すリョウ。
その背後からぴったりと密着し、首筋に胸を押し当てて手を添えているエルフの錬金術師。
その正面に跨がるように倒れ込み、胸元に顔を埋めて太ももを密着させているドワーフの鍛冶師。
エレオノーラの銀白色の瞳が、点のように小さくなった。
抱えていた羊皮紙の束が、パラパラと音を立てて床へと滑り落ちる。
白い首筋から耳の先まで、一瞬で朱が駆け上がる。
「な、何を……白昼堂々、破廉恥な真似をしているのだ貴様らは……!」
エレオノーラは扇で口元を覆い、動揺したように一歩後ずさった。扇の上から覗く瞳が、リョウとフェル、カーナの間を落ち着きなく行き来している。
「ち、違います、殿下! リョウさんの身体が固まってしまって、ほぐそうとしていただけです!」
フェルが顔を真っ赤にして飛び退いた。
「そうだぞ! リョウの身体がカチコチに固まっちまって、あたしが伸ばしてやってただけで――って、おいリョウ! どこ触ってんだ!」
カーナも慌てて飛び起きようとしたが、リョウの硬直した膝に引っかかり、余計に胸元を擦り付ける羽目になって叫び声を上げる。
「……俺は、被害者だ……」
長椅子の上でピクリとも動けないリョウは、天井の梁を見つめたまま、力なく呟くのが精一杯だった。
騒ぎを聞きつけたルイーナが呆れ顔で現れ、セリアが無表情のままリョウの額の脂汗をハンカチで拭き取り、何とかその場が収拾されたのは、それから半刻も後のことだった。
二階の特別応接室。
机を挟んで向かい合ったエレオノーラは、まだ冷めやらぬ赤ら顔を扇で隠し、小さく咳払いを繰り返していた。隣に座るアイリスだけが、フェルが淹れたハーブ茶と蜂蜜入りのビスケットをご機嫌で頬張っている。
「……取り乱してすまなかった。筋肉の硬直だったのだな」
「こちらの不手際でお見苦しいところをお見せしました」
薬効が薄れ始め、熱い薬草茶を飲む頃にはようやく首が回るようになったリョウは、商人としての営業用ポーカーフェイスを張り直して頭を下げた。
エレオノーラは居住まいを正し、机の上に広げた王国北部の軍事地図を指先で叩いた。
「本題に入ろう。先ほど伝えた通り、第一王女直属『王国物流・備蓄近代化計画』の第一期実証モデル路線――王都から北方アスト砦に至る街道の技術検証を、貴殿の工房に正式委託したい」
「アスト砦……王国の最北端、山岳地帯の軍事拠点ですね」
リョウの視線が、地図の北端に描かれた険しい山脈の要塞へと落ちる。
「そうだ。王都からは幌馬車で片道約十日間の悪路だ。……現在の軍事補給は、前線に巨大な倉庫を建てて力技で溜め込む方式を採っている。だが、その倉庫に届く前に、最も貴重な医薬品が失われているのだ」
エレオノーラの声から、先ほどまでの動揺が消え、冷徹な統治者としての真剣な響きが戻っていた。
「特に、北方山岳特有の魔獣『霜毒大蛇』の解毒血清だ。あの毒は壊死が極めて速く、血清は王都の高等調合でしか精製できない。しかし従来の輸送では、長旅の振動や熱気、そして峠の極寒による凍結で成分が変質し、アスト砦に着くまでに実に七割が廃棄されている」
「七割……」
フェルが息を呑んだ。調合にどれほどの希少素材と手間がかかるかを知る錬金術師として、その数字の異常さが骨身に染みたのだろう。
「現在、アスト砦の有効な血清備蓄は完全に底をついている。兵士たちは、一度噛まれれば足を切り落とすか、死を待つしかない状況だ。軍務局は従来通りの幌馬車による緊急便も北へ走らせてはいるが、途中の寒波でどれほど薬効を保てるかは賭けに近い。……根本的に解決するには、貴殿らが開発したあの保冷コンテナの技術で、この血清の品質を確実に維持したまま十日間の悪路を越え、アスト砦まで届ける新たな物流を確立するしかないのだ」
エレオノーラの銀白色の瞳が、真っ直ぐにリョウを射抜いた。
国を動かす王女が、机上の報告ではなく現場の生身の命を救うために、民間の一商人に頭を下げんばかりの熱量で語りかけている。
リョウの中に、商人としての計算を超えた、男としての火が小さく灯るのを感じた。
「……引き受けましょう。ただし、単に今のコンテナを積んで走るだけでは足りません。北方の氷点下十度を下回る極寒に耐え、途中で魔晶石が切れないような、新しい補給の仕組みが必要です」
「うむ。そのための試作と輸送実証に必要な予算や関係機関の調整は私が引き受ける。……ただし、現地での部隊の運用判断は砦の指揮官である准将の専権だ。私の一存では動かせぬ部分もあるが、それでもやってくれるか」
エレオノーラが真摯な眼差しで問いかけた。
「現場の判断が最優先なのは当然です。技術でその判断を支えてみせましょう」
リョウの言葉に、エレオノーラは力強く頷いた。
打ち合わせが終わり、王家の馬車を見送った後。
夕暮れの薄暗がりが差し込む大通り本店の地下研究室で、リョウは作業机の上に散らばった昨夜の調合器具を片付けていた。
「ふう……まったく、とんだ一日だったな」
まだ少し突っ張る腰をさすりながら、リョウは作業台の端に放置されていたフラスコを手に取った。
昨夜あおった【試作第5号】の残滓が、底の方にわずかにこびりついている。
何気なくフラスコの内側を薬さじで擦り、取り出そうとしたリョウの手が止まった。
「……ん?」
薬液の残滓は、冷え切った地下室の寒気の中に晒されていたにもかかわらず、白く凍りつくことも、カチカチに乾燥してひび割れることもしていなかった。
さじの先でつまんで引っ張ると、驚くほど滑らかに、どこまでも千切れずにビヨーンと伸びる。
指先で揉んでみる。
冷たさは氷のように鋭いのに、ゲル状の塊は驚異的な柔軟性と密閉性を保ったまま、指の腹に吸い付くように密着していた。
「低温でも柔らかさを失いにくいのか……? いや、地下室程度の冷気ではまだ分からない。外が氷点下十度以下になる北方の極寒環境なら、これすら凍ってひび割れるかもしれない。もっと過酷な条件での耐寒試験が必要だな」
だが、とリョウは考えを巡らせた。
ゲル自体が凍らないことと、箱の中の血清が凍らないことは別の問題だ。
しかし、もしこの柔軟性を極寒でも維持できるなら――木箱や金属のわずかな隙間を塞ぐ密閉パッキンや、悪路の衝撃を吸収する防振材として使えるのではないか。
リョウの脳裏に、先ほどエレオノーラが語った言葉が蘇った。
――長旅の振動や熱気、そして峠の極寒による凍結で成分が変質し、アスト砦に着くまでに実に七割が廃棄されている。
「パッキンで外気の侵入を極力抑え、衝撃を殺す。そこに、庫内の温度を一定に保つ仕組みを組み合わせれば……十日間の悪路でも、血清の品質を維持して届けられるかもしれない」
リョウはフラスコの中の半透明の塊を見つめ、思わず口元を緩めた。
「おい相棒。お前を大きくする役には立たなかったが……どうやら、とんでもない怪我の功名を生んでくれたらしいぞ」
下腹部にそっと手を当てて苦笑すると、フラスコを棚の奥へ片付けた。
机の上の白紙の羊皮紙へ、耐寒試験に必要な氷の調達費用を書き留めた。




