オークの使い道
ジョーの部屋に着くと、今日ダンジョンでオークを倒した事を報告した。
「オークを倒したんか凄いんじゃが、オークのう…」
「ジョー、なんか嫌そうだね」
「オークは骨が硬いじゃろ?」
「確かに凄い硬かった。アンの弓なら刺さったけど矢が曲がったよ」
「あの骨にも刺さるんか驚きじゃ」
オークの骨は元々硬いのに、魔法格闘術を使うことで更に硬くなって、倒すのが大変だった。
「それでジョーは骨が硬いのが問題なの?」
「加工するのが大変なんじゃ。諦めて高温で灰にしてしまったりするんじゃ」
「魔法で加工したらダメなの?」
「魔法で加工するにしても、粉状にしないとダメじゃったり、切り分けて必要量を取り出すのが大変なんじゃ」
「それは大変そう」
ジョーに加工方法や材料としての使用方法を聞いてみると、どれも厄介で面倒だった。
「しかもじゃ、オークの骨を使った方が効果は高いんじゃが、大半の場合はオークの骨を使っても高いといっても誤差程度なんじゃ」
「それは灰にするよ」
「じゃよな。灰も別にオークじゃなくても良いんじゃがな」
「強い魔獣なのに使い道があまりないのか」
「そうなんじゃ。何でもいいからオークの使い道を考えてくれると嬉しいんじゃ」
ジョーがそこまで素材を面倒そうに言うのは初めてみたので考えてみよう。そんなに硬いなら武器にできそうだが、加工がどちらにせよ大変だ。薬品で溶かそうと思ったら大量に薬品が必要だろし、溶かしてしまったら素材として使えなくなってしまいそうだ。オークと言えばブタだ、肉は食べれるのだし煮込めば出汁として食べれそうだ。しかも煮込めば骨も多少柔らかくはなりそうだ。
「ジョー、骨を煮込んだ事はあるの?」
「焼きはしているが煮てはいないと思うぞ」
「素材として使えなくなるかもしれないけど、なら長時間煮込んでみたら?」
「一度試してみるんじゃ」
「ジョー煮込むと匂いも凄いと思うから、部屋でやると大変かも」
「それなら良い場所があるぞ」
ジョーに案内されて、強く匂いが出る素材を処理をするため用意されたという部屋に来た。中の機材を教えて貰うと、なんと圧力鍋のようなものまであって驚いた。
「こんな部屋あったんだ。知らなかったよ」
「ワシでも滅多に使わんのじゃ」
「設備もしっかりしてるし、使う人は使いそうだけど」
「魔法使いでないと処理できない時は使うが、そうでないなら業者に頼んでしまうんじゃな」
魔道具にするには魔法使いが必要だが、素材の準備なら誰でも出来るから頼んでしまうのか。そうするとオークの骨も頼めば良さそうだが?
「オークの骨は業者に頼まないの?」
「大量に手に入れば頼むんじゃが、オークはそんなに手に入らないんじゃ」
「確かに倒すのが面倒だったけど、ダンジョンでオークだけ無視するって難しい気が。冒険者はオークを倒さないで通ってるのかな?」
「ダンジョンの事はワシも分からんのじゃ」
ジョーに聞いても冒険者ではないので、オークを倒さないで通る方法は分からないのは当然か。ライノが近道する方法があると言っていたし、先に進めば分かるかもしれない。
今日は部屋の案内だけで終わる予定だったが、確認するともうオークは協会に搬入されていたので、骨を煮てみることになった。せっかくだから豚骨のスープができないかと臭み消しになる食材を調理場から貰ってきて、更に自分で薬草を追加する。
「エド、何をやってるんじゃ?」
「汁物にならないかなって」
「オークの骨を食べるんか?」
「アルバトロスだと骨髄食べたりするでしょ」
前世では食べたことは無かったが、アルバトロスだと骨髄を食べたりするので、骨を煮込むことで骨髄を取り出すと事を説明しやすい。
「煮る事で骨髄を溶け出させるわけじゃな」
「そう。だから溶け出しやすいようにヒビを入れたいけど、思った以上にオークの骨が立派でヒビを入れられるかな?」
「そのくらいなら平気じゃ。粉にするのが大変なだけじゃからな」
一回軽く煮た後に洗って、ジョーがハンマーで骨にヒビを入れてくれる。微妙に手間がかかって大変だが、ジョーから粉にするのに比べたら楽だと言われる。スープが不味かったら次回からは煮るだけで良いし、臭み消しの食材と薬草を入れて鍋の蓋を閉じる。
「一日煮ておけば良いと思うけど、魔道具だから放置でいいのかな?」
