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片想い  作者:
両想い
30/30

2.もう、逃げないから

「大好きよ、日向」


やっと叶った恋。

ずっと夢見てきたあなたの隣に、今私はいるんだ。

この幸せを噛みしめながら、壊してしまわぬように、失ってしまわぬように、大事にしよう。

私の全身全霊をかけて、この子を大切にしようと、思っている。思っているのに…


「あっ…」


重なった唇が、日向によって半ば強引に離される。ひゅうと冷たい空気が、二人の間にできたすき間に流れ込む。

キスをして気持ちが高ぶって、あと少しで幸せが最高潮になるというところで、日向はいつも引いてしまう。なぜなの?

もっと日向に触れていたかったのに、このドキドキを、しびれるような甘い幸せを、感じているのは私だけではないんでしょう?

どうしてそんな名残惜しそうな顔をするくせに、やめてしまうの?


「そろそろお母さんが帰ってきちゃうよ」


痛々しい笑顔で、日向はそう言と、さっさと自分の部屋へ向かう。


「日向…」


その背中に、かけたい言葉はたくさんある。

ねえ、なんでそんなに悲しそうなの?

一緒にいても、寂しそうな顔するのはなんでなの?

私は日向といれてこんなに幸せなのに、あなたはどうして満たされないの?なにがそんなに不安なの?

なにか悩みがあるんでしょう?私に言えないことなの?

頼りないかもしれないけど、相談してさえくれれば、私はいくらでも力になるのに。

相談してくれなくちゃ、私はなんにも出来ないのに…


バタン。


結局、なにも声をかけられないまま、日向は部屋に閉じこもってしまった。


「はぁ…」


思わずため息をもらす。

なにをやっているんだ私は。妹が、恋人が苦しんでいるというのに、相談にのることすらできない。

自分の無力さが歯がゆくて、悔しくてならない。


「こんなんじゃ、恋人失格だよね…」


日向の部屋の方をぼんやりと見つめて考える。


君の苦しみは、どうやったらなくなるのかな?

強くなくていい。完璧じゃなくていいんだよ。だから、少しでもいいから、君の弱いところを私に見せて。

一緒に悩んで、乗り越えさせてはくれないのかな?


「ごめんね」


気づけば、私の頬を涙が伝っていた。


ごめんね。頼りないお姉ちゃんで。

ごめんね。君の辛さをわかってあげられなくて。一緒に苦しんであげられなくてごめん。

ごめんね。幸せにしてあげられなくて。私ばっかり幸せで。


「こんなはずじゃ、なかったのにな…」


好きで好きで、一緒にいられるだけで幸せだと思ってた。付き合うことができて、ほんとに嬉しくて、私だけが舞い上がって。


私、だけが…。


あれ?おかしいな、考えてみればほんとに私だけだった気がする。

握った日向の手は冷たく冷えていた気がする。熱くなっていたのは私だけだった気が…

キスをねだるのも私だけだった。日向は私がお願いするから仕方なくキスしてくれていたのかも…

抱きしめたときに聞こえたドクドクと速い鼓動は、日向のものではなくて、私がどきどきしていたからかもしれない…


全部ぜんぶ、私の勘違いだったのかな?

日向も私といれて幸せなんだって、私達の気持ちは同じなんだって、思ってたけど…

ぜんぶ私の思い込みだったのかな?





怖い…。


もしそうだったらどうしよう。

もし日向に捨てられたら…きっと耐えられないだろう。

日向は私の一部どころか、すべてであるというのに。

怖い。怖い怖い怖い怖い怖い…

そうなる前に、いっそ私から終わらせてしまおうか…

捨てられるよりは、傷は浅いだろう。


「…だめだ。それだけは」


自分が傷つくのを恐れて、日向から目を背けてどうする。私は前にも、振られるのが怖くて自分の気持ちを押し込めて、結局日向を一人にして傷つけたじゃないか。また同じことを繰り返すつもりか。

私はどうなってもいい。たとえ傷つくことになっても、最後まで日向の側にいよう。

それが、姉であり、恋人の私にできるたったひとつのことなのだから。


「今度こそ、私は逃げないよ日向。」


テスト期間中だというのに…妄想が止まりません(泣)

これから真面目に勉強するので返信は遅くなると思います。

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