10.3歳の誕生日②
教会に入り、おばあちゃんシスターに案内された先の礼拝堂には、少しくたびれた雰囲気の男が一人、儀式を行うような服を着て僕達を待っていた。
「キャス、今日はよろしく頼む。メリル、この方がこの教会の司祭を務めるカスティラだ。」
「カステラ??」
やばっ、思わず口に出してしまった。
まぁ前世の食べ物だし変には思われないでしょ。多分。
「はじめましてメリル。私のことはキャスおじさんとでも呼んでくれて構わないよ。」
「はじめまして、ワーグナー家じじょのメリルです!今日はよろしくおねがいします!」
「ははっ、上の子2人と同じく元気で利発そうな子じゃないか。本当に君の子かね?」
「やめろ子供達の前で。((これでも威厳ある父親で通してるんだ。今日は揶揄うな!))」
小声で耳打ちしてるが、近くにいた僕にはバッチリ聞こえてしまってる。
お母さんほど一緒に過ごす時間が多くなかったお父さんは、意外と背伸びしてるだけで見た目ほど怖くないのかもしれない。
まぁそうだよね、あのお母さんがベタ惚れしてる人なんだから、きっと良い人に違いない。
「コホン、じゃあまずは洗礼から受けてもらおうかな。メリル、洗礼についてはどのくらい聞いているかな?」
「かみさまから祝福がもらえるって聞きました。」
「そう。君のお兄さんは【予知夢】、お姉さんは【精霊の友】を授かったんだよ。
どちらも十数年に1人現れるかどうかという、非常に珍しい祝福なんだ。当時はこの町総出でお祝いしたものさ。
君にも大いに期待しているよ。」
「は、はい。」
とはいえ、祝福は神様から授かるものだ。僕がどうこうしたところで良くなったり悪くなったりするものではない。
・・・とはいえ、僕はあの神様と面識がある。何かが起きる予感しかしない。
お願いします!変に注目浴びるようなサプライズだけは勘弁ください!!
「(そんな心配しなくても大丈夫だよ。怖いことも痛いこともないし、すぐ終わるからさ。)」
「(う、うん。ありがとうお兄ちゃん。)」
よほど不安そうな顔を僕はしていたのか、兄が気を利かしてフォローを入れてくれた。
ありがとう。でも違うんだ・・・。
「では早速始めようか。メリル、この円の中に入ってくれるかい?他の見学の方々は椅子に座ってお待ちください。」
僕は指示された通り、司祭が立つ祭壇の前の床に描かれた、人一人分ほどのサイズの白い円の中に入る。
「私はこれから神へのお祈りを唱えるから、メリルは私の言葉をしっかり聞いて頭の中で復唱するように、いいかい?」
「はい、お願いします。」
「メリルー!頑張ってー!」
「ネリッサ、しーっ!」
僕の前に立ったキャスおじさんは左手に持っていた聖典らしき分厚い本を開き、右手を僕の頭に乗せる。
僕が目を向けると、先程までにこやかだった顔がいつの間にか真剣な表情へと変わっていた。
「神よ。この地に生きるすべての命の祖にして創造主たるシャルベイニールよ。今ここに現れし萌芽に、どうか慈しみと祝福を与えたまえ。」
(神よ。この地に生きるすべての命の祖にして創造主たるシャルベイニールよ。今ここに現れし萌芽に、どうか慈しみと祝福を与えたまえ。)
僕は祈りの句を聞き終えた後、頭の中で反復した。
シャルベイニール、僕をこの世界に連れてきた神様の名前で合ってるのかな?
お願いします!悪目立ちしなくて、かつ超有能な祝福をどうか・・・!
