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04.ステータス画面表示騒動

「――ル、メリルトゥワナヒュルテ・・・?」


目を開けると、顔をくしゃくしゃにした中年の男が、こちらを覗き込みながら、聞き慣れない言葉で誰かと話していた。

そっか、もうここは転生後の世界で、目の前にいる4人はおそらく・・・。

そんな事よりも――


(めちゃくちゃ寒い!凍死一歩手前だよこれ!手足もピリピリ痺れて動かないし。いや、これはまだ赤ちゃんだからなのか?とにかく体調が最悪!)


「んぅぅえええ・・ん゛ぅぅえええええん!!」


気づけば僕は、声を上げて泣いていた。なんで?

中身は30歳過ぎた大人のはずなのに、体を覆う不快感に感情が抑えきれなくなる。

僕を取り囲む4人は泣き声を聞いた途端、ぱっと表情が明るくなった。なんで??

すると、僕を抱いている女性、おそらく母親が優しく身体を揺らしながら歌い始める。

言葉は分からないけれど、聞いていると優しさに包まれているようで心がポカポカしてくる。

その心地よさに、僕は数分と掛からずに瞼が開かなくなり、音が遠のいていった。


--------------------------------------------------


次に目を覚ます時には、僕は揺り籠の中にいて先ほどは夕日が差し込んでいたはずの部屋は、すっかり宵闇に沈んでいた。

部屋の中にはどこかに灯りがあるのか、薄っすらと明るくかろうじて揺り籠や天井を確認できた。

周りをよく確認しようと体を動かすが、思うように動かない。

眠る前に感じた不快感や手足の痺れはもうないが、体を横に向ける事すら叶わない。

赤ちゃんの時ってこんなにも不自由なものなの?首も、腕も、信じられないほど重い。


そういえば赤ちゃんは首がすわるとか、寝返りが打てるようにようになるのにも時間がかかるんだっけ。

前世の生まれたての記憶なんて持ってる訳ないし、独身だった僕には関係ない知識だから何も知らないけど。

しばらくはこの景色を眺めることになりそうだ。


そうだ、もらった祝福の確認!とはいえ、どう確認したらいいんだろう?

あの神様のような光の玉は、僕の部屋の異世界転生の漫画や小説を参考にしたって話だった。

もしこの世界が魔法が使えるゲームのような世界であるなら・・・。


「うえーあうおーうん!(ステータスオープン!)」


ろくに発音もできない口で唱えた僕の前に、予想通り、漫画やゲームで見慣れた半透明のステータス画面が表示された。

だけど・・・読めない!このステータス画面、多分、この世界の言語で表示されてる!!

これは不便だな。いよいよ読み書きができるようになるまで何もできないんじゃないか?


「ルワナ?ドゥイエメリルワナステータス・・・」


急に聞こえた声に、僕は心臓が飛び出るほど驚いた。

そりゃそうだ。生まれたての赤ちゃんを一人、部屋に放置するわけがない。

心臓をバクバクさせている僕の顔を、声の主である女性がステータス画面越しに覗き込んだ。

あっ、この人眠る前に僕を抱えて歌ってくれた人だ。やっぱり僕の母親なのかな?


僕の抱きかかえ始めた母親であろう女性は、僕の顔とステータス画面が表示されている場所を交互に見つめながら、何か言っている。

もしかして、この画面他の人にも見えちゃうやつ?

だとしたら、かなり軽率なことをしてしまった。このステータス画面をこの世界の人間全員が表示させられるものなのかは分からないが、生まれたてで表示させられるなんて、まずありえない話だろう。


そんなこんなで自分の行動を反省していると、あっという間に人が増えてしまった。

一人は、夕方泣きながら僕の顔を見ていた中年の男性だ。他にも、メイドか侍女のような服装の女性が何人かいる。

揃った皆は、同じように僕の顔とステータス画面のある場所を交互に見ながら、ぶつぶつと話し合っている。

まるで動物園の動物になった気分だ。やめてくれ、そんな奇怪な生き物を見るような目を向けないでくれ・・・。


集まった大人たちは、10分ほど僕を眺めながら話し込むと、ようやく部屋から出ていった。

その後、同じ部屋にいたであろう母親に、頭を撫でられた。


「ぇえあい!」


撫でられた嬉しさに感極まって、また勝手に言葉が出てしまった。

この感覚はなんなんだろう。

ちゃんと前世の記憶もあるのに、感情の振れ幅が大きくて抑えきれない。

まるで精神年齢が低くなったみたいに、気持ちの整理がうまくつかない。

前世ではおっさんだった僕が、女性に頭を撫でられて――まるで尻尾を振る犬みたいだ。

うーん、変な感覚だ。


--------------------------------------------------


部屋の中から寝息が聞こえてくる今は、あれから数時間が経ち、すでに夜中だ。

結局、ステータス画面を閉じることもできず、表示させたままになってしまっている。

だって、閉じたらもっと騒がれるじゃん?

で、何を確認しようとしてたんだっけ・・・。そう!祝福だよ!

今この状況で使えそうなのは、【鑑定】か【分裂思考】かな?

試しに、ステータス画面の一番上の文字を注視しながら、頭の中で唱えてみる。


(鑑定!)


『[名前] メリル・ワーグナー』


ステータス画面の上に、小さなウィンドウのようなものが表示された。

そう、日本語で!

これは便利だ。本の読めない文字に注視して鑑定を発動すれば、翻訳ができるかもしれない。

そして、自分のステータス画面に鑑定を使って表示されたこの名前が、僕の名前か。

メリル・ワーグナー。メリルが名で、ワーグナーが姓――ファミリーネーム、かな?

僕は興奮しながら、次々に翻訳していく。

そして、ステータス画面を一通り鑑定し終えて分かったのが、この情報だ。


==================================

[名前] メリル・ワーグナー

[性別] 女性

[年齢] 0歳 (0ヶ月)


[HP] 15/15

生命力。肉体の成長により一定量上昇する。STRの数値に比例して上昇する。0になると死亡する。


[MP] 30/30

魔法に必要な魔力量。INTの数値に比例してある程度上昇する。睡眠時間1時間につき15%回復する。

残量を超えて使用するとHPを代わりに消費し酷い倦怠感に襲われる。


[STR] 3

筋力や肉体強度に影響を与える。


[DEX] 1

手先の器用さや敏捷性、視力に影響を与える。


[INT] 120

魔力操作練度や魔力効率に影響を与える。


[LUK] 5

幸運値や運命力に影響を与える。


[祝福](隠蔽中)

・思考加速

思考速度が2倍になる。


・魔力貯蓄[14/∞]

MPの過剰回復分を貯蓄する。MPが0を下回った時、HPの代わりに貯蓄量を優先的に消費する。


・礼儀作法

使用者の思考と置かれている状況に合わせて体が自動的に動く。(非戦闘用)


・状態異常耐性

あらゆる状態異常に対して一定の耐性を獲得する。


・鑑定

隠蔽中の内容を含めた対象のステータス情報を表示する。(他人に感知されない)


・検索

日本のインターネットにアクセスし情報をステータス画面のように表示する。


・創造魔法

MPを大量に消費して思い浮かべた物質を具現化する。

または、MPを大量に消費して思い浮かべた魔法を新しく覚える。


[習得魔法]

なし


[特殊技能]

・釣り道具限定の創造魔法の燃費の向上(隠蔽中)

釣り道具を創造魔法で創造する際、MPを消費しなくなる。

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