最強勇者御一行、再び魔王城を目指す。
こちらだけでもお楽しみいただけますが「史上最強勇者御一行様 (パートのおばちゃん)」をお読みくださるとさらにお楽しみいただけると思います。
お時間ありましたらどうぞ遊びに来て下さい。
史上最強勇者御一行様 (パートのおばちゃん)
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「先日はありがとうございました」
就業のチャイムが鳴り、奥の部屋から出てきたパートの方々にお礼を言う。
「何したっけ?」高田が問う。
「お礼されるようなことしたの?」白井が問う。
「わかんない。忘れた」忘れん坊の高田。
「たぶん、堺さんの件かと」三木が言えば「あー…三木さんが堺さんを徹夜させたやつ?」白井がつっこむ。
「あと白井さんのせい」「なんで私まで?!…ま、そうかも」吉田につっこまれてへらへら笑う白井。
「本当に助かりました」
あの日。堺桃子に押し付けられた仕事を断った事で、逆上した堺に階段から突き落とされそうになった。
咄嗟に高田さんが間に入ってくれたおかげで、私ではなく高田さんが突き飛ばされるかたちになった。…実際弾き飛ばされたのは堺桃子だったけど。
「あれね〜気にしないでいいのよ〜」「堺桃子は気にしたほうがいいけど」「うんうん」「あ、噂の堺さんが来ましたよ」
「お疲れ様です」「お疲れ様です」
「…パートって楽でいいですよね、責任なくて」この前のことを根に持っているのだろう。とっても低いところからマウントしてくる堺桃子。
「うん楽」「楽だわー」「堺さんより仕事して、責任ない分給料安いのよ〜。気楽でしょ〜」
言い返すのも面倒なので受け流した。のに!
「それより堺さん、この前の仕事間に合ってよかったですね!徹夜した甲斐がありましたね!体調大丈夫ですか?」三木が話をほじくり返して、堺を優しくねぎらう。
「!うるさいわね!おばさんと違って私は若いから徹夜くらいなんともないわよ!」
「わー凄い」「おばちゃんはもう眠くてダメだわー」「心配しなくともすぐ仲間入りよ」
「あ、エレベーター来ましたよ?」
ゾロゾロとエレベーターに乗り込むおばちゃんたち。
「私はまだ残業ありますので。お疲れ様でした」聖がぺこりと頭を下げる。
「堺さんは乗らないの?」問う白井。
「あんたたちと一緒に乗るわけないでしょ!」荒ぶる堺。
「そうですよね、堺さんのせいで他の皆さん残業してるのに、堺さんだけ帰れないですよね。頑張ってくださいね」心から応援していると、三木がにっこり。
途端、ふるふると震えながら顔を赤くする堺。
「あー…悪気はないのよ許してあけて」三木の一言に白井はほくそ笑みながら言う。
「うん。これでも悪気はない」吉田。
「ごめんね、ほんとに悪気はないんだよ」上辺だけで謝る高田。
「え?え?私ですか?」無自覚すぎる三木。
そんなおばちゃんたちの存在をシャットダウンするようにエレベーターの扉が閉じた。
しかしその瞬間、眩い光に包まれるおばちゃんたち。
「…またぁ?」ウンザリしたような吉田の声が響いた。
「うーん…」「あいたたた…」「大丈夫ですか?」「チッ」
キョロキョロと周りを見回し、状況を理解しようとするおばちゃんたち。
そこで驚くべき事実を知る。
「うわっ!白井さんも、吉田さんも三木さんも凄く若くなってるよ!!」
それぞれ見た目が18才くらいになっていた。
「そう言う高田さんが一番大変」
「高田さん、髪の毛がピンク色になっていますよ?」
高田ももちろん見た目が若くなっていたのだが、なぜか髪色が鮮やかなピンクに染まっていた。
「えっ?!わっほんとだ!…でもちちは腫れてない!」
さわさわと自分の胸をなでる高田。
「一度でも腫れた事あるの?」「ない」「なさそう」「失礼なっ!」
「ちち腫れる需要ある?」「たぶんない」「でももしかしたらイケメンと…」「ここイケメンいなかった」「そうだ…じゃあちち腫れなくて良かった」
「なんで高田さんだけピンク色なんでしょうね」
「う〜ん…ま、とりあえず携帯確認してみる」「やっぱり圏外ですか?」「うん」
「あっ!………まあいいや…」横で何かを諦めたような声をあげる白井。