「そうじゃな」
ほぼラーメン作りになっているので、臭み消しの食材を貰ってくる時に、麺がないかと聞いたら有ったのでお願いしておいた。どういう麺かは分からないが、豚骨スープがうまく出来るかも分からないのである物で良いだろう。
その後はジョーの部屋に戻って、宝石を研磨したりする。ベス用の腕輪がどういう物が良いかジョーに相談しながら決めていく。
「腕輪はこんなもんじゃろ」
「ありがとうジョー参考になったよ。後は自分で試してみる」
「良いんじゃ。参考になったと言えば、昨日のエドからの助言は役に立ったんじゃ」
「もう結果が出たの?」
「複雑な部分を簡易化しただけじゃからな、おかげで作業は進んだんじゃ」
「簡易化って言っても、昨日の事なのに早いね」
「辺境伯からの依頼じゃからな。メアリーも事情を知っとるから急げと言ってるんじゃ」
メアリー様は協会長で、しかも辺境伯であるレオン様の母親でもあるので、ドラゴンとメガロケロスの住んでいる森の事情は聞いているだろう。協会としても将来的にあの森で取れる薬草は協会にも下されるだろうから、早くから関わっておいた方が得だろう。
ライノに言われたダンジョンに泊まる為の道具をジョーに相談すると、そういう魔道具が得意な魔法使いから、魔道具を分けてもらっておくと言ってくれる。ジョーのように作って倉庫に入れて忘れているらしく、代わりにダンジョンで取ってきた素材を渡せば、喜んで魔道具をくれると言われたので、ダンジョンで取ってきた素材をジョーに渡しておく。
「これだけあれば喜んで魔道具を渡してくれるじゃろ」
「良いのかな、魔道具だから高い物だよね?」
「意外と適正だと思うぞ。ダンジョンのゴブリン以降は、魔獣の値段も跳ね上がるから高いんじゃ」
「草原までは解体場で値段を聞いたりしてたけど、ゴブリンからは聞いてないから知らなかった。そうなの?」
「エドは売らないで持ち帰ってきておるから知らないのじゃな。鉱石も手に入るとは言え高いし、持ち帰った物を全部売ったらかなりの額じゃぞ」
ダンジョンで狩った獲物や採取してきた物を売らないので、装備にしたりしているので分け方をどうするか考えたことがあり、ベス、リオ、アン、フレッドにも素材やお金は要らないと言われたが、作った魔道具の一部をセオさんに売ったりして、売ったお金を皆に分配しているのだが、売る魔道具を増やすべきだろうか?
「フレッド、アン、売る魔道具の量を増やして、渡している金額を増やす?」
「拙者、使うことが無いのでお金は増え続けていますな」
「私もそこまで使わないので今の額でもかなり余っていますね」
「お金だから貯めといても良いとは思うけど?」
「拙者は協会に住んでいる限りはそう要りませんな」
「私は家に置いておくのがそろそろ怖くなる金額になってきたのですが」
アルバトロスにも銀行があるのだが、個人で使う物ではなく大きな店が使うために存在しているという感じだ。セオさんにアンの事を一度相談してみても良いかもしれない。
「アンの事も含めて、一度セオさんに相談して決めようか」
「そうして貰えると助かります」
作業が終わってからジョーを誘って、オークの肉を料理してもらって食べてみたが、味は普通に美味しかった。一部は明日まで煮込むと言われたので明日も食べることになりそうだ。
「まさかオークを食べることになるとは思わんかったんじゃ」
「ジョーでもオークは食べたこと無かったのか」
「普通は食わんのじゃないか? オークの姿が思い浮かぶんじゃ」
「ジョーの言いたいことは分かる。ベスが食べたいって言ったから一頭だけ食用に捌いて貰った」
「ベスは挑戦的じゃな」
オークを真っ先に食べると言ったベスに皆感心する。ジョーの言う通りオークの姿を思い出すので、美味しいのになんとも言えない気分になる食事だった。
次の日ダンジョンに皆で向かう道中、ベスにオークの感想を聞くと、美味しかったと言う。トリス様とレオン様は食べた事があったようで普通に食べたとのことだ。ベスの弟のレーヴェはオークと聞いて躊躇したようだが食べたらしい。
「レーヴェは美味しいけれど普通のブタで良いのじゃないかと言いましたわ。お母様も同意して今まで出していなかったと言っていましたわ」
「俺も、オークが思い浮かんで食べる必要はないかなって気がした」
