コカトリスとワーム
レオン様との話し合いが終わった後に、俺たちは時間もまだ早いからとコカトリス探しにダンジョンに行く事にする。コカトリスの階層に向かうためサソリの階層を歩いているが、今のところはサソリが見当たらない。
「本当にサソリは居ないな」
「拙者、コカトリスもこうなのかと思うと探すのが嫌になりますな」
「ダンジョンに潜って魔獣を探して歩くってのも変な話だよね」
「ダンジョンの魔獣は絶対に居ると教わりましたし、違和感しかありませんな」
フレッドの言う通り、確かにそんなことを教わった気がする。魔獣を探して歩くなんて、最初のウサギ以来ではないだろうか。ウサギは魔獣ではなく動物だったけども、魔獣を探して歩く事になるとは思いもしなかった。
「話をしていたら、戦わないでサソリの階層が終わったよ」
「流石に私としても驚きですわ」
皆、ベスの感想に同意する。ドリーとリオなんて飛ぶのも魔力が勿体無いと、歩いているのだから、緊張感も何もない。フレッドが言ったようにコカトリスを探して歩き回らないことを祈りながら階段を降りていく。
「拙者の言う通りになりましたな」
「こうはなりたくなかったよ」
「拙者もですな」
コカトリスはやはり見つからなく、散歩続行だ。鉱石も欲しいが今はコカトリスを一度は倒したいと歩き回っている。結構な時間歩くと、やっとコカトリスを発見した。
「居たよ」
「居ましたな」
ライノが以前に小さいコカトリスと言っていたように、確かに大きさはそこまでではない。見た目はヘビぽさはほぼ無く、ニワトリのような見た目だ。小さいと言っても一メートル近くはある。
毒に注意しながらコカトリスを倒そうとフレッドが前に出て盾で応戦する。
「エド殿、この感じは拙者の盾だけで倒せそうですぞ」
「え? サソリより奥にいるのに?」
「毒が強い代わりに身体能力はそこまでなのかもしれませんな」
「小さいし、そんな物なのか」
魔法も使ってくる様子がないし、毒に本当に特化しているのかもしれない。
「どうしますかな?」
「アンの弓だけ試しておこうか、魔法を試したら倒してしまいそうだし」
「そうですな」
アンに弓を射ってもらうと貫通して矢がどこかに行ってしまった。
「弓が強すぎて貫通したからか、元気に動き回っていますな」
「予想外だね」
「ですな」
魔法を試すと一撃で死んでしまい試す以前の問題になってしまった。
「コカトリスは何で此処にいるんだろうか」
「本来の大きさは倍以上だったと記憶しているので、そちらは強いのかもしれませんな」
「そうなのかな? 今はコカトリスを回収して矢を探そうか」
どこかに飛んで行ってしまった矢を探しながら、ダンジョンは奥に行くほど魔獣が強くなると思っていたが、実は違うのかもしれないと考え始めた。強さよりも、どう魔獣をダンジョンに閉じ込めるのかが重要なのかもしれない。その考えを皆に伝える。
「エド、ですがコカトリスが弱い訳ではないと思いますわ。遠距離に極端に弱いようですが、盾がない状態で近づいたら毒があるので危険ですわ」
「確かにフレッドじゃなければ毒を使われていたかもしれないのか」
「強力な毒があるのですから、ダンジョンの外に出たら大変な魔獣ですわ」
確かに、コカトリスはオークほど強くはないと思ったが、毒を使うことさえできれば、オークも倒すことは可能かもしれない。どちらもダンジョンの外に出たら怖いが、毒がある分コカトリスの方が怖そうではある。
「なので、無理に近づく必要はありませんわ」
「そうだね。コカトリスは遠距離で倒すようにしよう」
コカトリスの倒し方も決まったところで、砂漠を少し見てすぐに戻ってこよう。
「方位を示す魔法具がないから入り口が見える範囲だけで砂漠を見てみよう」
「いいですわね」
コカトリスの階層を抜けて、砂漠の階層に続く階段を降りると、そこには砂漠が広がっている。
「凄いな。砂漠だ」
「もう少し何かあると思っていましたが、本当に砂漠だけですわ」
「確かに砂だけだね。階段の周りは岩になってるけど、他は砂漠だ」
砂漠は珍しい薬草や鉱石が取れると言っていた気がするが、どこで取れるのだろうか?