「何?気になる」「…今日ママゾン来る日だった」「何買ったの?」「イケメンお尻シール」「何それ」「イケメンのお尻がぷくぷくしたシール」「趣味悪」「イケメンなら何でもいいんか」「当たり前だろう」「この前買ったフライパンの使い心地どうでした?」「まだ箱から出してない」「え?」
わいわいとママゾンでの買い物について盛り上がっていると…
「あ、みなさん、誰か来ましたよ」
どうやって隠れていたのか…柱の影からドレスやらなんやら、異世界の舞踏会っぽいかしこまった服を着た人たちがわらわらと現れた。
「パーリーピーポー…」吉田が呟く。
その中の一人、一番にぎやかな服の人…の隣に立つ人が一歩前にでてにこりと薄ら笑った。
「ようこそストロカイン王国においでくださいました!」
その場にいる人々が恭しく頭を下げておばちゃんたちを迎える。
「ストロカイン王国…?」「知ってる人いる?」「お薬だよ」「何の?」「お腹痛い時の」「お腹痛いの?」「うん」「いつ?」「時々」「便秘?」「違う。よく効くよ」「よく聴くって言えば、○山スーパーのあの曲、一度聴いたら忘れられないんだけど」「あー、思い出しちゃったじゃん!」「♪いつだってあなたの、あ、な、たのおそばに○山スゥウウパ〜…ずっとリフレイン…」「やめろ!」
すぐに話が脱線し、そこから盛り上がってなかなか本題が進まない。
「あの…その、突然このような事になりまして混乱されていると思います。此度の件、ストロカイン王国宰相の私アパタイトが説明させて致します…」
宰相は頭を下げ、少し遠くを見つめるように目を細めた。
「まず、この国、ストロカイン王国の成り立ちから。この国は「へえっ!そうなんだ。わかった。で?用件は?」
話を聞かずに遮った高田が言えば、皆大きく頷いた。
「えっ?は、はいっ…えっと、わが国は今、魔族との戦いの最中でございます。同盟国であったリンデロン国は勇者一行を召喚したと聞いていたのですが、召喚は失敗したようで、リンデロン国は魔王軍に襲われて一晩で陥落してしまいました。今までになく魔王軍が強くなっていたのです。
リンデロン国の二の舞にならぬよう、我が国独自の勇者召喚をいたしました。そこで選ばれたのがあなた方なのです。どうか我が国を助けるためにお力添えください」
ずらりと並んだ王族や貴族たちが一斉に深く頭を下げた。
おばちゃんたちは円陣を組みコソコソ話す
「この前のあれ、勇者召喚失敗とか言われてるんだ」「ひどくない?」「勝手に呼び出しといて」「魔王様リンデロン殺っちゃたんだね」「すげー」「あの人はやると思ってた」「人じゃなくない?」「人でなし?」「魔族ですからね」「独自の勇者召喚ってなんだろう」「若くするんじゃない?」「出来上がりは頭ピンクのツルペタだけど」
コソコソがワイワイに変わる頃、アパタイトが声をかけた。
「あの…どなたが勇者様でしょうか?」
「あ、今回私は賢者になりたいから、三木さん勇者ね」「え?私が勇者ですか?…。いいですよ、高田さんが賢者ですね」「うん。よろしく」
「じゃあ前回同様私は聖女〜」前回同様白井が聖女。
「変態聖女ね。私はポジションだけ魔法使い」同じく吉田が魔法使い。
「じゃあ、賢者さん。この後どうしますか?」
「よし!今から魔王城を目指すぞ!」
結局は三木に上手く操られる高田であった。
「では、無事にお戻りになられた際には、この国で豊かに暮らせる保証をいたします。どうぞ宜しくお願いします」
「前払いじゃないんだ?」
「申し訳ございません。魔王軍との戦いで国庫も困窮しておりまして…」
「そんなふうに見えないけどね」「みんなクッソ派手」「イケメンゼロだし」「まあまあ…。さあ、魔王城に行きましょう。魔王様にまた会えますよ」
「わーい!」「魔王がイケメン」「きっと今度はお茶くらい出してくれますよ」
「決まったらさっさと行くよ」
そう言うとおばちゃんたちは最低限の情報を聞いてから、魔王城を目指した。
おばちゃんたちが去ったあと、残された貴族や王族たちは好き好きに文句を言う。
「若けりゃいいってもんじゃねーよ」
「ほんとほんと、一人くらいマシかと思ったけど全滅」
「全滅とかひでぇ!でも確かに全滅!」
あはは!!
