森の管理
辺境伯の屋敷で風呂に入れられたりして、ゆっくり休憩していると、外から凄い音がする。その音はまるで雷が近くで落ちたかのような音だ。
「凄い音がしたね。晴れてるから雷じゃなさそうだけど?」
「そうですわね」
「なんだったんだろ?」
エレンさんが音の原因を教えてくれる。
「今のは大規模魔法ですね。ただ、人が扱える魔力量ではないと思います」
「人が扱える魔力量ではないってなると、ドラゴンとメガロケロスですか?」
「そう考えるのが妥当でしょうが…何をしているのでしょうか?」
「俺にも分からないです」
ドラゴンのガーちゃんが人を近づけないようにと言っていたのは、魔法を使うからだったのか。しかし、魔法で何をしているか全く予想できない。
「森に入れるようになったら見に行きたいですね」
「その時はエレンさんも呼びます」
「お願いします」
アルバトロスに戻って来て。数日は休養を取る事にした。休養中の俺とドリーはレオン様やトリス様に旅の様子を伝えたりしていた。休養中も一日一回はガーちゃんたちが魔法を使っているのか凄い音がしている。
今日で休養を止めてダンジョンに行こうかと思って、レオン様に相談していると、またガーちゃんたちが魔法を使ったのか凄い音がする。
「森からの音か。騎士を派遣してはいるが、流石に森の近くに誰かを常時おいた方が良いかもしれんな」
「毎日あれだけの音が森からすれば、アルバトロスの住人も気になりますよね」
「そうなのだ。騎士が追い払ってはいるが見にくる人数は増えているようでな。これからも、森に入ろうとする者が増えるかもしれん。」
「既に森に入ろうとしている人がいるんですか」
「そうなのだ。だが、以前なら多少森に入るのは許していたが、ドラゴンとメガロケロスが住む場所なのだ下手に人は入れられない」
森の中でメガロケロスならまだしも、ドラゴンに会ったら恐怖だろう。というかレオン様はドラゴンとメガロケロスが、森に住み着いたことを発表するのだろうか?
「レオン様は住民に、ドラゴンとメガロケロスが住み着いた事を発表するのですか?」
「発表は時期を見てだな。音がしている状況では発表しようとは思えない」
「確かに。誤解されそうですしね」
「その通りだ。それに、ドラゴンは普通に見たら恐怖の対象でもあるしな。発表前に住民に発覚するのは避けたいのだが、音がいつまで続くか分からんな」
「そうですね。俺も音がどれだけ続くかは分かりません」
「なので今後は誰かを常に置きたいのだが、人選が難しくてな。今は臨時で騎士と兵士を置いているが、常に置くとなると騎士と兵士を数人なら良いが、森は大きいから人数が要るとなると騎士と兵士が足りなくなってしまう」
ドラゴンとメガロケロスが住めるだけの大きさがある森なだけあって、森自体が大きい。今は兵士で囲んで人が入らないようにしているようだが、今だけではなくずっとは厳しそうだ。
ドラゴンの事を知っていそうな、ケネスおじさんはどうしているのだろうか? 会いに行こうとは思っていたのだが、今いる場所がわからなかったので会えていないのだ。
「レオン様、ターブ村から来た人たちはどうしているのですか?」
「今は家族毎に空いている場所に住まわせているな。兵舎だったり、私が所有している建物だったりだな」
「レオン様がそのような事までしていて下さったんですか」
「メガロケロスとドラゴンの話も聞きたかったし、エドとドリーに薬作りを教えた薬師も居ると聞いたのでな。凄腕の薬師なら保護しておいた方が辺境伯としても利益があるからな、気にするな」
「ありがとうございます」
レオン様は利益と言うがドリーを気にしたのだろう。先ほどからレオン様はドリーを膝に乗せて可愛がっている。先ほどまでレーヴェも一緒に居てドリーを構っていた、妹ができて嬉しいと言っていた。
「そうか。ターブ村の猟師も居たな。ドラゴンの事は知っているのか?」
「詳しくは聞いたことがないですが、知ってはいると思います。森の奥には入るなと言われていましたから」
「知っている可能性が高いか、聞いてみるか」
「薬師のオジジにはトカゲやシカと友達と言ってあるし、薬の材料をどうやって採取して来たかは伝えてあるので、ある程度は知ってそうですが」
「ふむ。となると森の近くに集落でも作ってしまった方が早いのか? アルバトロスに近すぎるが森の管理用だと思えば悪くもないか」
確かにターブ村の住人ならドラゴンについては知っている人が多そうだ。アルバトロスにも近いし、森の管理を頼まれるならターブ村の時より暮らしは楽になりそうだ。