僕が脳内で土下座しながら、必死に神へ祈りを捧げたその時――。
足元の白い円が様々な色を帯び、礼拝堂を照らし始めた。
「おぉ!?おぉー・・・」
僕はいつの間にか、足元で煌めく魔法陣から目を離せなくなっていた。
どれほどの時間だっただろう。数十秒だったのか、それとも数分だったのか。
気づくと床に描かれた白い円は落ち着きを取り戻し、顔を上げ見渡すと先ほどまで見守っていた家族やキャスおじさんが、にこやかにこちらを見ていた。
「お疲れ様、これで洗礼の儀式は終わりだよ。祝福を確認したければ、まずはあちらの個室で一人でステータスを確認してきなさい。
それから、家族にも見せるかどうかは自分で判断するんだ。祝福の効果が良くわからなければ鑑定士も呼べるからね。」
キャスおじさんに背中を軽く押され、案内された個室へ入る。
ヤバイ、すごいドキドキしてきた。
「ステータスオープン!」
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[名前] メリル・ワーグナー
[性別] 女性
[年齢] 3歳
[HP] 62/62
[MP] 940/940
[STR] 57
[DEX] 23
[INT] 1280
[LUK] 5
[祝福]
・思考加速(隠蔽中)
・魔力貯蓄[1341/∞](隠蔽中)
・礼儀作法(隠蔽中)
・状態異常耐性(隠蔽中)
・鑑定(隠蔽中)
・検索(隠蔽中)
・創造魔法(隠蔽中)
・魔力自動回復
[習得魔法]
なし
[特殊技能]
・釣り道具限定の創造魔法の燃費の向上(隠蔽中)
・魔力の視覚化(隠蔽中)
・魔法の遠隔発動(隠蔽中)
・魔法の持続発動(隠蔽中)
・魔法の自動発動(隠蔽中)
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「すっごい増えてる!!」
いやいやいや、ナニコレ!
僕の心の声が聞こえたのか、ご丁寧に隠蔽までつけてくれてるけども!
まずは魔力自動回復か。実際のところ、どれくらいの効果量なんだろう。
(鑑定!)
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・魔力自動回復
常時発動。魔力が1時間で15%回復する。睡眠時は回復量が1時間につき30%になる。
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うわぁ~めちゃめちゃ便利ぃ。
これ絶対僕の魔力貯蓄にシナジー高そうな祝福だ~、ありがたや。
今のMPが940だから、1時間で141回復?寝ている間なら242?
正直今の訓練方法でMP伸ばすのも限界感じてきてたから渡りに船だ。
初めて自分のステータスを鑑定した時に説明文に書かれていた通り、INTを上げることで増えていたMPも
最近はかなり効率が悪くなってきていた。要するにここ最近はステータスの伸びが鈍くなっていた。
そこにこの祝福の登場だ。神様・・・いや、シャルベイニール様、ありがとうございます!!
そして僕は、ふと、ステータス画面の一番下へと視線を移した。
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・魔力の視覚化(隠蔽中)
・魔法の遠隔発動(隠蔽中)
・魔法の持続発動(隠蔽中)
・魔法の自動発動(隠蔽中)
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はぁ。神様、僕は騎士になりたいんですよ?
こんなに魔法ビルドにしちゃって、伝説の大魔法使いにでもするつもりなんですか?
そういえば、転生する直前に神様が何か言っていたな・・・。
"『それと、あなたが使用する魔法に関して、あなたの生前の職業に合わせて少しだけ細工しておきました。
詳しくは魔法が上達してからのお楽しみということで、色々試してみてください。』"
絶対あの時のやつだー!!こんなに盛っちゃって、ちょっと僕に期待し過ぎじゃないです?
にしても、この特殊技能はどう使えばいいんだろう。もっかい鑑定かけてみるか。
(鑑定!)
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・魔力の視覚化(隠蔽中)
魔法発動前の魔力や、魔法発動後の魔力の残滓を視認することができる。
・魔法の遠隔発動(隠蔽中)
魔力を触れた対象に固定し、魔法の発動起点にすることができる。
・魔法の持続発動(隠蔽中)
魔法を定義した特定条件の間、意識下になくとも持続させることが可能となる。持続させている間には魔力を追加消費する。
・魔法の自動発動(隠蔽中)
魔法を定義した特定条件を満たした時、自動で発動させることが可能となる。
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これって、僕の生前の職業に合わせたってことは・・・。
魔法を【マクロ化】できるってことかーーッ!!
