Rati 39. 出発! オープンキャンパス!
長いこと送迎のバスに揺られて、俺やサクヤ、モナカは県外まで来ていた。
目的地に到着してバスを降りれば、晴れ渡る空が輝きまるで俺たちの到来を歓迎してくれているかのようだ……!
「ここが、レヴルナの学園……朱鳥ノ宮!」
今日は、待ちに待ったオープンキャンパスだ!
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Rati 39. 出発! オープンキャンパス!
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オープンキャンパスを効率よく回るために、多くの小学生が先生の指示の下でグループに分けられていく。
事前に申請した地域が同じなので、俺たちは皆同じグループだ。
それにしても、ここは空気が美味いな。
あまりにも綺麗な空気に一呼吸した瞬間、日本人なら誰もが感じる自然豊かな田舎のような懐かしささえ感じた。
それを表すように、ここ朱鳥ノ宮は現代社会から少しばかり離れた山の麓に存在する。
自然を体験し修行を行う事で心・技・体を養っていくカリキュラムも存在するんだっけ。
まるで、俺達がじーちゃんのもとで修業しているような事も一部では行われているらしい。
胸の奥に染み込んでいく澄んだ空気を吸い込みながら整列し、ガイドの生徒が俺たちの前に現れた。
規律の正しく爽やかな雰囲気のお兄さんだ。
「僕は、高等部一年。 リングネームはヨシュアです。 これから皆さんのガイドを務めます。 よろしく!」
「「よろしくお願いします!」」
気合の入った挨拶が響き、朱鳥ノ宮に本当に来たんだなと実感する。
オープンキャンパスに参加する生徒の情報は既に朱鳥ノ宮に送られている。
『だから受験での印象を良くしようと見学者は振る舞いも気を付けていくだろうね』
って今日はここいないけどカゲミツが言ってた。
ジュケンセンソ―ってやつか……厳しいセカイだぜ!
「モナカ、リングネームだってよ。 俺たちも入学したら決められるのかな!」
「僕は、実名で良いよ……なんか恥ずかしいし……」
俺達の会話がうっとうしかったのか、周りの生徒から嫌な感じの視線を受けてしまった。
朱鳥ノ宮でのプレッシャーに気が立ってるってやつか?
「リングネームに興味があるのかい? ここではお互いを実名ではなくリングネームで呼び合うことも多いんだよ」
そして、お兄さんは緊張感のある空気をほぐすように俺達見学者へと語り掛けてくれた。
「そう固くならなくてもいーよ。 悪い事をしなきゃ内申点には響かないからね。 じゃ、今日は力を抜いて楽しんでくれ」
お兄さんは笑いながら言って、そう声をかけた。
俺達のグループには厳格な雰囲気が漂っていたけれど、彼の一言で空気が柔らかくなったのを感じた。
「カッコイイな……な、モナカ」
「……ヤマト、もしかして。 あの人ってさ、前にヤマトと試合したお兄さんじゃない?」
「え?」
……爽やかな振る舞いで、ヨシュアというリングネーム。
「あっーー!! お兄さんあの時の!!」
「気付いたかい、ジュニアチャンピオン。 また会えてうれしいよ」
一年前のジュニア大会の決勝で、俺と戦ってくれた人だ!
思わぬ再開に感動が湧き上がりながらも、ヨシュアさんは手を差し出してくれた。
もちろん、俺も握り返すぜ。
「あいつ、ヤマトって言ってたよな」「……ジュニアチャンピオンってまさか」
同じグループの小学生たちが俺の事を見てざわついている。
お、おれってばけっこー有名人だったりする?
「お前、あのヤマトなのか? 俺、決勝見てたぜ!」
「あぁ、皆も入学したらよろしくな!」
へへ、こりゃあ入学早々友達には困らなさそうだぜ。
「有名人みたいだね。 ヤマト」
「それより、勉強できないんだから入学できるか分かんないでしょ」
うぐ……。
サクヤの一言が俺の胸を一撃で抉り取ってきた。
そういえばそうだよな。
入学するには試験も突破しないといけないんだ。
「さ、皆お互いの自己紹介は済んだかな、仲良くなったところでこれから校舎を案内しよう」
校舎における大体の設備を説明されて、俺たちはある場所へ案内されていた。
「さぁ、ここが皆が一番見たかった場所。 レヴルナ専用のバトルアリーナだ」
「わぁ!」「でけー!」
感嘆の声が、天井の開けたホールへと微かに響き爽やかな風に流されていく。
ここで戦ったら、とても気持ちがいいんだろうな……。
目を閉じれば、観客席から渦巻く熱気や、フィールドでのプレイヤーの緊張感が胸に浮かび上がってきて魂を揺さぶられる感覚に陥ってしまう。
「ここは学内の大規模な大会に使われたり、学園祭などのイベントでプロが戦ったりするんだ。 今日は使えないんだけどね」
ホログラムでパートナーを映し出すパネルフィールドが設置されたこの会場は、イベント専用のものだという。
未使用による劣化を防ぐため、学園の清掃当番がたまに使用し、会場をメンテナンスしているらしい。
「つまり、ここでは清掃当番がご褒美みたいなものなんだ」
「子守りとはずいぶん暇みてーだな、ヨシュア」
「君か……」
会場の設備の説明を受けていると、少しガラの悪いワイルドな雰囲気のお兄さんがヨシュアさんの前に立ちふさがった。
なんか、仲が悪そーな雰囲気だ。
「俺は今日が清掃当番なんだ、見学したらとっとと消えろ。 邪魔だ」
「僕は責務を果たしてるだけさ、いつもフラフラしてる君と違ってね」
2人は言葉のジャブをぶつけ合い、ほどなく睨み合った後お互いに距離を取る事にしたようだ。
ヒートアップしなくてホっとしたぜ。
「皆、怖がらせて悪かったね。 説明会に行こうか」
「……」
な、なんか俺コワモテの兄さんに見られてる?
これがユーメーゼーってやつなのか!?
「おい、そこのチビ」
「は、はい」
「前にどっかであったか?」
「やだな。 お兄さんみたいなコワモテな人、会ったら忘れないっすよ!」
「んだと?」
「い、いや、これは緊張のあまり本心が出たと言いますか……」
「本心だぁ?」
……こ、こええ。
この人、目つきがイカツすぎる。
深海に潜み獲物を狙うヤクザみてーな顔つき。
前世はきっと、チョーチンアンコウだぜ。
「とっとと行け」
「はい!」
……。
「おい」
「ま、まだ何かご用で?」
「こんな学園入らないでレヴルナなんてやめちまえ。 周りのガキ共にもそう言っとけ」
「わ、わかりました。 俺はやめませんけどね」
俺はレヴルナをやめるわけにはいかないんだ。
脳裏に孤独だった少年の顔が思い浮かび、ついいらない事まで言ってしまった。
「あ?」
「では、失礼しまっす!」
こういう時は逃げるが勝ちだぜ。
溜息を吐くイカツイお兄さんを後にして、俺は皆の後を追った。




