オーク
ライノに聞いた話をベスにすると、ゴブリンが音で興奮した事は予想があっていた事を話し、ゴブリンの魔法を使う時の魔力量が少ない事も説明する。
「私もゴブリンの魔力量は気づきませんでしたわ」
「誰も気づかなかったのか。やっぱり皆も緊張してたのかな」
「そうだと思いますわ」
ダンジョンの地図がある事は知らなかったようだが、次の魔獣がオークであることは知っていたようだ。だから小柄なオークなら通れそうだとベスが言っていたのか。
ジョーに聞いた鉱石と宝石の話をして何か作る予定だと言う。
「宝石で何か作るのですか、良いですわね」
「今、屋敷で何か催しを開きそうにも無いから、装飾品としてより実用品の腕輪でも作ろうかと思ってるんだけど」
「催しで思い出したのですが、お母様がエドが作った服を着てルーシー様について話をするために催しを開いたと聞いていますが、私はその事をエドに伝えたのか記憶が曖昧ですわ」
「俺は聞いた記憶はないよ」
「お母様も忘れていそうですわ。なので、お母様が着た一部の服はもう売り出しておりますわ」
トリス様も色々忘れるくらいには忙しいようだ。そんな中をベスはダンジョンに通っていて良いのだろうか?
「ベス、服を売り始めたのは分かったけど、トリス様も随分と忙しそうだけどダンジョンに行っていて良かったの?」
「私もエドのように考えてお母様に聞いたのですが、ルーシー様の話をするための催しを開いた時に、周囲の貴族に協力を願ったから今は問題ないと言われましたわ」
「にしては大変そうだけど」
「問題が後から積み上がっているからかも知れません。私が手伝うにしても勝手に何かする訳にもいきませんわ」
確かに一ヶ月近くもアルバトロスに居なかったので、その間にトリス様が周囲の貴族に協力を願った事もあって、ベスも誰が何をやっているのか分からなくなっていそうだ。
トリス様の代わりと、レオン様に付いてきたセオさんに今度話を聞いてみるか、服も売り出したとベスが言っているし。
「今度セオさんに話を聞いてみようかな」
「それは良いですわ。どうやら商会のこと以外も手伝っていたとテレサから聞きましたわ」
「今更だけどテレサさんってどうしてるの?」
「テレサは一時的に私の護衛を外れて、森で兵士をまとめて交代で見回りしていますわ」
「テレサさんが森の警戒をやってるんだ。休んでるのかと思ってた」
「旅をした時にドラゴンやメガロケロスと一緒にいたのがテレサですから、動きの少ない場所にしたとは聞きましたが、帰ってきてから見回りをしていますわ」
テレサさんは騎士で体力があるとはいえ大変そうだ。
「エド、セオに会いに行く時は私も行きますわ」
「分かった。商会ならリオも連れて行けそうだし皆で行こうか」
「それが良いですわ。私がリオを連れて行っていいか聞いておきますわ」
ベスと話しているとアルバトロスの街全体が忙しく動いているように感じる。
話しているとダンジョンに到着したので、中に入って昨日と同じように湖まで移動を優先で歩き続ける。
「今日も島にゴブリンが居ないようだ」
「居ない方がいいですわ」
「そうだね」
階段をフレッドを先頭で降りていく。また奇襲を注意しつつ下まで降りると、今日は奇襲はないようで普通に降り切れた。
「毎回階段直後にゴブリンが出待ちしている訳じゃないんだな」
「そうですわね」
「ゴブリンの魔法がどの程度魔力を使っているのかと、鉱石を掘る音で興奮するのか確認したいんだけど良いかな?」
「私も確認したいですわ」
「まずは昨日と同じように興奮させないで魔法を使わせようか」
「分かりましたわ」
ゴブリンの集団に出会うまで歩き、戦い始めるとゴブリンが魔法を使い始める。確かに魔力量が少ないようだ。フレッドが試しに攻撃を受けてみると言って、盾ではなく魔法格闘術を使った状態の体で、ゴブリンの魔法を受け止めた。
「これなら魔法格闘術を使っていれば盾無しでも平気ですな。魔法格闘術が使えないアン殿とリオ殿が心配ですが、袋叩きにされなければ問題ないかも知れませんな」
「魔法の見た目は強そうなんだけど」
「見た目だけですな。ゴブリンの数と人型であることの方が問題なのかも知れませんな」
