壱ノ二
長い振袖を翻し、二人の男女が騒然とする群衆の中を通る。
白い軍服の女は朱雀麻美。帝都軍の最年少にして壱番隊隊長と指揮官を務める秀才。
蒼い軍服の男は青龍沙保。帝都軍の弍番隊隊長であり、副指揮官だ。
「状況は」
「いつも通り、死人も怪我人も無し。建造物への被害も無いみたいだよ」
「今回は何が目的なんだ…」
「海咲さんからの報告によると、三人は女の子を連れてたって。多分、此処の禿の一人だろうね」
「物ではなく子供…久しく"そっち"の動きは無かったが、というかおい青龍!」
「ん?」
麻美が鋭い目で沙保を睨みつける。睨まれた、沙保は物怖じするどころか表情一つ変えず穏やかな笑みを浮かべているが。
「ん?じゃないだろう!貴様、軍務中にその微温い喋り方はやめろと何度言えば分かるんだ!」
「いやぁ、俺はいつもこんな感じじゃん。大目に見てよ、麻ちゃん」
「其の呼び方やめろ!」
「朱雀麻美指揮官!青龍沙保隊長!」
麻美の怒号を隊員の声が遮る。
「…なんだ、宇央」
その女性隊員-宇央巳波を見据える。その表情には僅かに焦りが滲む。
「経った今、"飛鳥"の情報が入りました。連れているのは此の中の遊郭で禿として働いていた少女。名は"紅"。現在は建物の影に潜伏中ですが、いつ動きがあってもおかしくない状況です!」
「…そうか、わかった。下がれ」
「はっ!」
「お説教を聞いてる時間は無いみたいだ」
「続きは後だ。行くぞ」
その時。
「いたぞ、追え!!」
隊員の一人の叫びが響いた。途端、そこにいた野次馬や既に待機していた軍人達の喧騒が大きくなる。
「!!クソっ…!」
「どうする、朱雀指揮官」
「総員に告ぐ!怪盗団・飛鳥を捕らえ、帝都の混乱を収束せよ!」




