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Proto:分断から繋がるこの世界での生  作者: 惰子兎/惰怯晴真
第一章 『恐怖に満ちた初日』

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プロローグ 『波乱の幕開け』

——クソ、もう終わりだ。


 喉の奥にひどく熱い液体が溜まり、首の骨が支えを失っていく感覚があった。痛みは耐えがたく、あと一秒でも我慢するくらいなら、いっそ今すぐ死んだほうがましだった。


 ——息できない、息できない、息できない、息できない、息できない。

 日向は、何か硬いもので喉を切り裂かれていた。その硬さは喉の半分を完全に抉り開いていて、上から覗き込めば、中身がそのまま見えるほどだった。


 悲鳴を上げようともう一度口を開いたが、出てきたのは血の塊だけだった。溜まり続けるその血が、今度は肺の中へ流れ込んでいく。日向は無様に噎せ返っていた。


 ——クソ、ふざけんな……何でこんなに血が出るの?


 驚くほど、そして理屈に合わないほど、頭を丸ごと一度染められそうなくらいの血が出ていた。

 口の端から泡混じりの血が溢れ、傷口から酸素が漏れる恐ろしい音と、ごぼごぼという呻き声が混ざり合って、やけにはっきりと響いていた。

 肺へ入り込んだ血が肺を温め、その温かさが身体の残りへと伝わっていく。理科の授業で習った、ただの熱の移動だ。こんな時に理科の授業のことなんて、どうして考えられるのか自分でも分からなかった。


 日向は自分の喉を掻きむしった。なぜそんなことをしているのか、自分でも分からなかった。喉に溜まっていく血を掻き出して、この責め苦のような窒息感を止めようとしていたのかもしれない。薄暗がりの中でも、翡翠色の瞳の前へ持ち上げてみれば、その両手が真っ赤に染まっているのがはっきりと見えた。


「痛い? 苦しいのが分かる? 今すぐ死んでしまいたいの?」


 ——うん。殺して。痛すぎるんだけど。


 女は自分を嘲笑っている。間違いなく嘲笑っている。他人の苦痛を悦ぶ、とんでもないサディストだ。

 自分を襲ったものが何なのか、日向ははっきりと覚えていた。あれは間違いなく武器だった。


 打ちつけてきたそれは金属のように硬く、棘のついた鞭のようで、日向の肉をいともたやすく裂いていった。

 首はほとんど完全に断ち切られ、後ろの皮一枚でかろうじて繋がっている。それがなければ、頭は胴から切り落とされていただろう。

 少なくともこれで二度目、日向は自分の人生が終わるのだと確信した。

 今度はもっと遠くの、また別の世界へ送られるのかもしれない。最初の時だって、死にかけたところをもとの世界からこの世界へ飛ばされたのだから。


「あなたの意識が、この世界から離れはじめているわ……。もうすぐ天使たちと一緒に眠るのよ、美しい子。ええ——さあ、ゆっくり死んでいきながら、心の中で命乞いをしてちょうだい」


 ——いつ死ぬの、いつ死ぬのよ!? まだ死んでないの? 何でまだ死なないの! 意識がまだこの地面にしがみついてる——離せ、離せ、離せ、離せ、離せ!! もう死んでる? これって現実なの? 誰でもいいから、私の命を奪って、魂ごと砕いてよ!


 痛みも不快感ももう感じないのに、意識と魂だけが残っていた。要するに、死ぬ気配がまるでない理由が分からなかった。——いや、違う。身体は死んでいくように弱り続けている。死んでいく感覚はある。ただ、意識や魂が離れていく感覚だけがなかった。

 意識と魂が、言葉にできない「生きたい」という意志のせいで、この世界にしがみついているだけなのだろうか。

 いや、それも真実ではなかった。また嘘だ。生きたいなんて意志はない。死にたい。今すぐ死にたい。いったい何が、自分をこの世界へ縛りつけているのだろう。


 襲ってきた相手の顔は、まだ見えないままだった。女だろうと思っていたその人影は、影の中から日向が死んでいくのをじっと眺め、あの声で嘲り続けている。だが日向自身もまた、自分が「死んでいく」のを眺めていた。この状況では、二人そろって日向の死を見物していることになる。

 一方、傍らの少女の意識には、もうかすかな灯りしか残っていないようだった。それでも日向を見つめるだけの意識は保っていて、日向のほうも、わずかに残った力で首をほんの少し傾け、その視線を受け止めた。


「日向……」


 少女の訴えかけに、日向は応えることができなかった。ただ、その眼差しを受け取ることしかできない。二人の頬を、小さな涙が伝っていった。

 それでも心の中では、日向は完全に答えることができていた。悲しいことに、日向の心が送っているその答えを、少女が聞くことは永遠にない。


 ——助けてあげられなかった。クソ……二人とも死んじゃったみたいだね。


 少女は、地面を照らす月明かりの輪の中で力なく投げ出された日向の手へ、自分の手を伸ばした。

 チューリップがその手を近づけたまさにその瞬間、少女の瞳から光が消えた。頭の傷が原因で死んでしまったらしい。それでも意識を失う直前の一瞬、チューリップの指先は、どうにか日向の指先へ触れることができた。


 指と指が触れ合った瞬間——

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