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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第17章
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【第166話:交わらなくても広がっている】

「こ゚縁が無かったという事で‥‥」

「えっ?!」

速攻で帰ろうとするヴェスタ。

アイカとジュノも回れ右して、歩き始めていた。

王と宮内省の役人と、外務大臣たらいう3人で謁見のようにヴェスタ達を玉座で待っていた。

ここですと案内された後のセリフだった。

おまちくださいー!とすがるナラインに言ったセリフで、王たちには一言もなかった。

「会合と聞きましたのでナライン将軍の顔を立てただけですよ?あそこの人たちには特に用事もないです」

それでもとなんとか取りなそうとするが、後ろから声がかかる。

「そこの女!失礼ではないか?御前であるぞ!」

王ではなく、周りにいた偉そうな男たちの声だ。

あちゃーみたいな顔で額に手をあてるナライン将軍。

「将軍‥‥私達の力をお見せしないといけませんか?」

ぎぎぎと音がしそうな笑顔でヴェスタが告げる。

「いえ‥‥決してそのような‥‥後ほど私めが思い知らせてやりますので‥‥」

跪いたナライン将軍が可哀想だなと思いヴェスタは続けた。

「‥‥将軍‥‥友好を結びたいというのならば、やぶさかでは有りません‥‥‥悪意をもって便宜や、まして見下すような関係を望むのならば、今後はそのつもりで対応します」

そこまで言われるとナラインとしても返す言葉はもうなかった。

ジュノやアイカを見た瞬間に王たちが見下した態度になったのを、ナラインは気づいて焦った。

ヴェスタにもそれは伝わってしまったようだ。

どうしても西方の王族や支配者達は自分たち以外の人種を見下す風潮がある。

アヤンタ王国全体としてみたら、それは極少数の見解なのだが、それが上にいるので問題があった。

ヴェスタ達は速やかに王城を後にするのだった。

まだ午後も速い時間だったので、お買い物と散策に繰り出す三人。

「アイカはまた図書館が見たいのです!」

「私は小物のお店に行きたい!」

「うんうん、じゃあ夕方にナライン将軍の家で集合ね。霊子通信切れたら突入だからね」

ジュノが念を押して別れる。

晩御飯もまたナライン将軍がご馳走したいと言うので、当てにしていた。


ジュノは洋服を何件か見てから、食料品の店に入る。

前にもみた雰囲気があり、軒並み値札が直されて高額で販売している。

「おじちゃん‥‥たかいよぉ‥‥チョコほしかったのにな」

店のものにジュノがねだるが、ごめんな入荷の当てがないので高くなっちゃうんだよと説明してくれた。

アヤンタでは嗜好品が特に西方からの輸入に頼っているのだが、次回の入荷は全く目処が立たないのだという。

洋服や主食となる小麦や野菜肉はだいたい国産なのだが、スパイスや果物は南方植民領地からだ。

(‥‥これは色々と不満がでそうだね)

嗜好品や一部食品などの値段が上がると、それを補填するように他の値段も上がる。

結果全ての品目でインフレ傾向に膨らむのが常だ。

ジュノにとってそれは他人事で、ただの旅行者なのだが昨日すこし仲良くしたナラインの子供たちや奥さんが可愛そうだなとも思う。

それ以外にも先日の救助支援で顔見知りになったものも、多くこの街にはいる。

(帝国が陸上の交易ルートを完成させたら違うかな?)

間に入るサンガマラ王国の商人達次第だろうなと、簡単に世界情勢を考えたジュノはまた別の洋服屋さんに入っていった。


アイカは図書館で、先日見れなかった分野の本を読み漁る。

何しろアイカは高性能な人格AIなので、ぺらぺらぺらとめくるだけで内容を覚えていく。

ストレージにおさめておけば、後で精査して不要なものを削除すればいいので、玉石混合のまま吸収していく。

この図書館には30万を超える書籍がアーカイブされていて、いかなアイカでも分野を絞らねば参照しきれなかった。

(ゼフィルヴァルカの大学図書館はよかったなぁ、4500万冊以上の学術書籍をAPDF形式でアーカイブしてあって、検索機能もAIだったから、やり取りが早くて正確だった)

流石にアイ達のように30倍とは言わないが、司書AIの性能にあわせても10倍以上の速度で話せるし、意図を正確に読んで不足分を補ってくれた。

ではこういった紙の本が要らないのかと、そうはアイカは思わない。

そもそもページをめくって本を読むのが好きなのだ。

愛佳に教わり読書を覚えたので、絵本や小説ですら紙媒体の方が好きだった。

わざわざ古本などを買い漁るのも同じ理由だ。

占める物理的スペースにすら、知識を得た幸せを感じるのだ。

(読み終わった本が重なるのは気持ちいいのです!)

今まさにアイカの前に右から左にすごい勢いで本が移されていく。

一冊平均30秒ほどで読破して本の塔を作っていた。

とても幸せそうに。


ヴェスタは店に入らずに港に向けてぶらぶらと歩いていた。

少し考え事をしたかったのだ。

お城は高台に有ったので、どんどんと海に向かって下っていくルートだ。

風も穏やかで、夏っぽい雲が水平線を流れていく。

街の空気はにぎやかで、穏やかな午後の時間が流れている。

それはヴェスタの心を少しづつ癒やしてくれた。

(ジュノとアイカに‥‥蔑むような目線と欲望を感じた‥‥)

ヴェスタは長く訓練されて、その方面の視線や気配に詳しい。

怒鳴り散らして、殴りかかりたい気持ちを抑えて静かにでてきたのだ。

(聞いてはいたけど‥‥酷いものだわ‥‥リステルが見限るのもわかる)

むしろリステルは強く賢かったのだなと、ヴェスタは感心した。

本国や軍施設のあったゼフィルバルカと言う都市くらいしかヴェスタは世界を知らない。

旅行をしたことなどないし、自分の故郷もない。

(故郷はそもそも滅んだらしいしね‥‥)

今この道をあるいて下るのはとても新鮮で、ヴェスタの心を柔らかくしてくれる。

この国の支配者のことを考えると、とげとげしい気持ちになってしまうのだ。

(‥‥それでもこの国にも沢山の善良な気持ちのいい人達もいる)

先程から何度かすれ違う人たちは、誰も邪な気持ちを向けてこない。

きっと家に帰ればよき家族で、良き夫であったりするのだと感じ取れる。

ヴェスタは自分の持つ知識の中で、世界というものを再構築していく。

良いこともあり。

辛いことも有る世界だ。

気持ちのいい人もいて、そうじゃないものもいる。

それらを全部集めて世界なのだなと。

(ジュノもアイカもいて‥‥あの気持の悪い男たちもいる)

AIKA-02にけしかけられた男たちのようなものもいれば、先日透明な涙を流した少年のようなものも確かにいるのだと。

(それら全部がこの世界なのだな‥‥)

ヴェスタは少しだけ大人になった気分を味わう。

今まで気づかなかった事に、今日気づいたから。





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