草原までだと数がここまで多い事はなかったし、人型であることで禁忌感が出てしまって来れなくなってしまう人は確かに居そうだ。
次は鉱石を掘って興奮させてみる事にする。地図を頼りにゴブリンが居そうな場所の近くで鉱石を掘っていると、ゴブリンが魔法を使わないで走ってくる。今回はアンの行動も早く、壁から降りると弓を構えて攻撃に参加する。
たまに魔法を使ってくるゴブリンも居るが、魔法が効かないのも分かっているし、一体だけなら魔法の制御を奪えるのですぐに処理される。
「フレッドの戦いやすいと言った意味が分かりました。確かに戦いやすいですね」
「アン殿も戦いやすかったのですかな?」
「来ると分かっていれば、高さもないので降りるのはそう難しくありません。弓を構えれば、まっすぐに走ってくるゴブリンに当てるだけなので簡単でした」
ゴブリンはアンに向かって走っているのだから、アンからしたらゴブリンが真っ直ぐ自分に向かって走ってくるだけなのか。それは弓で狙いを定めるのも簡単そうだ。
「それならゴブリンは興奮させた状態で倒そうか」
「拙者はそちらの方が楽ですが、良いのですかな?」
「ドリーとリオが大変かも知れないけど、俺とベスは近接での戦闘ができるから」
「ふむ。ドリー殿、リオ殿どうですかな?」
「ドリーはゴブリンから狙われないし、問題ないよ」
「僕もドリーと同意見ですね」
「ならば興奮させた状態で倒す方にお願い致す」
「分かった」
方針が決まってからは、地図に載っているゴブリンが溜まってそうな場所の近くで鉱石を掘って、ゴブリンを誘き寄せてから狩っていく。
何回か繰り返した時に、今までと違った状況になる。ゴブリンが走ってくるのは一緒だが、奥で何かが戦っているような音がする。
「今回は何か違いそうだ。皆、注意を」
ゴブリンを倒しながら奥を注意していると、オークと思われる魔獣がゴブリンを殴りながら走ってくる。
「なんでオークがゴブリンを殴ってるんだ?」
「分かりませぬ。ですが、あのオーク魔法格闘術を使っていますぞ」
フレッドに言われてオークを確認すると魔法格闘術を本当に使っている。オークがこちらに気づいたのか走り込んでくる、強めの魔法を使おうとするとオークに矢が刺さって倒れる。
「倒せないと思いましたが、倒せてしまいました」
「普通の弓なら倒せていないと思いますな。エド殿が改良したかいがありましたな」
会話をする前に、ゴブリンを倒し切ってしまう事にする。ゴブリンを倒し切ると、オークを確認する。
「硬そうな頭蓋骨に刺さってるな。矢はもう使えないかも曲がってる」
「そうですな。ですが反対側から飛び出してはいないので、魔法格闘術で身体能力を上げていたのもあって頑丈そうですな」
「確かに。アンに渡した弓は普通だったら鉄板に穴開けるんだし」
オークを見た時はそこまでの魔力を魔法格闘術に使って居なかったように見えたが、オークの身体能力が元々高いのかゴブリンより強そうだ。
「それにしても、オークは魔法格闘術を使うのか」
「拙者も予想外でしたな」
「全部のオークが魔法格闘術なのか、違うのか気になるな」
「そうですな」
「進んで確認してみるしかないか。そろそろオークの階層に近いし」
地図を確認しながら進んでいくと、ゴブリンの階層も終わりのようで階段が見えてくる。
「ここからオークのようだけど、オークも鉱石を掘ると興奮するようだから掘って進もうと思うんだけど」
「周囲のゴブリンを殴るくらいには興奮して居ましたから、それで良いと思いますわ」
アンに最初はオークがどのような行動をするか分からないので注意するように言って進んでいく。階段を降りたところでの奇襲はなく、ゴブリンと同じように地図に書かれている、オークが集合している可能性がある場所を頼りに、鉱石を掘ってみる。
「来た、流石に周囲を殴っては居ないけど走ってきてる」
まずは遠距離で魔法から試していくが、やはり頑丈なようで魔力を少なめで倒すには工夫しないと難しそうだ。物理的な魔法では難しそうなので、時間は掛かるが熱を使って狭い範囲を高温にすることで焼き切る。
魔法格闘術でも戦ってみるが致命傷を負わせるのが大変だ。戦っていると時々オークに殴られてしまったのだが予想以上に痛くない、魔法格闘術を使っているのに何故だ?