「にーちゃ、少し見てきていい?」
「ドリー良いけど、遠くに行くと蜃気楼で方向が分からなくなるかもしれないから、本当に近くだけだぞ」
「蜃気楼?」
ドリーに蜃気楼の説明をすると、納得して上空に上がって周囲を見渡すだけにしたようだ。リオと共にドリーは空に上がっていく。
「ベスに砂漠を越える方法を言ってなかった気がするから説明するよ」
俺はメアリー様から教わった砂漠の越えかたや砂漠での動き方をベスに説明してく。
「分かりましたわ」
「誰がアンを一緒に乗せて飛ぶかが問題なんだけど」
「私がと言いたいところですが、ドリーとリオが良いと思いますわ。ドリーとリオが一番飛ぶのが上手ですから安定していると思いますわ」
「確かにそうかも、後でドリーとリオに頼んでみよう」
ドリーとリオが空から降りてきたところで、ドリーとリオが見た景色を教えてもらうと、周囲は砂だらけのようで、目印らしい目印もないようだ。
俺はドリーとリオにアンを一緒に乗せて飛んで欲しいと伝えると、試しみると言う。
「アン、ドリーと一緒に飛んでみよ!」
「はい」
アンは緊張しながらドリーと一緒に杖に乗って空に飛び上がった。ドリーはアンが一緒でも飛ぶだけなら問題ないようだ。
「にーちゃ、魔力の消費が多くなるから、リオと途中で交代しないと魔力が無くなるかも」
「分かった。岩棚を見つけたら交代していこう。魔力が足りなくなったら一泊するか俺たちと交代しよう」
「うん」
リオも試してみたいとアンを一緒に乗せて飛んで、ドリーと一緒の感想になって魔力が少し心配とのことだった。俺たちもアンを乗せて飛ぶかもしれないと、練習してみるが、ドリーやリオのように安定して飛ぶのが難しい。
「ドリーとリオは飛ぶのが相当上手くなってるな。人を乗せて飛ぶのは難しいよ」
「飛びながら魔法を使うよりは簡単なの」
「ああ。魔法を二つ使えるから制御が上達しているのか」
俺も練習すれば制御が上達しそうだし、二つの魔法を同時に使うのと、魔法と魔法格闘術を同時に使えるように練習でもしてみようかな。魔法と魔法格闘術を同時に使うのは難しそうだが、できるようになれば使いやすそうだ。
「砂漠は暑いですな」
「ん?」
フレッドを見てみると、作って貰った温度調整が付いている服を脱いで暑さを確認していた。すでに凄い汗をかいており服を着始めた。
「これは絶対に服を脱げませんな」
「砂漠は夜は極寒だって聞いたことあるんだけど、ダンジョンの砂漠に夜はあるのかな?」
「荒野でも夜はありましたから、あるとは思いますが寒くなるかは分かりませんな。温度はダンジョンが決めている物でしょうからな」
「外と違ってダンジョンは温度が一定だし、その可能性はあるのか」
ダンジョンは少し寒めで長袖を着ると丁度いい温度になっており、温度調整の服をもらう前から、防具などを付けても暑くて汗だくになるようなことは無かった。砂漠は初めてダンジョンで暑い気候だ。
「温度もダンジョンで管理しているのか」
「そうだと言われていますが、砂漠は何らかの理由で温度を変えられないのかもしれませんな」
砂漠で試したい事と言えば後はワームがどの程度の強さかを見たい。周囲にいれば寄ってくるだろうが、迷子になるのが怖いので遠くまで行けない。
「ワームを見てみたいけど、どうしようかな。物でも投げれば出てきたりするのかな?」
「何か投げて出てこないようなら、拙者が歩いてみますかな」
「フレッド、危なくないか?」
「鉄の船で防げるのなら、拙者なら盾の上に立てば貫通はしてこないと思いますな」
フレッドの盾はかなりの分厚さのため、船より分厚そうだ。しかし危ない気もするが試してみるか?
「それに塩が弱点だと言うのなら、塩を撒きながら進んでみますな」
「塩も試せるけど、危なくないか?」
「魔法格闘術で防御を優先するつもりですし、そこまでの危険はないと思いますな。それに誰が試したところで危ないのは一緒ですな」
「分かった。まずは何か投げてみよう」
投げる物を探すと、大量に持ってきた塩があるので一個投げて、反応がないようなら塩を撒きつつ、投げた塩を回収することになった。
塩を投げると特に反応がないので、フレッドが歩き始めた。塩を撒きながらフレッドが進んでいくと、砂の中からワームが飛び出してきた!