やばい、夢が広がってきた!この特殊技能があればゲームみたいにオートバリアやリジェネなんかも再現できるんじゃないか!?
どんな使い方をしようかと想像を巡らせていると、不意に扉をノックする音が耳に飛び込んできた。
「そろそろいいかい?さっき大声が聞こえてきたけど、何か問題があったかな?」
「だ、だいじょうぶです!今出ます!」
僕はステータス画面を閉じて振り返り、個室の扉を勢いよく開け放った。
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礼拝堂へ戻った僕は、家族に授かった祝福の説明をした。
勿論、ステータス画面は見せずに。3歳でこのMPは流石に不味いだろう。せめてあと5年は隠し通さないと。
「魔力自動回復とはまた・・・。我が子たちの才能には、親の私ですら末恐ろしくなるよ。」
「早めに魔法の先生を雇うべきかしら?」
「・・・。」
「メリルおめでとーっ!今度一緒に光魔法の練習しましょ!」
反応は三者三様だ。お母さんもお姉ちゃんも、気が早いって。
兄は説明を聞いた後何か考え事をしているようだ。何考えてるんだ?気になる・・・。
「(マイス、お前は大した種馬だよ。誇っていいとも。)」
「やかましいわ!お前は少しは司祭らしい言動ができんのか。次は魔法適性検査だろう?ほれ、準備しろ。」
「はいはい。さーてメリル、君の魔法の才能はお父さんとお母さんどちらに似てるんだろうねぇ。」
キャスおじさんはお父さんを茶化しながら祭壇に置いていた鍵付きの箱を開けた。
中から取り出されたのは、中央に宝石を思わせる透明な結晶を埋め込み、その周囲に複雑な魔法陣が描かれた石板だった。
「メリル、この魔道具はね、一番適性の高い魔法属性が分かるんだ。手を乗せると中央の魔石の色が変わる。
得意な属性によってその色が異なるのさ。例えば、君の兄さんのキュリアスは青色だったから水属性といった風にね。」
「じゃあ、お姉ちゃんは白色になったの?」
「正解、光属性は青白く光るんだ。さて、君は何色かな?」
僕はキャスおじさんに促されるまま、恐る恐る手を乗せてみる。
すると石板の中央に埋め込まれた魔石が昼光色に輝き始めた。
やっぱり僕の適性が一番高いのは光属性だったか。まぁ他属性も努力次第でいくらでも伸ばせるって話だし、継戦能力は大事だからよしとしよう。
死ななきゃ安い。生きてさえいれば勝ちだ。僕の周りにはお手本が二人もいるんだから、まずは光属性を極めてみますか!
「おめでとうメリル!君もお母さんやお姉さんと同じ光属性だよ!しかし、本来は珍しい適性のはずなんだけどな、やはり母親の方が優秀だからかね。」
「当てつけはやめたまえ。それに私の属性を継いだキュリアスだって優秀だとも。ワーグナー家の未来は安泰だな。」
「おとう様、おかあ様、やりました!」
ぶいっ、ぴーすぴーす。
僕は両手でピースサインを作りながら、満面の笑みを浮かべた。
「メリルやったわね!光属性魔法のことなら私に任せておきなさい!グレイシーもよ、二人とも立派な魔法使いにしてあげるんだから!」
ぐはっ。感激のあまり、すっかり僕たちの教育にやる気満々なお母さん。尊すぎる・・・。
でも残念ながら、僕がなりたいのは魔法使いじゃなくて騎士なんだ。ごめんよお母さん。
魔法はもちろん頑張るよ?でも僕は遠距離からチクチク削るより、近距離でバッサバッサ斬り倒したい派なんだ。
「さあさあ、この後も予定がいっぱいなんだろう?今日はめでたい日なんだからいつまでも教会にいても時間がもったいないよ。マイス、この後は?」
「街を少し散策した後、夕刻から屋敷でメリルのお披露目さ。キャスも時間があるなら必ず来たまえよ。」
「わかってるって。元々今日は私は休みの予定だったからね、心配しなくても行きますとも。じゃあまたあとでね、メリル。」
「おまちしてます、キャスおじさん!」




