魔法使いの犯罪者
ギルドでの話を終え。ベスとリオを送りに屋敷へ行くと、風呂に入っていくと良いと言われ、せっかくだからと男女に分かれて風呂に入った。
「ベス、ありがとう。協会だと時間制だから助かったよ」
「食べた量も少なかったですから料理も用意させましたわ」
「ありがとう」
使った魔力に対して食べた量が少なかったので、結構な量を食べてしまった。周りを見渡すと同じように結構な量を食べている。お腹が膨れると眠くなってきてしまい、協会に戻る事にする。
今日は寝るだけなので、アンを送り届けた後に協会へと戻ってきた。
「何か人が多くないか?」
「そうですな?」
「何でだろ?」
普段は受付周辺は人が居ないのに、何故か今日は大量に魔法使いが集まっている。何をしているか聞こうと思ったが、集まっている人は忙しそうなのでエマ師匠、エレンさん、ジョーの誰かを探して聞いてみる事にする。
「エマ師匠いますか?」
「エド、戻りましたか」
「はい、戻ってきました。早いですが寝ようかと思ったら、協会が慌ただしかったので、何が起きたのかと思って」
「協会が慌ただしいのは、魔法使いの悪人が出たからです」
「それは以前言っていた魔法使いが処理するという?」
「そうです」
エマ師匠から悪人と呼ばれた魔法使いについて聞くと、すでに人を何人も殺しており、魔法使いでなくても捕まれば死罪になる罪を犯しているようだ。
「なので、エドたちも魔力が少ない場合は外に出ないように。魔力がある場合でも何人かで行動をすることを心がけて下さい」
「分かりました。そうなるとダンジョンの帰りが危ないですね」
「そうですね。ダンジョンは控えた方が良いかもしれません」
荒野を踏破したし少し休憩を挟んでも良いかもしれない。ベスやリオには明日話せば良いだろう。
「ところで、悪人の魔法使いはアルバトロスの魔法使いなんですか?」
「いえ。他国から流れてきたようで、他国の協会から使者が来て注意をするようにと伝えられました。アルバトロスに居ない可能性もありますが、協会としては居る前提で捜索しています」
「なるほど」
どうも魔法使いは海上から来たのではなく陸路で来たようで、監視の目を潜り抜けてアルバトロスに入り込んだと考えられるそうだ。
「随分と逃げるのが上手いんですね」
「ええ。しかも捕まえようとしたり、追いかけた魔法使いも殺しているようです」
「魔法使いまで殺しているんですか」
魔法使いとしてかなりの使い手のようだ。だからアルバトロスの魔法使いはかなり緊張状態にあると教えてくれる。でも辺境伯の屋敷ではそんな話を聞かなかったがどうしてだろうか?
「エマ師匠、さっきまで辺境伯の屋敷に居たんですが慌てた様子はなかったですよ?」
「協会にも先ほど伝えられたので、辺境伯の屋敷もすでに伝わっているかと」
「なるほど」
「私も魔力がないので今日は協会から出ないようにと言われています」
魔力が残っている人は集まって欲しいと連絡があったとエマ師匠は教えてくれる。受付周辺で集まっていたのは、戦える人だったのかもしれない。
「もう一度言いますが、エドたちも魔力がないようなら外には出ない事です」
「分かりました」
エマ師匠が再び注意するほど危険な状態のようだ。ベスとリオは安全だと思うが、アンが心配だ。だが、今行っても俺たちも魔力がないので危ない。魔力を回復させて様子を見にこう。
魔力を回復させるために早めに寝る事にする。
朝起きると、俺の魔力は回復したようだ。
「魔力は回復した気がする。ドリーはどう?」
「ドリーも回復した!」
若干違和感があるのは、もしかしたら魔力量が増えたのかもしれない。エマ師匠とフレッドと合流して朝食を食べにいくと、普段より朝に起きている魔法使いの量が多いようだ。
「普段の食堂と違いますね」
「少し話を聞いてみましょう」
俺も魔法使いの知り合いは増えたが、エマ師匠の方が知り合いは多いので、事情を聞けそうな人をエマ師匠が選んで聞いてくれた。
朝起きている人が多いのは交代制で待機することが決まって、普段生活が乱れている人が起きてきているだけとの事だ。朝起きている人はそのまま朝起きているようにと言われた。
