豚骨ラーメン?
フレッドが上から降ってきたナーガに絡みつかれたので、同じ事にならないように上を注意しながらダンジョンを進んでいくと、ナーガと思わしき存在を見つける。鍾乳石のように垂れ下がっている石の間にナーガは潜んでいた、鍾乳石が光っているため、その奥に居るナーガには注意していなければ気付かなかっただろう。アンが弓を射ると頭に一撃で矢が刺さりナーガは落ちてくる。
「見つけるのは大変ですが、見つけてしまえば一撃ですね」
やはり死んでも動き回るので近づくのが難しいが、俺、ベス、フレッドで押さえ込んで収納の魔道具に入れてしまう。
「死んでも暴れるのが面倒ですが、オークより倒すのは楽ですな」
「そうだね。魔法格闘術があれば抑え込めるから、オークと比べると随分と楽だ」
これだけナーガが出てくるのだから、荒野はすぐそこだろうと地図を再確認すると、もう少しのようだ。歩いていくと幸いな事にオークに出会う事なく洞窟を抜け、荒野へと辿り着く。
「すごい」
「草原と違った凄さがありますわ」
皆で辿り着いた荒野を眺めて、草原の時のように広さに驚く。草はほぼ生えていないが、代わりにゴブリンとオークで採掘した時に見た、鉱石らしきものが点在している。
「すごい量の鉱石だ。俺でも分かるのだからアンならもっと詳しく分かるんじゃ?」
「ええ。ただ見覚えのない物もあるんですが、あれは何でしょうか?」
「どれだろ?」
「案内します」
アンに案内されて近づいていくと、大きい岩の前に到着する。確かに言われてみれば周辺の石とは明らかに違う材質で、何かの鉱石ではあるのだろうが何かまでは分からない。
「見たことのない鉱石なのですが、なんでしょうかこれは?」
皆で石を見回していると、俺はライノに言われたことを思い出す。ナーガとガーゴイルが荒野には居ると言っていた事を。
「もしかしてガーゴイル?」
「ガーゴイルなら石像なのでは?」
「ライノが荒野にはガーゴイルが居るって言っていたし、注意した方がいいと思う」
「それなら遠距離から攻撃してみますか?」
「そうしよう」
石だから魔法で攻撃してみる事にする。なんの魔法を使うか迷うが石に効果がありそうな魔法が分からないので、鉱石に石をぶつけてみる事にする。魔法の石が勢いよく飛んでいって鉱石に当たった瞬間、魔力が出て鉱石の形が変わる。
「本当にガーゴイルだった」
「エド殿が言い出したのに一番驚いておりませぬか?」
「実は何も起きないかもって思ってた」
ガーゴイルを見ると石が当たったことで損傷しているのか、こちらを攻撃してこないので、皆で同じように石の魔法を打ち込むと簡単に倒せてしまった。
「あれ? 倒せた?」
「石だから硬いかと思ったら、意外と柔らかいというか脆いですわ」
「これならオークの方が硬くなかった?」
「硬かったですわ」
アンに倒したガーゴイルを調べて貰うと、鉱石というよりは割れやすい黒曜石のような物に近いらしいが、詳しく分からないとのことで、帰ってからジョーに聞いてみる事になった。ガーゴイルがよく分からなかったので、何体か狩ってみたいと探してみるが意外と見つからない。
「目印になる岩とかあるから分かりやすいけど、荒野は意外と敵が少ないのかな?」
「一箇所に集まっているのかもしれませんわ」
「ライノが荒野にはゴブリンとかオークが居るって言ってたしそれもあるのか」
探し回ってガーゴイルに魔法を使うと、やはり簡単に倒せてしまった。不思議なのが最初は魔力の無い石なのに、攻撃すると魔力が出てきて反撃し始める。ダンジョンから溢れ出た魔獣は攻撃的だと聞いたのにガーゴイルは違う。
「ベス、攻撃的ではないし、ガーゴイルはダンジョンから溢れ出した魔獣じゃなかったりするのか?」
「エドの言う通り、攻撃的ではありませんしガーゴイルは元々荒野に居たのかもしれませんわ」
「荒野を後から追加したんだと思ってたけど、荒野は元々あった可能性があるのか」
「かもしれませんわ。正確なことは昔の話ですし、リング王国の数あるダンジョンの一つですから調べても分かるか怪しいですわ」
全体の歴史ならどこかに保存していそうだが、アルバトロスのダンジョンだけの歴史だと有るか怪しそうだ。
