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青い天使

 第六の天使は青い天使。

 それは、魔物に怯えつつも聖なる一角獣の訪れを信じ、ただ運命に身を委ねる南東の国の無知な人々を導くために現れた。

「私は英知。知恵を宿す者。神々の許しを得て、あなた方を救いに来ました」

 天使はそう言うと、驚く人々に自身の知恵を分け与えた。

 そして、黄金の果実を生み落とすと、果実より生まれた大樹ユグドラシルを一瞬にして育てあげてみせた。

 青い光に包まれてユグドラシルの枝は四方八方に伸びていき、人々を覆っていた重々しい闇を払いのけ、光のさす美しい聖域を作り上げた。

 全ての魔物は追い払われ、人々を覆っていた絶望は遠い水底に沈んでいく。

 安堵し、喜ぶ人々を前に青い天使は言った。

「間もなくユグドラシルは青い卵を生みます。卵からはやがてこの聖域の命の源となる英知の果実が孵るでしょう。果実は何度も生まれ変わり、この聖域の永遠のものにします。その営みが守られる限り、聖域の守りは永遠を約束されることでしょう。

 けれど、安心してばかりはいられません。悪というものはいつもこの世に住まう者の傍に潜み、少しずつ心を蝕んでいくものです。そして、全ての希望の源である果実を求め、欲望のままにその魔力を欲するかもしれません。

 もしも悪意をもって果実を手にする者が現れれば、その者はこの英知の聖域を壊す者となるでしょう。その時がこの平和な時代の終わりとなります」

 人々は天使の言葉に怯えた。

 しかし、天使は人々を包み込んだ。

「そうならないために、私はあなた達に武器を授けます」

 天使は自身の青い羽根をちぎって、人々に指し示した。

「これは槍。何よりも冷静で、何よりも感情的に、英知の果実を守るべき力を秘めています。必ずあなた達の役に立ち、この聖域の要となるでしょう」

 天使によって羽根は人々の群れへと落とされ、その心へと消えていく。

 そして、ユグドラシルが青い卵を生んだ時、天使は静かに告げた。

「忘れないで。いかなる悪がこの世界を包んでも、あなた達の味方となるのはいつだって知恵であることを」

 天使が去ると、人々は新しい国を建てた。

 南東の大地、ただひたすら聖なる一角獣の訪れを待ち続けるだけの国から、天使とユグドラシルを崇拝し、一角獣の守護を信じる冷静な心を持つ人々の国へ。

 英知を名に持つ青い天使に抱かれる大地へ。

 南東の果てに出来たその新たな国は、英知の国と名付けられた。


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