63話 静かなる魔獣
「勝負は終わった。俺の勝ちだ…!!クハハハハハハハハ!!」
と康彦は言い、その後、ずっと笑っていた。
しかし、
川の中から巨大な一本の尻尾が現れ、康彦に襲いかかった。
「なにッ!?」
と康彦は言い、襲ってきた尻尾を棍棒で叩き返した。が、
その巨大な尻尾は康彦をつかみ、そのまま持ち上げた。
「クソッ!!なんだこの尻尾は!?」
と康彦は言うと、川の中からさらに魔獣化した黒鳥が現れた。
目つきは普段の魔獣化よりも怖く、何よりも殺気がすごかった。
「コロス…コロス…!!」
と黒鳥は正気を失いもはや殺人鬼となっていた。
黒鳥は尻尾で康彦をしめつけた。康彦の骨が折れていき、バキバキ聞こえてきた。
「ぐああああああ!!や…やめろ!!わかった!!わかったから、やめろ!!死ぬぅ!!!」
と康彦は完全に勝機を失っていた。
しかし、
その声は黒鳥には届かなかった。
「ナラバ死ネェェェェェェェ!!!」
と言い、黒鳥はさらに強くしめつけた。
康彦はもう出す声もなく、ついには血も吐いた。
「わかっ…ガハッ!!降参…するか…ら…」
と降参という言葉は黒鳥に届いたらしく、黒鳥は康彦を離した。
すると黒鳥の尻尾はどんどん小さくなっていき、そのまま魔獣化が解けた。
そのとき、レティアの声が聞こえた。
《田辺 康彦対黒鳥 鉄尾の勝負は、田辺 康彦が降参したため、勝者は悪魔の継承者代理 黒鳥 鉄尾です》
そのレティアの声は、黒鳥と康彦以外の人にも聞こえている。
僕は真っ白の空間でただ一人喜んでいた。
黒鳥は戦い疲れ、地面に座り込んだとき、いつの間にか真っ白な空間にいた。
「あれ…康彦は…?」
と黒鳥は康彦を探したが、真っ白な空間に康彦はどこにもいなかった。
康彦も戦い疲れ…いや、気絶していた。
康彦も真っ白い空間に飛ばされていた。
第二開戦は誰と誰が戦うのか…、すべてあのレティアっていう赤ん坊の創造神が決めるらしいが…、
暇だ…。いつまで僕はこの真っ白い空間にいればいいんだろう…?
そのころ、
マースさんのいた真っ白い空間はどんどん消え、マースさんは気がついたら、どこかの城の屋上にいた。
「どこの城なんだ…?ここは…」
とマースさんは周りを見渡していた。
空は曇っていて、今からでも雨が降り出しそうな天気だった。
「マースが相手か、ならもう勝負の結果は見えているな…」
と何者かがマースさんに話しかけた。
「その声は…姉さんか…」
とマースさんの目の前にいたのはセレシアだった。
そのとき、
レティアの声が聞こえた。
《第二開戦は天使の継承者代理 セレシア。悪魔の継承者代理 マースの戦いです》
その声も全員に聞こえていた。
その声を聞いた僕は思った。じゃあ、最後の戦いは真司になるのか…と…。
そして、
城の屋上ではマースさんが死神の黒剣を構え、セレシアが海王の扇子を構えたとき、レティアの声が聞こえた。
《戦闘開始!》