歴史的な事情はわからないとしてもガーゴイルが更に不思議なのは、攻撃すると魔力が急に出てくることだ。何かに反応して動き出しているので、ガーゴイルというよりは仕掛けがあるような気がするがよく分からない。
周囲を歩いて魔獣を探して回ったがガーゴイルとナーガしか居ないし、結構な時間をダンジョンで探索していたので帰る事にする。ダンジョンを出るとアンが矢をどの程度使ったか確認する。
「アン、矢の数はどの程度になった?」
「今日持って行った分の普通の矢は全部ダメになりました。先に進もうと思ったら倍の量は必要かもしれません」
「毎回それだと、そこまで用意できるか怪しいな」
「矢を用意するお金も必要ですし、やはり矢は消費を抑えるように使うべきでしょうか?」
「進む速度を考えると矢を多めに使うか、魔力を多めに使うかのどちらかになりそうだ」
どちらを優先するかは迷うところだ。魔力は五人が魔法使いなので多めに使っても問題ない気もするが、今は魔法格闘術で倒しているので消費は少ないが、普通の魔法で倒そうと思うと結構な魔力量が必要となる。そう考えるとやはり、オークは避けて通れるなら避けたい相手だ。
ベスとリオを送った後に、エマ師匠を誘ってジョーに矢の事などを相談しにいく。
「ジョー、矢を使ってオークを倒したら、矢が全部なくなってしまった」
「あれは鋳造で作った矢じゃから強度がそこまで無いんじゃ」
「鋳造だったのか」
「手作業で鍛造していたのでは矢が高すぎるんじゃ」
「そうすると量産はできるの?」
「出来るぞ、大量に作るなら注文するので時間は少し欲しいんじゃ」
鋳造なら合金の強度を上げれば、オークに刺さっても使い回せるものができそうだ。フレッドの装備を考える時も合金を考えたが、記憶と記録の違いを発見した事で合金について話をするのを忘れていた。
「ジョー、金属について聞きたいんだけど」
「いいぞ」
ジョーに使っている金属について聞いていくと、思った以上に種類があった。種類が多いのは金属としてと言うよりは、魔道具を作る際の素材として使用する金属が多いようだ。実際に金属を作り出すのを見せるのは時間がかかると素材だけ説明された。
「ジョー、単純に金属としての強度や粘り強さを上げる方法はないの?」
「協会だとそこまで熱心に研究しておらんのじゃ」
「そうなんだ。試してみたいけど無理かな?」
「出来なくはないが、エドがやるのは大変じゃ。金属を研究している会合が協会にもあるので、ワシが声をかけておくんじゃ」
確かに俺がジョーと二人でやるには大変な作業だから、誰かに手伝って貰えば作業は捗りそうだ。
「それは今度頼んでおくから、オークの骨を見に行くんじゃ」
「忘れてた。どうなってるかな」
「分からないので確認するんじゃ」
俺たちはオークの骨を煮込んでいる部屋まで移動する。どうなっているか恐怖ではあるが蓋を開けてみる。
「良い匂いじゃな!」
「あれ? もしかして成功した?」
「分からんが、匂いはいいんじゃ」
魔道具の鍋は凄いもので、色々突っ込んで放置されていたのに上手い事煮込まれていたようだ。
「塩味がないからそのままじゃ美味しくないと思うし、不純物を濾した方が良いけど」
「適当に小さい鍋に汁を掬って調理場に持っていたらどうじゃ」
「ジョー、骨は良いの?」
「匂いが気になるんじゃ。骨の確認は後でやるんじゃ」
「分かった」
調理場で鍋を借りて出来上がった豚骨の汁を入れて調理場に戻る。舌触りが良くなるように一度濾して味を調整していく。料理人たちにも味見をして貰って味を決めていくと、豚骨ラーメンのような汁が出来上がった。
「美味しくなったよ」
「ワシも飲んでみるんじゃ」
「どうぞ」
ジョー以外にも皆に配って味見をして貰う。
「少し味が濃いが美味しいんじゃ」
「忘れてた。これは麺を入れることを前提に作ったから濃いんだ。昨日お願いして麺を用意して貰ってたから茹でて入れてみよう」
頼んでいた麺を調理場の料理人が茹でてくれて豚骨ラーメンが出来上がる。
「美味いんじゃ!」
「思った以上に美味しくできたかも」
皆も食べてると美味しいと言ってくれ好評だ。調理場の料理人からも美味しいと作り方を聞かれたので、オークの骨だと説明するとこんな使い方があったのかと驚かれた。
「美味しくできたし、ベスとリオにも持っていかないとな」
「大きな鍋で作ったから好きなだけ持ってけばいいじゃろ」