まさかこの後自分たちが全滅するとは知る由もなかった。
。。。
「魔王城ってどっちだっけ?」「えっと、あっちです」「どうして三木さんわかるの?」「前回来た時、マッピングしておきましたから」「うわ、さすが賢者……元」
高田さんのほっぺがぷくーっと膨れているのに気づいて慌てて「元」をつける白井。
うっそうと樹々が生い茂る道を進む中、高田は先頭を歩きながら拾った棒をブンブンと振り回していた。
「この棒さ、凄く便利だよ。ほら、ブンブンすると草が倒れる」勇者のチカラである。
「本当にすごい棒ですね」
「ただの棒なのに」
「アイテム。ただの棒」
「ね、ブンブンしながら進めば…」
固まる高田の手に小さな芋虫が乗っていた。
!!!!!!!
「ギガゃああああッッッッ!!!!!」
虫嫌いな高田が思いっきり「ただの棒」を振り下ろす。
ヴォン!!
大きく空を切る音がした。
しかしそのひと振りで一瞬にして樹々は消滅し、砂煙が舞ったのち、あたりは地平線が見えるだけの景色が広がっていた。
「ひー!怖かった!」「大丈夫でしたか?」「すげー!ただの棒!」「ただの棒じゃないただの棒!」「良かったですね、これで虫いなくなりましたよ」「虫どころか草木一本さえ無くなったけどね」
「びっくりした。魔王城遠い?」「てかマッピングしてるなら魔法で瞬間移動できるよね?」「よし!出番だ吉田さん!」
「うっしゃあ!」
一瞬で魔王城に着く一行。
「すみませーん!魔王さんいますかーー?!また交渉に参りましたー!!」
賢者高田がドアを叩く。
「勇者御一行様っ!!おおおおっお待ちくださいませ!!!!」
門番のゴブリンが慌てて魔王に取り次ぐ。
前回と違い、今回は案内役として出てきたリザードマンが片膝をつき頭を下げた。
「ようこそおいでくださいました」
引き締まった体に、ビシッとタキシードを着こなすリザードマン。
魔族のナンバー2である。
「あっ!あっ!ジェイソン!」「高田さんこの人知ってるの?」「違う。この人ジェイソンだよ!」「金曜日?」「違うって!ジェイソン…ジェイソン…」「ステイサムじゃないですか?」「そそそ!ジェイソンステイサム!」「ジェイソンステイサムはジェイソンステイサムでひとつの名前だから。ジェイソンステイサムまで言わないと金曜日になっちゃうから」「ステイサムが出て来なかったんだもん。ふわ〜筋肉かっこいいね!」「つか魔王軍の方がイケメン率高くない?」「筋肉〜♡」
勇者御一行を前に、自分の名前が本当にジェイソンだとは言えないリザードマンであった。
「ねえジェイソン、名前聞いてもいい?」
「名乗るほどではございません」
「じゃあジェイソンでいいよね」
「…どうぞ」
そんなやり取りをしながら、魔王のところまで進む。
「こちらで魔王様がお待ちです」
重々しい扉がゆっくりと開いたその先に座る魔王…
「わーい!魔王様〜!会いたかっ」
高田が両手を広げて走り出した瞬間、勇者一行が消えた。
煩わしいと思った魔王が一瞬で皆を元の世界に帰したのだ。
途端。水を打ったように静まり返る魔王城。残ったのは湿布の匂いだけ。
見た目だけ若くても、湿布の匂いは正直に年齢を教えてくれていた。
「…すまない。やはり恐怖に打ち勝つことは出来なかった…」
