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手乗りネコ耳少女観察日記 2015年7月18日「一人きりの外の世界」

今回はスズナ視点のお話です。

この世界に対して、あまりにも小さな存在である彼女は、はたして無事に帰ることができるのでしょうか…………って、本編読んでる人はもう結果知ってますよね。

過去編って、後の時系列に矛盾をきたさないように、難しいです。

2015年7月18日

 今日は午後から海を見に行った。

 あのこと一緒に、あいつに連れて行ってもらった。

 ずっと三人で海を眺めていた。

 日が落ちるにはまだ少し早いという頃。

 空を雲が覆い始め、気がつけば雨が降り出していた。

「これ、結構まずいんじゃないの!?」

 自転車のかごに入れられたカバンの中で、あいつにたいして言うが、雨音と、少しづつ近づいてくる雷鳴にかき消された。

 少しでも早く帰ろうと、あいつが自転車のスピードを上げたが、それにより自転車の揺れがひどくなる。

「え、なに!?」

 あいつがなにか叫んでいるようだが、やはり聞き取れない。

「ちょっと! 振動がひどい…………きゃっ!?」

 自転車が何か小石のようなものを踏んだのか、それともちょっとした段差でもあったのか、それは分からない。ただ、私は宙に浮き、そのままカバンから、自転車のかごから放り出されてしまった。まだ見ぬ世界へと。

 あいつに向かって叫ぶが、声は届かない。

 そのまま、二人の姿は見えなくなった。

 雨脚はさらに強くなる一方だったが、自力で帰る方法は無かった。身体が小さいということは、つまり体温を奪われるのが早いということでもある。よって、いつまでも雨に打たれ続けるわけにはいかない。行き先を考えている暇は無かった。




 とりあえず、周囲を見渡して見つけた小さな横穴に潜り込んだのだが、これが失敗だった。

 どうやらなにかの排水溝だったらしく、気がついた時にはすでに大量の水にのまれてしまっていた。

 もともと泳ぐのはあまり得意ではない上に、今着ているのは水着ではなく、普通の服だ。大量の水を吸い、普通に動くことも困難なほどだった。そんな中で水の流れに逆らうのは、早々に諦めた。

 流されている時間はそんなに長くなかったはずだが、生命の危機を身近に感じたのは初めてのことで、かなりの恐怖を感じた。途中、溝に葉と土が詰まった個所があり、運よく水の流れから脱出することができた。

 もはや現在位置など分かるはずもなく、ただ雨をしのげる場所を探した。

 次に見つけたのは路地裏にあった、エアコンの室外機の下の隙間だった。

 ここでしばらく身体を休めることができたが、それも長くは続かなかった。

「!?」

 気がついたとき、目の前には大きな脅威が迫っていた。

「にゃー」

 びしょ濡れで体温が奪われているはずなのだが、冷や汗が止まらない。

「わ、悪かったわよ。ごめんなさい。すぐに消えるわ」

 私と同じ全身が黒い体毛でおおわれた、私の主観で見るならば間違いなく巨大と表現できる猫。ここは、その猫の縄張りだったらしい。

「シャー!」

 分かりやすい威嚇だった。このままでは襲われること間違いないので、すぐさまその場を離れる。だが、それで猫の気は済まなかったらしい。

「え、ちょ!?」

 食らったらただでは済まなさそうなネコパンチが次々と飛んでくる。なんとか紙一重で避けつつ、逃走を図る。雨が強いからか、相手の猫は深追いしなかった。

 再び豪雨の中に放り出されたわけだが、やはり行くあては無い。

 次第に強くなっていく風に飛ばされないよう、塀や電柱に隠れながら移動する。

 民家の軒下に潜り込むことも考えたが、万が一でも人目につくことを考えると、人の住んでいる場所からはできるだけ離れたかった。

 しかし、長い時間雨風に当たっているために体温は低下し、初夏にもかかわらず身体が震え始めていた。




 そんな中、目の前に巨大な建造物が現れた。

 どの部屋にも明かりはなく、人の気配も感じない。

 敷地内に入ると、渡り廊下のような場所を見つけた。

 とりあえず、雨がやむまでは、ここにいることにした。









次回、ユノちゃん再登場。

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