第1話 タイトルに打つのは邪道!?――句点の打ち方
「さて、と。水無川、始めるぞ」
「了解でーす。どんとおまかせあれ」
書斎にあるパソコンの前に、椅子がふたつ。
一つはもともとあった書斎用のリクライニングチェアで、もう一つはダイニングから持ってきた食卓イスだ。
とりあえず講義を受ける前に、と淹れたコーヒーが、大きなパソコンの両側で湯気をたてている。
「最初は、句点だ」
「くてん?」
「句点。句読点って聞いたことあるか?」
「ううーん……聞いたことあるような、ないような」
「そこからか……。まあいい、イチから説明しようか」
ほう、と一息つき、キーボードをかた、かたん、と二度叩いた。
「あ、これか。点と丸」
「そう。句読点というのは、文の途中で使う点(、)や、丸(。)のことだ。
点のほうが読点、丸のほうが句点だな。今日はとりあえず、丸のほうだ」
「はーい。っていっても……句点の付け方で間違う人なんているの?」
「いや、ここでつまずく人はほとんどいないな。ここで気にしておくべきなのは2つだけだ」
そう言うと、綾部さんはかたかたとその下に文章を打ち始める。
・タイトルや見出しには句点(。)は打たない
・会話文の最後には句点は打たない
「このふたつだけ覚えておけば、とりあえずは大丈夫だな」
「ふうん。タイトルに句点がつかないのは、なんとなくわかるような気がするね」
「タイトルでもそうだが、文ではないとみなされる部分には句点をつけないのが一般的とされているな。今俺が打った文のように、箇条書きで示す場合も、句点はつけない場合が多い」
「あれ、でも『○ーニング娘。』とかは付いてるよね?グループ名はいいの?」
「あれはむしろ例外だな。普段はつけないところについていることで注目させたい場合は、わざとつけることもある。最近最終回があった朝ドラの『半分、○い。』も、普段タイトルではつけることのない句読点が使われているな」
「なるほど、わざとならつけてもいいと」
ふむふむ、と僕はうなずき、新しく勉強のためにおろしたノートに、要点を書き込んでいく。
■タイトルや見出しなど、「文とみなさない場所」には句点(。)は打たないのがふつう
■インパクトをもたせたい場合など、意図がある場合はわざと句読点を使ってもよい
「あれ、じゃあ会話のときはなんで句点をつけないようになってるの?」
「ああ……この場合はちょっと事情がややこしいから、また会話文の作法を話すときに説明することにする。まあ、ついていても誤りではないんだが、今はあまり見かけない、という感じで覚えといてくれ」
「なんだかややこしいなあ……」
僕がむくれていると、綾部さんはまあまあ、と僕の頭をなでてたしなめる。
「正直、こういう表記ルールは別に無視して書いても伝わるっちゃ伝わるんだよなあ。ただ、『今はふつうこうなっています』という基本ルールを知ってあえて無視するのと、知らないまま適当に書いちまうのだと、読者に与える印象は全然違ってくるんだ。自分の表現にクセをもたせたい場合でなきゃ、一旦は表記ルールに従って書いておくのが無難だな」
「覚えておきまーす、綾部センセイ」
一通り喋り終えた綾部さんはよし、と膝を手で叩くと、残り少なくなったコーヒーのマグカップを持って立ち上がった。
「ま、今日は最初だし、こんくらいにしとくか。晩飯でも食いに行こうぜ」
「さんせーい!僕ラーメンがいいなー、綾部さんのおごりで」
「昨日おごってやったばっかだろ!今日はちゃんと払えよ……」
ちぇ、と露骨に残念そうな顔をしたあと、僕は綾部さんと並んで立ち上がる。
今日は豚骨ラーメンの気分かな、とひとりごとを言いながら、僕は財布とパーカーを取りに寝室へ向かった。
まず最初は説明しやすいところから、と思って句読点から始めてみました。読点(、)は次回でやります。
句点に関してはタイトル・見出しと会話文につけない、と思っていれば、とりあえず同人小説の観点では大丈夫です(あんまり小説に箇条書きとかは使わないと思うのですが、いちおう……と思って紹介してみることにしました)
わりとそれぞれ勝手に打つことが多い句読点ですが、人によって「そこに打つのかー!」ってなって割と楽しく読むことがあります。職業病かもしれませんが……。
次の読点でも詳しく説明しますが、句読点は言葉の扱い方と並んで、「書き手の呼吸のしかた」が色濃くあらわれる部分です。
インタビュー記事など、ニュース原稿や記事などの文章は、そこでいかに引っかかりをなくして伝えるべきものごとに読者を集中させるかが腕の見せどころなのです。
ですが小説ではそれだけではなく、「いかに個人の色や、登場人物の特徴を文章に憑依させるか」という観点で、ちょっと違う調整が求められることが多いと思っています。
そんなに大層なことは語れませんが、できる限り参考になるサイトや、確からしい情報をあつめていきながら、解説をしていければと思っています。
よろしくお願いいたします!
※参考文献
「句点の打ち方 基本編 【文章技術:句読点の打ち方】 ー エディテック:オルタナティブブログ」
http://blogs.itmedia.co.jp/editech/2012/03/post-397f.html