「本格的な決定ではないが、集落を作る事にはなる。ただ、トリスや家臣と相談して集落の規模を考えるとする。エド助かった、助言が参考になった」
「俺は思いついた事を言っただけですので、考え出したのはレオン様です」
「その切っ掛けが思いつかなかった。助かったぞ」
「そう言って頂けると嬉しいです」
俺の話がレオン様の助けになったようだ、良かった。
俺は本来聞きたかった、ダンジョンについて聞く事にする。リオの王都に帰る時期もあるので、リオが居るうちにダンジョンに入っておきたいのだ。
「レオン様、ダンジョンに行こうと思うのですが、リオが帰る時期は決まりましたか?」
「リオの帰る時期か、ルシル王太子妃殿下の体調次第ではあるが、そろそろ冬になるので帰還は長引くかもしれん。アルバトロスから王都に行く方法は聞いているか?」
「いえ、ただレーヴェが船の指揮を取ったから倒れていたとはベスから聞きました」
「基本的には陸路ではなく海路で王都に向かう方が近いのだが、冬は海が荒れやすく、船は航行はしているが危険が多い。ルシル王太子妃殿下が船で帰還するのであれば、春まで待った方が良いだろう」
帰還が早くなければ、リオとダンジョンには行けそうだ。ただ、帰還が早い場合もあるので、一回くらいはダンジョンに連れて行きたい。
「レオン様、帰還が早い場合に備えて、近いうちにリオとダンジョンに行きたいのですが、問題ありませんか?」
「そうだな。だが装備はできたのか?」
「あ! 気が急いていたようです、ジョーに確認してみます」
「リオの装備が出来ていて、ルシル王太子妃殿下が許可を出せば、ダンジョンに行っても問題はない。それと装備で思い出したが、トリスがエドたちの服を作っていたので持っていくように」
「分かりました」
屋敷で服を受け取った後に、魔法協会に戻ってジョーの元へ向かう。
「ジョー居る?」
「居るぞ」
「ジョー顔出すの遅れた、ごめん」
「気にする必要はないぞ。大変じゃったろ、色々聞いとるんじゃ。一ヶ月の旅じゃ疲れとるじゃろ仕方ないんじゃ。それより話を聞かせて欲しいんじゃ」
「分かった。何から話そう?」
「そら勿論、ドラゴンじゃ!」
ジョーはドラゴン好きのようだ。旅の話を聞かせると、ジョーはドラゴン好きと言うかメガロケロスについては聞いて居なかっただけのようだ。
「メガロケロスじゃと!」
「メガロケロスについても聞いているのかと思ってた。違うんだ」
「聞いとらんのじゃ。メガロケロスはワシも一度で良いから見てみたいんじゃ」
「やっぱりアルバトロスの住人はそういう感じなの?」
「そうじゃろな。地方の名前になっとるんじゃが、メガロケロスには森の奥に行かないと会わないんじゃ、普通の人では一生見ることはないと思うぞ」
「確かに奥の方に生息してるな。俺が助けた時は偶然だと思うけど浅いところに居たから」
「それは運が良いぞ」
今度メガロケロスとドラゴンに会わせるとジョーに約束して、俺はリオの装備が出来ているか尋ねる。
「それでリオの装備なんだけど」
「出来とるぞ。時間が有ったからアンの装備とフレッドの装備も作っといたぞ」
「そんなに作ってくれたのか。ありがとう」
「いや、実は途中から他の奴らにアンの装備がバレてしまってな。特殊な弓を作っておったじゃろ?」
「俺がジョーと一緒に作ろうって頼んだやつか」
「それじゃ。訓練場で試し射ちしておったら見られておってな、錬金流派の奴らが興味を持ってしまって、集まって作ってしまったんじゃ。その時に貴重な金属があるのも知られてしまったんじゃ、そっちも色々作ってたらフレッドの装備が出来たんじゃ」
構造は大体決まってたとは言え、コンパウンドボウを作り上げてしまうとは錬金流派の魔法使いたちは凄いな。
「それじゃフレッドを呼んで装備を確認して貰うのと、完成した弓を試し射ちしてみたいな。アンを試し射ちのためだけに呼ぶのもどうかと思うし、俺が射ってみるよ」
「弓は結局、数本できてるんじゃエドとドリーも使うといいぞ」
「そんなに作ったのか、ありがとう」
「気にするなと言うか、他の連中が勝手に作っておったんじゃ。フレッドを呼んで訓練場で試すぞ」
「分かった」
フレッドを呼んで、装備を持って訓練場に向かう。
「ジョー殿、拙者の装備まで感謝致す」
「アンが採掘してきた金属が知られてしまって、何か作らせろと言われてしまったんじゃ。なので気にしなくていいぞ」
