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【ヘリカルスパイラル】  作者: Dizzy
第1部 第14章
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【第138話:最大限の感謝を】

アイカは辛抱強く待ち続ける。

下手人のAIが指定してきた日を待っている。

あの日からアイカはスリープもしていないし、もちろん睡眠も取っていない。

義体を休ませるために暗くして横になり目を閉じる。

そこにアイカを休ませ癒やしてくれる時間はもうなかった。

拠点に戻ったアイカは、アイ達を式に入れて4方を探索させた。

もしやこの拠点の側に二人が囚われている可能性を考えたのだ。

贅沢に霊子波による高コストの探索を広くかけてみたが、何も得られなかった。

(‥‥こちらが手出し出来ない所‥‥恐らく軌道上まであげられている)

冷静に考えるアイカには想像がついた。

自分が同じことをしようとしたらそうすると。

さんざん母船に不信感を植え付け、軌道に上がること、この星から出ることを怖がらせる。

(まんまとしてやられました‥‥)

確かにアイカ一人でもスパイラルアークを軌道に上げることもできるが、それを選べなくさせられていた。

万が一にもこの船を失うわけには行かないのだから、それは選択肢に上がらない。

だから逆に言うと軌道上以上の位置にいると解った。

式神を戻し一度補給してから、2交替で24時間の監視体勢を組み拠点の周囲を見張った。

その行為はジュノ達を探すためではなく、この大事な拠点と母船を守るため。

必ず帰ってくるのだからと。

それだけを頼みに毎日をじりじりと耐えた。

一瞬でもする事がなくなると、悲しいこと辛いことが思い浮かぶので、できるだけ作業をする。

採掘ラインの効率化に手を付け、設備の改善をする。

既存の施設の保守も徹底して行い、効率を下げない努力をした。

そうして素材となる金属や生物植物由来の素材を集め、ナノマシンを増やし母船にエネルギーを貯める。

当たり前に毎日してきたことを、見直し引き継ぎ徹底して効率をあげていく。

実にこの6日間で120に及ぶ改善提案を出し実施して110を実らせた。

10項目は元の方が効率がいいとわかり、何も惜しむこと無くもとに戻した。

マクラも更に2台増産して、素材を集めた。

6台のマクラを操りつつ、1台の式神で地質調査をこなしつつ、1台は警備に当たらせる。

アイ達も2交替で大変だったが、それ以上にアイカはきついのだ。

それくらいしないと、アイカの精神を保てなかった。

夜間はマクラ6台と式神1台に減らし、負担が少なくなる分を義体の休息に当てる。

癒やすためではなく、壊さないための休息だ。

その間も式を動かしデフラグを実施しデータを整理し、アイカは自分をいじめ続けた。

やっと約束の日の朝が来る。

日の出前から通常業務にもどるアイカは、改善点に取り組み保守をしてと忙しく働く。

本来のAIはそのように働かされるものなのだと、自分に言い聞かせて。




AIKA-02が拠点の上空に来たのは、正午だった。

図ったように12:00に来たのは調整して来たのだろう。

実にAIらしいなとアイカは思う。

上空から降下してくるのを式神が捉え、ロックオン状態で見張っている。

休憩中だった01と02もスクランブルで上がり、3台で狙っている。

アイカ自身もスマートライフルを装備して、外装は自分のティア6装備だ。

ライフルもロックしている中、すたと拠点の前に降り立つAIKA-02。

「待たせたわねAIKA-01」

アイカはロックを外さず、フルチャージのスマートライフルで至近から狙っている。

上空を亜音速で飛びながら、式にも放射魔法をチャージ済みだ。

「最初に言います。わたしの名前はアイカ‥‥AIKA-01などと呼ばないで」

ぎりと奥歯を噛みしめて怒りを収めるアイカ。

AIKA-02はアイカの怒りを十分に理解して、刺激はしない。

淡々と話しを伝える。

「二人は南にある、あなた達の拠点に置いてきました。わたしの式が狙っていますので、変なことは考えないで」

これでアイカは撃てなくなった。

ロックを外しスマートライフルを下ろす。

式神にチャージしていた光魔法のレーザーもキャンセルする。

AIKA-02はそれらを知ってか知らずにか話しを続ける。

「約束通り返したわ‥‥‥‥それではね‥‥アイカ」

刺激しまいと思ってかアイカと呼称し、AIKA-02が飛翔魔法を唱える。

とんとジャンプするだけで10m以上を飛び、一瞬で空の彼方に消えていった。

アイカは走り出しVTOL機に乗り込む。

式神も同じタイミングでアイカの肩に収まり充電・充塡を始める。

VTOL機の方が速いので、乗せていったほうが早く着く。

すでに話を聞いた瞬間から主機はアイドリングを始めていて、乗り込んだ直後に垂直に飛び立つ。

普段は節約のために滑走するのだが、時間の方を惜しんだのだ。

(あぁ‥‥ジュノ‥‥ヴェスタ‥‥お願い無事でいて‥‥)

スロットルを限界の負荷で開いていく。

わずか数秒で音速を越えたVTOL機が南を目指す。

アイカの気持ちに答えるように、翼を軋ませるほどの飛行を見せる。

主翼も垂直尾翼も畳まれ、抵抗を下げたVTOL機は最大速度に近い2.3マッハで飛び、800kmを20分かけずに飛び渡る。

ごうと制御できる限界のGで減速し旋回降下するアイカ。

最後は垂直着陸で滑走路にドンと降り立つ。

らくがきの3人と式達が笑顔で迎えてくれるのだが、それすらもアイカの涙を誘う。

右に跳ね上がる風防の動きすら、待ちきれずに式神が飛び出し二人を探す。

アイカが飛び降りる頃には、拠点の作業室に寝かされた二人を見つけていた。

だだっと走り、最後はジャンプして飛び込み、地をアルミ合金のブーツが削る。

そこにはシーツにくるまれて目を閉じるジュノを抱き、同じくシーツをまとうヴェスタが座っていた。

「ヴェスタ!!」

ばんと外装を入口でパージしたアイカが、ヴェスタに十分に手加減してひしと抱きつく。

「アイカ‥‥ごめんね心配かけたね」

ぎゅっと抱き返すヴェスタにすがり、泣き出してしまうアイカ。

「わああぁあああん!!」

よしよしと背中を抱くヴェスタと、間にいて目を閉じているジュノをまとめて抱きしめる。

まるでアイカに置いて行かれそうになり泣いたアイ達のように、縋り付きわんわんと泣き続けた。

「アイカ‥‥ごめんね‥‥」

ヴェスタも涙を流しぎゅっとアイカを抱きしめ頬を寄せるのだった。

この空っぽにしていった拠点で、またこうして抱きしめられたことをアイカは感謝する。

(ありがとうございます‥‥慈悲深き女神ラウマ様‥‥最大限の感謝を‥ありがとうございます‥)

アイカは自分の祈りを理解すること無く、繰り返し感謝の言葉を思い続けていた。

二人の温度にすがり、泣き続けながら。




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