何となく察してはいたが、魔法使いはそんなに夜型が多かったのか。
「それで、待機はどうなっているの?」
エマ師匠の質問に知り合いの魔法使いが、属性流派が主だって戦闘員をまとめ上げていると教えてくれる。戦闘経験がある人は声をかけられる事になるだろうと言われたので、俺たちも声をかけられそうだ。
声をかけられるまでは自由にしていて良いとのことで、声をかけられる前にアンの様子を見に行ってこよう。
朝食を食べた後に、俺たちはエマ師匠の知り合いの魔法使いにお礼を言って、アンを尋ねる事にする。
「アンも装備は自分でほとんど持ってるけど、魔道具の矢とかが今回で使ってしまったから渡しておこう」
「そうですな。矢の補充もしておいた方が良いですな」
「頼み方をジョーに教わったから頼んでおこう」
ジョーが居ない場合は、自分で頼めるように頼み方を教わっている。協会から発注ができるらしく注文をしておく。エマ師匠も今日は治療を無しにする事になったらしく、俺たちについてきてくれる事になった。
「エマ師匠、ありがとうございます」
「戦闘に関してはエドたちの方がすでに上でしょうが、治療はできますから」
「助かります」
馬車に乗って警戒しながらアンの元に行く。アンと会って事情を説明する。
「魔法使いでそのような人が居るのですか」
「うん、だから注意して欲しくて魔道具の矢を追加で持ってきたから」
「助かりますが、魔法使いがこの薬屋を狙うとは思えません」
「何が起きるかわからないし、貧民街が近いから」
俺が心配しているのは魔法使いが貧民街に潜伏していないかだ、アルバトロスに潜伏するとしたら一番最初の候補は貧民街になるはずだ。だからバーバラさんの薬屋は貧民街に近いため、アンが心配だったのだ。
「エドは貧民街に魔法使いがいると思っているのですか」
「可能性は高いんじゃないかな」
「そうなると炊き出しも危ないですね」
「一時的に中止も考えた方が良いかも、セオさんと後で相談してみようと思う」
「私の方からも注意をしておきます」
「お願い」
そう言うとアンは、薬屋で店番をしていたであろう兄弟弟子に事情を説明している。この後は一度ベスとリオにも会いに行きたいがどうするべきだろうか。
「エド、伝えてもらえるよう頼みました」
「うん、ベスとリオにも会いにこうと思うんだけど、アンはどうする?」
「詳しい事情を聞けるかもしれないので、ついていこうと思います」
「分かった」
辺境伯の屋敷へと向かう。協会と同じように屋敷は慌ただしくなっており、昨日の様子と全然違う。メイドさんにベスに会いたいと伝えると案内してくれる。部屋に入るとベスにすぐ話を切り出される。
「エド、早速ですが魔法使いについて話を聞いていますの?」
「聞いてはいるけど、詳しくは知らないんだ。ベスは詳しく知っている?」
「なら聞いた話を伝えますわ」
魔法使いに教えた師匠に当たる魔法使いが探し出せないので、自力で魔法を覚えている可能性が高いらしい。そのため独特な魔法を使うようだと予測されるが、詳しい魔法の使い方は、戦った魔法使いを殺し続けているため分からないらしい。他の話はエマ師匠から聞いていたのと同じだった。
「自力で魔法を覚えるなんて凄いのに、なんでそんな事をしているんだろ?」
「私にも分かりませんわ」
「それで、その魔法使いはアルバトロスにいる可能性が高いの?」
「各地で殺しをしているようで、通ってきた道を考えると、かなり高いと思いますわ」
「となると、アルバトロスで潜伏するなら貧民街になるのかな?」
「行き着く先の可能性としては高いですわ」
やはりセオさんに貧民街での炊き出しをどうするか尋ねないと不味そうだ。
「リオに関しては外に出すのは不味いですが、私はテレサを護衛に戻すので、テレサが許可を出すのなら外出しても良いと言われていますわ」
「リオが外に出るがダメなの分かるけど、ベスは出ていいの?」
「お父様もお母様も予定外のことが起きすぎて人が足りていないようですわ。弟のレーヴェに任せるのは危なすぎると、私にも動いて欲しいと言われましたわ」
「それならセオさんをこの後尋ねようと思うんだけど一緒に行く?」