「アン殿が掘ってきた金属ですか、と言うことは金属は無くなってしまいましたかな?」
「合金にしとるから全ては使っておらんが、減ってしまったんじゃ」
「それは申し訳ないですな。アン殿に相談して、また掘ってもらえるように拙者から相談してみますな」
「おお! 悪いな宜しく頼むんじゃ」
「承知致した」
アン用の採掘道具なども出来上がっているので、以前より簡単に鉱石は掘って来れるだろう。ジョーにはお世話になってるから、俺からもアンに頼んでみよう。
「それでは、装備を試させて貰いますな」
「存分に試して良いぞ」
「では」
自分の体を隠せるような、巨大な盾をフレッドは振り回し始めた。俺だと魔法格闘術を使わなければ持ち上げる事も不可能だろう大きさの盾だ。それをフレッドは使いこなしている。
「良い大きさと重さですな。気に入りましたな」
「そうか、それは良かったんじゃ。重すぎるかと思ったがそうでもないようじゃな」
「拙者には丁度良いですな。魔法格闘術を使えば剣も安定して振れますな」
フレッドは魔法格闘術無しで巨大な盾を振り回せるようだ、流石獣人だ。
「剣じゃが、意外と良いものができたぞ」
「拙者にはそこまでの業物は必要ないですが、確認してみますな」
「ああ」
フレッドが剣を抜くと驚いている。
「おお、これは凄いですな。剣の重心が非常に良い、使いやすそうな剣ですな」
「鋭さは無いが、重さの割に使い易さは一級品になったんじゃ」
「そうですな。重さの割に振りやすいですな」
「業物では無いかもしれんが、良いものじゃろ?」
「そう言う事ですか、納得致しました」
俺もフレッドに試しに持たせて貰ったが、フレッドとジョーの言う通り、重さの割に非常に振りやすい剣になっている。
「なんか不思議な剣だね」
「じゃろ? もう一回作れと言われると作れるか怪しいんじゃが」
「作れるか怪しいって、ジョーが作ったんじゃないの?」
「皆で作ったんじゃ、勘で作った部分もあって再現できるか怪しいんじゃ」
錬金流派は徹夜で物作りすると言うし、また徹夜で作って色々試したのだと予想できる。
「さて、次は弓じゃ」
ジョーは俺の視線から逃げるように、弓を取り出してくる。
「中々の出来じゃぞ。エドが見た後は辺境伯にも送ろうと思っておるんじゃ」
「レオン様に?」
「そうじゃ。それだけの出来ではあるぞ」
俺が弓を構えようとすると、ジョーに止められる。
「まだ打つんじゃないぞ、矢は鉄の矢を使うのと、的を用意するんじゃ」
鉄の矢を使うのか。鉄の矢を使う的がどんな的かと思ったら、ジョーは訓練場の片隅にあった厚めの鉄板を持ってきた。
「ジョーそんな物、訓練場にあったっけ?」
「塀を的代わりにしてたら怒られたんじゃ。なので廃材集めて鉄板の的を作ったんじゃ」
「それは怒られると思うよ」
「直してはおったんじゃがな。貫通し始めたら怒られたんじゃ」
「この弓で塀を貫通するの?」
「うむ、試してみるんじゃ」
試すのが怖くなってきたが、鉄板以外に当てないように狙って射る。矢は凄い速度で飛んでいって鉄板に傷を付けて弾かれる。
「凄いね」
「それ普通の矢じゃから、次は魔道具の鉄の矢じゃな」
ジョーに言われるまま魔道具の矢を射ると、鉄板に大きく傷がつく。
「鉄板に大きく傷がついたんだけど」
「エドでも貫通はせんか、鉄板がかなり分厚いから仕方ないんじゃが」
「貫通させるつもりだったの?」
「次はこれじゃ」
俺の話を無視して、ジョーは新しい弓を持ってくる。渡された弓を引こうとするが引けない、コンパウンドボウで引けないってどう言うことだ?
「ジョーこれ弦が強すぎて引けないんだけど」
「うむ、魔法格闘術を使うんじゃ」
「そこまでするの?」
「やるんじゃ」
ジョーに言われて渋々、魔法格闘術を使って弓を引くと、引けた。
「おお、引けるんじゃな。後は魔道具の矢じゃ」
ここまで来ると射つのが怖いのだが、ジョーに言われた通りに弓を射ると鉄板を貫通する。貫通したから飛んでいく方向がずれたのか地面に刺さった。塀に飛んでいかなくて良かった。
「おー! 貫通したんじゃ!」
「ジョー、これ訓練場で使うには危ないよ」
「そう言われるとそうじゃな。また怒られるとこじゃった」
「この場所で試し射ちはもうやめよう。ダンジョンで使って使い心地を伝えるよ」
「そうじゃな。頼んだのじゃ」
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