第16話 中学3年生 ~それぞれの進路~
三年生の秋も半ばを過ぎ、テストの数が一気に増えた。
由奈は、もともと勉強を頑張るタイプだ。
このあたりの公立高校の中で、一番評価の高いK高校の科学コースを狙っている。
桂花は、その隣の敷地にある実業高校を志望していた。
由奈とは学校が違ってしまうが、距離は近い。
「帰り道にでも、会えるといいね」
二人はそんな話をしていた。
晴基も、春から変わらずK高校の普通コースを目指すと言っている。
教室で机に向かう姿を見ていると、以前よりも集中力が増しているように感じられた。
由奈は三年生になってから、特に苦手科目の克服に力を入れた。
その成果もあって、総合点はこれまでより安定し、学年順位もかなり上位につけている。
そして、テストが終わると、決まって由奈のもとにやって来るのが莉乃だった。
「ねえ、由奈。今回どうだった?」
莉乃は、相変わらず軽い調子で聞いてくる。
学年順位は本人にしか知らされない。
由奈は、自分より上にいる人数がほんのわずかだと分かっているだけに、答えづらかった。
曖昧に濁そうとしても、莉乃は引かない。
結局、由奈は小さな声で順位を伝える。
「……え、すごいね!」
莉乃はそう言って、にこっと笑った。
その声が、前よりほんの少しだけ高かった。
それ以上は何も言わず、莉乃は去っていく。
自分の点数や順位については、決して触れない。
(科学コース狙いじゃないって言ってたのに……。なんで私の点数が気になるんだろ)
由奈は、内心で首をかしげる。
それでも、莉乃が由奈を意識していることは、もう分かっていた。
――それが、莉乃という子なのだ。
一方で、健斗はと言えば、相変わらず勉強に身が入らないままだった。
周囲が受験に向けて本気になっていく中でも、焦りはなかった。
いや、正確には――焦らないようにしているわけでもない。
ただ、健斗には、
「いい高校」や「いい大学」に進むこと自体に、どうしても魅力を感じられなかった。
(点数で評価される場所に、これ以上、時間も気力も使いたくない)
頑張って結果を出す人間を、すごいとは思う。
けれど、自分がそこに並びたいかと聞かれれば、答えは違った。
健斗は、あまり勉強しなくても通える高校を選び、
その先で、手に職をつけられる道を探そうと考えている。
美容でも、調理でも、まだ具体的には決まっていない。
けれど、何も考えずに流されているわけではなかった。
(高校に行って、その間に、自分がやりたいことを見つければいい)
近所の高校ではなく、少し離れた場所。
この中学校からは、誰も進まないかもしれない学校。
それでも構わないと思っている。
(友達は……また作ればいいしな)
本当は、直接専門学校に行くという選択肢もあった。
けれど、親も先生も、「高卒の資格だけは取っておけ」と言う。
健斗は、それに従うことにした。
やりたいことが明確でない今は、それでいいと、そう思っていた。