「確かに、セオなら貧民街に詳しいですわ」
ベスがテレサさんにエリザベス商会に行ってもいいか確認すると、魔法使いがこれだけ居るのなら問題ないと許可を出した。
「一緒に行くなら装備はダンジョンに行く時の戦闘用の装備で行こう。それと出る前にリオにも会って説明したい」
「準備をしますわ。その間にリオに会ってきて欲しいですわ」
「分かった」
ベスが準備をしている間にリオに会いに行く。リオにダンジョンはしばらく休みになりそうだと伝える。
「分かりました。それと、魔法使いについては僕も聞いています。十分注意して下さい」
「分かった。騒ぎが収まったら、またダンジョンに行こう」
「はい」
リオと別れてエリザベス商会へと向かう。エリザベス商会は普通に営業しているが、店舗の前に男が立っている。普段は見かけないので不思議に思っていると、アンが水車小屋に護衛でついてくる元冒険者だと教えてくれる。
「店の前に人を立たせているってことは、セオさんも事情を聞いているのかも」
「かもしれません」
アンが知り合いだったため挨拶をすると商会の中に入れてくれ、セオさんが普段仕事をしている部屋へ向かう。
「セオさん」
「エドさん、来ましたか。事情は聞いていますか?」
「ええ」
「なら話は早いですね」
セオさんに炊き出しのことについて尋ねると、今日は行う予定だが明日以降は分からないと答えてくれる。
「セオさんも魔法使いが貧民街に居る可能性が高いと思っているんですか?」
「いる可能性はあるとは思っています。私も貧民街に関わるまで知りませんでしたが、貧民街にも出入りはありますが、完全に知り合いが無い状態でいる人は珍しいらしいのです。なので、人伝に聞いていけば新しく入ってきた者は分かるそうです」
「それで不審者を探し出すわけですか」
「そうです。魔法使いが居ないなら炊き出しを再開すればいいし、居るようなら協会へ連絡する予定ですね」
人伝に聞いていくのに、エリザベス商会の仕事を回している人が多くいるので、その人たちから話を回していけば、貧民街に魔法使いらしき者がいるかどうかは、割とすぐに分かるだろうと教えてくれた。
「それじゃ俺たちに今はできることは無いですかね?」
「魔法使いは魔法使いが分かってしまいますし、今は貧民街には近づかない方が良いでしょうね」
「逃げられるか戦闘になる可能性が高そうですね」
「逃げるなら良いですが、かなり攻撃的な人物だと聞いているので戦闘になりそうです。なので、居場所が分かるまでは近づかない方が良さそうです」
「分かりました」
ベスはセオさんに、エリザベス商会も必要なら営業を休むように伝え、セオさんも同意している。知っている情報にお互い漏れがないか確認した。その後、俺たちはエリザベス商会を出ることにする。馬車に乗る前に周囲を確認すると、明らかに人通りが減っている。
「人が減ったね」
「凶悪犯の魔法使いですから情報を出したのかもしれませんわ」
「そうなると営業してても人はそうこないかも」
「かもしれませんわ」
エリザベス商会の前で立っている男に、可能性だが魔法使いの情報が出たかもしれないと、セオさんに伝えてもらえるようにお願いする。俺たちは屋敷に一度戻ってベスに確認してもらう事にする。
「確認しましたが、やはり情報を出したようですわ」
「そうなると凶悪犯は身を隠すか、アルバトロスから逃げ出すかな?」
「そうですわね。凶悪犯を見つけるのが難しくなったとは思いますわ。ですが人が死ぬよりは良いですわ」
「確かに」
ベスがテレサさんを通して騎士がどう動いているか聞いてくれたところ、騎士は情報の通達と、不審な魔法使いがいないか見回りをしているらしい。アルバトロスは今かなり厳重に警戒をしていると教えてくれた。
「人の出入りも厳重にやっているようですし、仕方がありませんが商業活動は停滞しそうですわ」
「出ていく分には問題なさそうだけど、そうも言ってられないか」
「行ってきた犯罪が凶悪すぎますわ」
その後もベスの元に入ってくる情報を一緒に取りまとめて整理していった。
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