「レーヴェも同じような事を言っていましたわ。オークを見た事がないはずですのにおかしな話ですわ」
「図鑑とかでオークの絵なら見た事があるだろうし、そういう物じゃない?」
「図鑑のオークですの? 確かに以前見た絵の方が嫌な感じだった気がしますわ」
納得した様子のベスに、オークは骨が硬くてジョーでも困っていて骨が柔らかくならないかと、煮込むついでに料理にしていると伝えると食べたいと言うので、味見をして美味しかったら食べさせると約束をする。
ダンジョンに泊まるための装備の事や、お金の話をすると今度セオさんに会いに行った時に聞いてみる事に決まった。
ダンジョンに着くとゴブリンの倒し方は分かったのでオークが出る階層まで一気に進む。
「オークの骨を煮込む時に骨を触ったけど、大きい上に頑丈だから剣や槍だと魔法格闘術を使わないと傷がつかなそうだった」
「拙者も作業を手伝いましたが、エド殿の言う通り剣や槍では骨を避けて戦わないと無理でしょうな。更にオークは、魔法格闘術を硬くなるように使っているんだと思いますな」
「少し時間はかかるけど骨のない部位を狙おう」
「分かりましたわ」
オークは背が高いので首は狙いにくいため、足や腹を切って出血させて弱らせていく。時間はかかるがフレッドがオークの注意を引き付けてくれるため、電撃の魔法で麻痺させたところを切ってオークを処理していく。
「やっぱりゴブリンと違って時間が掛かりますな」
「そうですね、フレッド。矢を捨てる覚悟ならゴブリンと同じように処理できるのですが…」
「アン殿、それでは何本の矢が必要になるか分かりませぬな」
「その通りですね。ただ矢だとオークに出血をさせるという意味では効果が薄いので、どうにかしたいところです」
確かにアンは俺以上にオークはやりにくい相手のようだ。骨のない致命傷になりやすい部位だと首になるだろが顔を狙うより大変そうだ。弓以外で戦うのはアンが魔法格闘術を使えないので攻撃をされた時が怖い。
「アン、今日は弓で倒してみてしまう?」
「良いのですか?」
「どの程度の矢を持ってくれば足りるか計算してみるのも良いかも。矢がオークの足や腹に刺さった場合に、一撃で死ぬわけじゃないからオークの力で矢を壊されたら意味がないし」
「確かに数本壊されました」
「だったら壊れる前提で動いても良いかも」
「分かりました」
アンが一撃でオークを倒し始めると明らかに倒す速度が上がり、ダンジョンを奥へと進んでいく。オークを倒すのが安定してきたところで、明らかにオークと違う魔獣と出会った。俺たちが警戒していなかった天井から落ちてきた魔獣は長い、先頭を歩いていたフレッドに絡みつく。
「中々、力が強いですな」
「フレッド、大丈夫か!」
「この程度、平気ですな。拙者全容が見えぬのですが、この魔獣はなんですかな?」
フレッドは余裕そうに魔獣が何かを聞いてくる。俺は落ち着いて魔獣を確認するとナーガだった。
「フレッド、ナーガだ」
「ライノ殿がこの先に居ると言っておりましたな。オークほど硬くはなさそうですし、拙者に絡みついている間に倒して欲しいですな」
「分かった」
普通ならナーガはフレッドに絡みつくというか、絞め殺そうとしているのだろうが、フレッドは効いている様子はない。ナーガが必死にフレッドに絡みついている間に、弱点そうな頭だと思う場所を切り飛ばしてしまう。
「フレッド、ナーガの頭を切り落としたけど」
「まだヘビの部分だと思いますが、拙者を締めてきていますな。ヘビだから死んでもすぐには力が抜けないかもしれませぬな」
力が抜けるのを待っているのも時間の無駄なので、俺とベスで魔法格闘術を使ってフレッドから引き剥がそうとするが、フレッドを包み込むように絡みついているので、大きな事もあり引き剥がすのに時間がかかった。
「エド殿、ベス殿、助かりましたな」
「次からは上も注意しよう」
「そうですな」
最初薬品で溶かそうと思ったんですが、溶かしたら素材として使えなくね?ってなり、気付いたら豚骨ラーメン作ってた。
ちなみに骨髄を食べる料理は実際にあります。作者は食べたことがありませんが牛の骨髄を食べるらしいです。
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