「今日もオークを大量に狩ったから骨は余っているし、足りなければまた作ろう」
「それは良いんじゃ。後で仕込んでしまうぞ」
「流石にそんなに要らなくない?」
「これなら食事で出せば食べたがるやつはいるんじゃ」
料理人も同意してくれたので、オークの骨で汁をまた作ることになったが、今回は昨日よりオークも多いし、料理人が作り方を見たいと手伝ってくれる事に。匂いが漏れない部屋で再び骨の下処理をして、臭い消しの野菜や薬草を入れて後は鍋任せで煮込む。流石に今日狩ったオークは多過ぎたのか骨が余った。
手伝ってくれた料理人は、意外と簡単に処理ができたので、料理が好評であれば部屋と鍋を使う許可を貰うと言って調理場に戻って行った。
「ジョーところで骨はどうだったの?」
「今から調べるんじゃ」
「手伝うよ」
骨を取り出して叩いてみると簡単に壊すことができた。
「おお! これなら粉にするのも簡単そうじゃ」
「後は効果が残ってるか調べないとダメだね」
「そうじゃな。濡れておるし乾燥させて使った方が良さそうじゃから、今度試してみるんじゃ。効果がなくても汁にすれば美味しいのじゃし、オークの骨は全部煮込んでしまって良いと思うんじゃ」
「ジョー、それはいいの?」
「エド、いいんじゃ。一度骨を粉にする作業をすればワシと同じことを言うんじゃ」
ジョーは渋い顔でそんなことを言う。前回聞いた時からそうだがオークの骨は厄介なものらしい。使い道が一つでもできたのだから、良かったのかもしれない。
「ところでベスに持っていくのにどうやって持っていこう」
「それなら鍋ごと持っていったらどうじゃ。メアリーに許可を貰えば鍋の一つくらい持ち出せるぞ」
「そうなのか。メアリー様とは帰ってきてから会ってないから会いにいこうかな」
「メアリーは忙しくて、エドやドリーに会いにいくには無理そうじゃから、会いに行ったら喜ぶと思うんじゃ」
「忙しいって、会いにいくのはいいの?」
「メアリーにも休憩は必要じゃし、会って話すこともあるじゃろ」
鍋を持ち出す許可を取るためにメアリー様が普段いる図書館へと向かう。
「メアリー様、帰還の報告が遅れました。戻ってきました」
「よく無事に帰ってきたね」
「忙しいようですが、話しても問題ありませんか?」
「構わないよ。ただ私からも聞きたいことがあるから話を聞かせておくれ」
「分かりました」
まずは俺の用事を聞きたいと言うので、鍋を持ち出す許可が欲しいとお願いする。
「匂いが出る場合に使う部屋にある鍋を一つ持ち出したいのですが」
「構わないけれど、何故鍋を?」
オークの骨を煮込んで汁を作って、中に麺を入れて食べれるようにしたと説明すると驚かれた。
「オークの骨なんて食べれたんだね」
「アルバトロスだと骨を二つに切って骨髄を食べるので、骨を煮ると骨髄が出てくると思って作ったらおいしく出来上がりました」
「確かに煮れば出てきそうだね。美味しそうだから後で食べてみようじゃないかい」
「なら分けて料理人に頼んでおきます。それと元々はオークの骨を簡単に砕く用に煮たんです」
「オークの骨は処理が大変だからね、それでにた骨は砕けたのかい?」
「砕けるようにはなりましたが、濡れているので乾かしてから素材として試すとジョーがさっき言っていました」
「素材として使えるなら嬉しいがダメなら骨は料理用になってしまうかもね」
メアリー様までオークの骨は料理用になってしまうかもと言い始めた。そんなに砕くのが嫌なのか。
俺からの用事は終わったので、メアリー様がドラゴンとメガロケロスが住んでいた森の魔獣や植生を教えて欲しいと聞いてきたので、俺とドリーは過去に聞いた話を、他の皆は今回の旅で出会った魔獣や植生を話す。
「予想していたけれど、予想は当たってそうだね。オークの骨を煮ていると言うことは、ダンジョンでゴブリン以降に進んだかい?」
「はい」
「ダンジョンから魔獣が溢れたことがあると説明は聞いているんだね?」
「聞きました」
「ダンジョンから魔獣が溢れた地域には特徴がある。色々な種類の魔獣が多いのさ。その特徴にドラゴンとメガロケロスが住んでいた森は当てはまる。つまり森の中にはダンジョンがあるね」
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