ファーストキス
春臣は自室に戻ると、
「兄ちゃん強い! 見た? あんな戦闘初めて見た! やばい! あれは勝てない!」
負けたのにめっちゃ嬉しそう。
MIOが復活したのも久しぶりだし、本気の龍臣さんとやり合ったのも初めてだったみたいだし、とにかく興奮冷めやらぬといった感じで大はしゃぎ。
ウケる。
なんかかわいい。
チュッ
「え?」
「あ……」
「なにしてんの?」
「あ、いや、春臣がかわいく見えて、つい……」
「つい、キスしたの?」
「……はい」
これはまずい…
勢いでキスしてしまった……
春臣のファーストキスを奪ってしまった……
やばい……
俺のファーストキスを捧げたよ♡
これで相殺されるかな?
いやいやいやいや。
価値がレベチだろうがっ!!
ダメだ。
謝ろう。
「ごめん、春臣のファーストキス奪っちゃった……」
キスしたら全てに於いて抹殺する。
そう言ってたっけ……
戦バニではJINさんにボコボコにされ、
リアルでは春臣に抹殺される……
もう俺が住める世界は存在しない……
ふっ
ふっふ
ふはは!
ん? なんで春臣笑ってんだ?
「海凪、なんか誤解してない?」
は?
「俺がキスしたことないって思い込んでない?」
は?
「ウケるwww」
は? は? は?
「騙したのかよ!」
「騙してないよ」
「だってしたことないって言ってたじゃん!」
「『されたことはない』よ」
「は?」
「気分じゃない時にされそうになるの嫌だから」
なんですと?
「俺はファーストキスじゃないんでお気になさらず」
こいつ……
この……くそ野郎!
こういうところ!
こういうところが腹立つ!
ああーーっ! 腹立つ!!
フーフー怒りで興奮する俺に、
「ということで、こっちからもいかせてもらいます」
春臣に頭を抱えられキスされた。
ぎこちなさなんて微塵もない、スマートな慣れたキス。
ふっと唇を離す。
え……… なんかふわふわして気持ちいいんですけど。
「なに? もっとしたいの?」
俺、そんな顔してる? してるのか?
「したいんだね」
そう言うとまた唇を重ねる。
やばい……キスってこんなに気持ちいいの?
唇重なってるだけなのにこんなに気持ちいいとは何事だ。
キスされて思わず目を閉じちゃったけど、うっすら目を開けてみる。
超至近距離に綺麗な顔がある!
これは視覚的にもやばい……
唇に春臣の舌先が触れる。
エロい! それはエロい!
待て! ディープは待て!
今更だけど、俺、男だぞ! 童貞だぞ!
キス素人にディープは難易度高過ぎる!
無理矢理、春臣の体を離す。
「もういいの?」
その余裕がムカつく。
「春臣に質問!」
頭を整理したい。
「なに?」
「ちゃんと付き合ってると自覚してた彼女はいたことある?」
「うん、いたよ」
いたんだ、へえ。
え? いたの!?
「彼女いたの?」
「うん」
「マジ?」
「え? なんかおかしい?」
「だって……好きじゃないんだろ?」
「大半がしつこくてベタベタする子ばかりなんだけど、そうじゃない人も何人かいたよ」
「へえ……」
「だいたい年上の人、大学生とか社会人とか」
「マジ!?」
「うん、そういう人たちは俺の好きにしていいよって言ってくれるし、しつこくない」
「へ、へえ……」
「その人たちとはデートとかしてたの?」
「そうだね」
わかったよ、俺。
わかってたけど更に確信した。
春臣のいうデートしたことないは、興味のない奴とのデートはしたことないってことなんだな。
キスも然り。
なんだろう、このデジャヴ感。
ああ、そうだ、家に人を上げたくないは知らない人もしくはそれに匹敵する人は上げたくないと言っていたそれだ。
盛大な言葉足らず。
くそがっ!!
もうデリカシーなど知らない、聞いてやる。
「春臣」
「なに?」
「春臣は童貞?」
「違うよ」
ほらね! やっぱりね!
そうだと思ったよ、そんなわけないわな!
そうだよ……
勝手に仲間だと思い込んでたのは俺だよ……
そんなの考えなくてもわかるだろ……
この腹立つほどのイケメンがデートもキスもしたことなくて童貞なわけがないんだよ。
腹立つ。
「ムカつく」
「え?」
「キスに慣れてるのがムカつく」
「ふっ」
「あ? なに笑ってんだ」
「ふっふっ」
「笑うな」
「海凪のファーストキス貰っちゃった」
「責任取れ」
「え?」
「うっかり気持ちよかったから責任取れ」
「あははははは!」
「くそ!」
春臣が俺に向き合う。
「でもさ、今のは勢いというか、海凪が仕掛けたからこうなっちゃっただけでしょ?」
「……そうとも言う」
「ふっw」
「なんだよ、まだ笑うのかよ」
「ううん、ただ、責任取れってどういうこと?」
そのにやついた顔はなんだよ!
「わかるだろ」
「わかんない」
にやにや。
腹立つな!
「キスして気持ちよくさせた責任とって俺と付き合え」
「あははははは!」
「笑うなっ!」
「笑ってないよw」
「笑ってんだろ!」
「海凪、めちゃくちゃなこと言ってるのわかってる?w」
「わかってる!」
「自分からキスしたくせに責任取れってw」
「俺だってわけわからないんだよ!」
「あはははは!」
「返事は?」
「やだ」
「は?」
俺、実はめちゃくちゃ心臓バクバク言ってるんですけど!
男にキスして告白してる自分にめちゃくちゃ驚いてるんですけど!
腹立つけどそんな春臣のことめちゃくちゃかわいいと思っちゃってるんですけど!
頼むから断らないで……
「全サしないで」
「え?」
「俺だけに優しくして」
「ふっ」
「俺、拗ねるよ」
「ふはっ!」
「なんで笑う?」
「春臣お前、甘やかされるの大好きだろ?」
「そうかも」
「俺が甘やかしてやる」
「海凪が甘やかしてくれるの?w」
「素直に甘えてろ」
「……うん」
「じゃあ、もう一回気持ちいいキスして」
「なんなの?w」
「早く! ほら!」
「バカなの?w」
「うるせえ!」
ぎこちなく俺から唇を合わせたら、春臣はもっとふわふわなキスで気持ちよくしてくれた。
その気持ちよさについチンコが反応しかけたんだけど、ノックする音が聞こえ、
「春~、海凪~、新しいJINの服なんだけどさ~甲冑ってどう思う? 意見聞かせてよー」
と龍臣さんが部屋に来たため、チンコは萎え、気持ちいいのは強制終了となった。
ちなみにJINさんは賞金が貯まっていたから高い甲冑を買おうとしたらしいが、
「MIOと合わない」
と春臣が却下したのでボツ。