「いいえ。今回は皆が若くなっていたこともあり、傍若無人感が前回以上でした」
小刻みに震える手を見つめ、恐怖を消すようににグッと拳を握るジェイソン。
見れば魔王の手もまた固く握られていた。
その後、あんな怖い奴らを送ってきやがったストロカイン王国に目にもの見せてやる!!と、一致団結する魔族たち。
「「「おーーー!!!」」」
。。。
「先日はありがとうございました」
就業のチャイムが鳴り、奥の部屋から出てきたパートの方々にお礼を言う。
「何したっけ?」高田が問う。
「お礼されるようなことしたの?」白井が問う。
「わかんない。忘れた」忘れん坊の高田。
「たぶん、堺さんの件かと」三木が言えば「あー…三木さんが堺さんを徹夜させたやつ?」白井がつっこむ。
「あと白井さんのせい」「なんで私まで?!…ま、そうかも」吉田につっこまれてへらへら笑う白井。
「本当に助かりました」
あの日。堺桃子に押し付けられた仕事を断った事で、逆上した堺に階段から突き落とされそうになった。
咄嗟に高田さんが間に入ってくれたおかげで、私ではなく高田さんが突き飛ばされるかたちになった。…実際弾き飛ばされたのは堺桃子だったけど。
「あれね〜気にしないでいいのよ〜」「堺桃子は気にしたほうがいいけど」「うんうん」「あ、噂の堺さんが来ましたよ」
「お疲れ様です」「お疲れ様です」
「…パートって楽でいいですよね、責任なくて」この前のことを根に持っているのだろう。とっても低いところからマウントしてくる堺桃子。
「うん楽」「楽だわー」「堺さんより仕事して、責任ない分給料安いのよ〜。気楽でしょ〜」
言い返すのも面倒なので受け流した。のに!
「それより堺さん、この前の仕事間に合ってよかったですね!徹夜した甲斐がありましたね!体調大丈夫ですか?」三木が話をほじくり返して、堺を優しくねぎらう。
「!うるさいわね!おばさんと違って私は若いから徹夜くらいなんともないわよ!」
「わー凄い」「おばちゃんはもう眠くてダメだわー」「心配しなくともすぐ仲間入りよ」
「あ、エレベーター来ましたよ?」
三木が言うが高田が少し考えて…
「…私は階段で行く」
「そうですか?じゃあ私もお供します」
「私はエレベーターで降りる」
「私も〜ママゾン来ちゃうし」
「うん。お疲れ様でした」
「お疲れ様〜」「お疲れ様です」
「あーあ、パートは気楽でいいなぁ!」
堺のその一言で高田はくるりと向きなおり「堺さんもお疲れ様。堺さんは自業自得だけど、他のみんなに迷惑かけてんの忘れないでね」そう言って堺をギリリと睨め付けた。
サッと顔色を変える堺。
「あ、はい。すみません。お疲れ様でした…」
一瞬、何故かとてつもない恐怖に襲われた気がした。
今後調子に乗るのはやめようと思う堺であった。
高田と三木が階段を降りて一階に着いた時。先に降りたはずの白井と吉田が待っていた。
「遅〜い。ママゾン来ちゃうよ」白井が言う。
「白井さんが待ってるって言うから」吉田。
「ありがとう〜!今度白井さんの仕事5分だけ三木さんが変わるから許してね」
「私ですか?」
「許す!!」
「5分じゃ変わんねーよ!」
わちゃわちゃしながら家路を急ぐおばちゃんたち。
「ねえ白井さん。イケメンお尻シール、今度見せてね」
「OK!」
なんだかんだで仲良しである。