「フレッド!」
「問題ないですな! しかし予想以上に大きい上に、数が予想以上に多いですな!」
ワームは何メートルあるのだろうかという巨体で、しかも大量に湧いて出てくるように砂の中から現れるのでフレッドは対処が大変そうだ。ドリーとリオに上空から塩を撒いて貰って、俺、ベス、アンで遠距離から攻撃をしていく。
少しするとワームの動きが変わってくる。砂の上に出てきて苦しむようにのたうち回っているのだ。
「塩が効いてきたようですな!」
フレッドはそういうと、ワームを切っていく。ワーム自体はそこまでの硬さではないようだが、生命力が強いようで簡単には死なないようで倒し切るのが大変だ。
塩が効いて全てのワームが砂の中から出てきたようなので、俺たちは岩の上から砂漠の上を移動して、フレッドと一緒にワームを切り裂いていく。
「何とか倒せた」
「これほどの数と大きさだとは思っていませんでしたな」
「俺もだよ。大きさもちゃんと見てくるべきだった」
昨日、メアリー様から本を借りたのに、大きさを確認し忘れたのが痛い。大きさは胴回りと言えばいいのだろうかそちらは一メートルもないのだが、長さが十メートル近い気がする。
「これどう考えても収納の魔道具に入らないよね?」
「でしょうな。ですが、切って小さくすれば入るのではないですかな?」
「なるほど」
幸いにもワームは骨がないので切りやすく、俺、ベス、フレッドで切って、回収をして行ってもらう。
「群れるとは聞いていたけど、ゴブリン並みに群れているとは思わなかったよ」
「二十匹近かったですな」
「だね」
回収が終わったらワームともう一度は戦いたくはないので、砂漠の上から岩の上に戻る。今日は砂漠で試すことも終わったので、ダンジョンを出て解体場に向かうことにする。
「砂漠で戦ったからか、砂っぽいな」
「そうですな。拙者頭から砂が落ちてきますな」
ワームに襲われたフレッドは頭から砂を浴びたようで、髪の毛を触ると砂が落ちてくるような状態だ。砂を落としながらダンジョンを進んでいくが、やはりサソリとコカトリスに出会うことはなく草原まで抜けてしまう。草原も戦う気にはならないので抜けて、解体場まで移動してしまう。
解体場でワームを狩ったと伝えると驚かれるが、量が多いだろうと解体場の中で出していく。
「ぶつ切りにして持ってきたのか、いつものように持ち帰るんだろうが、買い取るなら重さになるぞ」
「持ち帰るつもりだけど、ワームってどうやって使うの?」
「ワーム自体は魔道具にするしかないな。胴体の中に宝石が入ってたりするぞ」
ワームは砂の中を移動している間に宝石を食べたりするのか、解体すると何故か宝石が出てくるらしい。肉は食べれないのかと聞いてみると、肉の中にも砂が入り込んでいて、食べると口の中がすごいことになると言われる。
「絶対に食べたくないね」
「むしろワームを食べようと思ったやつが凄いと思うがな」
ギルド職員の言う通り、ワームを最初に食べようと思った人は何を思って食べようと思ったのだろうか?
「有名な逸話なんだが、何でもハンバーガーを作ろうとして食べたらしいぞ。ハンバーガーが何か知らないんだがな」
「あー、うん」
絶対食べようとしたのは転生者だ。ワームとハンバーガーで記憶から都市伝説を思い出す。しかし本当にやろうとするか?
サソリとコカトリスも渡すが、普通の反応で解体しておくと言われる。どちらも食べれるので、可食部位だけ分けておくと言われる。サソリも食べれるのか、見た目はエビの親戚みたいな見た目だが。
解体場のギルド職員が後は任せろと言ってくれるので、俺たちは馬車に乗って帰ることに。
「エド、先ほどのハンバーガーで妙な反応していましたが、何か知っていますの?」
「転生者が料理を作ろうとしたんだと思う」
「そう言うことですの。エドはワーム以外で作れるんですの?」
「いや、ワームで作らないんだよ本来は。だからすぐに作れるよ」
ベスが不思議そうな顔で俺を見てくるので、俺はハンバーガーの本来の作り方と、都市伝説を教えると、呆れた顔をしている。
前話を修正しました。
感想で指摘頂きステンレスは塩(海水)に弱いとの修正。
追記
ステンレスが磁石に反応しないのではと言われて焦ったのですが、鉄+クロムのステンレスは磁石につきます。現代の身近なステンレスは鉄+クロム+ニッケルで、そちらは磁性がなくなるようです(加工次第で磁性が発生するようです)。
しかし、ニッケルとかチタン出し始めたら収拾がつかなくなりそうなんですよね…
ステンレスについてはもう少し修正するかもしれません。
ブックマーク、評価、感想がありましたらお願いします。




