余話2
オルウェンの両親は早く引退したいのに息子が色恋沙汰に全く興味を示さなくて困っていた。
引退の条件を『息子が結婚したら』にするんじゃなかったとは後の祭りだが、きっと結婚せずに自分たちが領地に引きこもったらこの息子は一生独身かも、という危惧もある。
自分たちのように本当に好きな人と結婚して欲しかったがあまりに女っ気がなさすぎて両親の方で嫁を探すことにした。
女性に苦手意識のあるオルウェンはきっと見合いで嫌な思いをしたら二度とこの手の場所に出なくなるだろう。
とびきり美しくできるだけ性格のよい年頃の娘を探すことにした。
息子も見た目はそれなりにイケメンなので高望みしても多分大丈夫。うち公爵家だし、と。
白羽の矢が立ったのはおしゃれなファッション業界一族の令嬢だ。公爵家の宝石業とは販売ルートや顧客の共有など家同士としても利益がある。
堅物なオルウェンには利益を提示するほうがすんなりと結婚してくれるという算段もあった。
それよりもこの娘は絶対に息子の好みにちがいない、と両親には根拠のない自信があった。拗らせてる息子は異様に理想が高いはずだと踏んでいた。無駄に美に対して見極める目もある。
狙いは当たって息子はみっともないくらいこの愛らしい令嬢にゾッコンだ。
今まで全く聞く耳を持たなかった自分たちの馴れ初めを聞いてきたり、女の子がどうしたら喜ぶのか、どんな服を着たら彼女に見劣りしないのか、などいい年齢でそんなことに悩むヘタレぶりは気持ち悪いが親目線でなんとか可愛らしい。
息子は助言を素直に受け入れ、こんなとこが可愛い、めでたく結婚式を迎えやっとこさ引退できる。
こんな美しい公爵夫人が着けてくれればジュエリーの売り上げは更にうなぎ登りにちがいない。
ヘタレには夜の手解きを教え込んだし、ささやかながら素敵な贈り物もしておいた。
きっと息子たちも親に負けないくらいのラブラブ夫婦になるだろう。
両親は安心して領地で更に愛を育むことにした。