オークはゴブリンほど数が居ないようで、倒し切ったようだ。
「硬いな」
「そうですな。ですが攻撃は弱くありませんでしたかな?」
「フレッドもそう感じたのか。俺も何回か殴られたんだけど予想以上に痛くなかった」
「エド殿もとなると、オークは頑丈さに特化しているんですかな?」
「かも知れない。ただ、その頑丈さが問題だけど、倒しにくかった」
倒したオークを確認していくと、一番オークを倒していたと思われるのはアンだった。
「アンの矢が致命傷になって居そうなオークが多いな」
「そのようですが、矢が使えなくなっているものが多いので効率が悪いですね」
「硬すぎて矢が曲がってしまうのか」
「そのようです。死んでいれば抜くのは簡単なのですが、抜く前の時点で歪んでいますね」
矢がダメになる前提で、矢を大量に持ってくるのも手だが、鉄の矢で重量もあるので持っていく方法も考えないと。そう考えるとオークを矢で倒すのはアンの言う通り効率が悪い。
「倒せなくはないけど、倒すのが面倒な相手だね」
「硬いだけとは思いませんでしたな。消耗を考えるとオークは避けたいですな」
「避けたいけど、通らないとダメな道だからな。魔法を色々試してみるか」
「拙者も倒しやすい戦い方を探してみますな」
それからもオーク相手に鉱石を掘って興奮させて戦っていくと、倒し方が分かってきた。
「電撃系の魔法が効果が強いな。近接で戦うなら骨以外を狙うと倒しやすいようだ」
「一撃で致命傷になる部位は骨があるので、時間はかかってしまいますがそうですな」
「魔力や物資の消費という意味では効率は良くなったけど、厄介な相手なのは変わらないな」
「ですな」
避けれるのならオークは避けて通りたい、強くはないのに硬すぎる。
「オークの対策もある程度できたし、今日のところは帰ろうか」
「確かに、かなり戦いましたし帰りますかな」
フレッド以外も皆同意してくれたのでダンジョンを出る事にする。ダンジョンを出て解体場で解体をお願いすると、オークは食べるかと聞かれる。
「オークって食べれるんですか?」
「一部のやつは食べるらしいぞ。魔獣だから美味しいとは聞いたことがあるが、私も食べた事はないな」
「二足歩行のブタと思えば食べれなくもないのかな?」
「そういう奴も居るってだけだから無理に食べる必要はないぞ」
「それなら何故食べるか聞いたんですか?」
「食用と素材用で捌き方が違うから聞いたんだ、なので食べるのが嫌なら魔道具の材料になるだけだ」
ギルド職員の説明に驚きつつも、皆に食べるか聞いてみる。結果一頭だけ食用に捌いてもらう事にして、後は魔道具用に捌いてもらう事にした。
「ベスはオークを食べてみたいって挑戦的だね」
「屋敷でも食べた記憶はないので一度食べてみたいですわ」
「俺は戦った感じ、肉も硬いんじゃないかって思ってしまったんだよね」
「そこまで考えていませんでしたわ」
「魔法格闘術を使っていたから硬いのかも知れないし、硬くても肉は長時間煮込めばどうにかなるんじゃないかな」
「メイドに伝えて料理長に伝えて貰いますわ」
オークがどこまで一般的な食材なのかは分からないが、オークを料理してと言われる料理長も大変そうだ。
ちなみにベスが食べてみたいと言った後に、どう考えても肉が余るので、アンにも炊き出しにオークを使うかと聞いたら、売って動物の肉を買ったほうが良さそうだと言われ、確かにその通りだと納得した。
余った肉は協会に持って帰って俺も食べてみる予定だ。食べれないようなら魔道具行きになる。
「骨は食べないから肉だけにしたら、意外とオークって食べる部位少ないんだね」
「そうですわね」
「これなら荷馬車を借りなくても乗りそうだ」
肉と一緒にベスとリオを屋敷に送って、肉をどの程度使うかメイドさんに聞いてみると、分からないとのことで料理長に直接聞いてくると言うので、俺も一緒に行って料理の仕方を聞いてみる事にする。
料理長にオークの使い方を聞いてみると詳しく知っており、やはり肉は硬い部位が多いようで煮込み料理に合うと教えてくれた。オークの肉は必要な分を料理長が切り分け、残りは俺が持って帰る事にする。
ベスとリオと別れた後は協会に戻り肉を冷蔵して、エマ師匠を誘ってジョーの部屋へと向かう。
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