陸路でアルバトロスへ
次の日、俺たちは移動する事になった。徒歩で行くよりは騎乗して進んだ方がいいと、メガロケロスやドラゴンに交渉して騎乗させてもらうことにした。
「エレンさんは慣れた様子でメガロケロスに乗っていますね」
「メガロケロスには初めて乗りますが、馬には乗れます。自然流派は移動が多いですから、乗馬を覚えないと全てを徒歩で移動することになります」
「なるほど。自然流派には移動のため乗馬は絶対必要な技能ですね」
「今回は馬具がないので不安がありましたが、メガロケロスが配慮してくれているようですから、乗っているだけならどうにかなりそうです」
エレンさんと一緒に乗ってるのはエマ師匠で、二人でメガロケロスに乗って行くようだ。メガロケロスだけでは全員乗れないので、一部はドラゴンに乗っているのだが、いつの間にかドラゴンは背中に苔も背負っている。
メガロケロスは本気を出すと結構な速度が出るのだが、ドラゴンと離れないようにゆっくりと移動して行ってくれている。
途中で食べられそうな物を採取したり、襲ってきた魔獣を倒してご飯にしてしまう。夜は見通せないので日が暮れる前に休憩する事に。
ベスが襲ってきた魔獣を食べながら、不思議そうに俺に聞いてくる。
「これだけの魔獣が揃っているのに、襲ってくる魔獣が居るとは驚きですわ」
「意外と居るんだよね。縄張り争いなのかな? 前もメガロケロスに乗せて貰った時に襲われたりしたけど、メガロケロスが角で跳ね飛ばしてたし」
「エドはメガロケロスに結構乗っているんですの?」
「普段は森の奥に行くなって言われてたからそこまで騎乗してないけど、ドリーが乗りたいって言った時とか、メガロケロスがやる気になってる時は乗ったりしてたよ」
そう言えば以前にルーシー様に作った薬と同じ薬を作った時は、メガロケロスに乗って森の奥を探索した時に薬草を見つけた事を思い出す。あの時は薬草を見つけて持って帰ったら、オジジが興奮していたな。
そんな事を思い出していたら、テレサさんに話しかけられる。
「エド、思ったより移動が早いし食料も調達できていますが、食料を調達できなかった時が心配です。メガロケロス領内に入ったら食料を買いに行きたいですが、メガロケロスと騎士だけで移動できますか?」
「俺が付いていれば問題ないとは思います」
「ではエドと騎士で行動する前提で、森から近くて騒がれそうにない場所を考えておきます」
何日か走ると、問題らしい問題もなく、男爵領を抜けてメガロケロス領内に入ったらしい。俺には何処からがメガロケロス領なのか分からないが、テレサさんは地理で分かるらしい。
「メガロケロス領内に入ったので、もう少し森の外側を走っても良いでしょう」
「分かりました」
地理に詳しいテレサさんが、メガロケロスやドラゴンに指示を出して森の中を移動していく。何回か食料の買い出しをしつつ、森の中を移動して行く。
食料の買い出し中に馬用のブラシも買って来てくれ、メガロケロスに使うと毛並みが艶々になっていく。ドラゴンも普通のブラシを買って来ており、掃除して綺麗になっている。
「テレサさん、メガロケロスとドラゴンの見た目を綺麗にしてるのって、辺境伯の前に出すからですか?」
「いえ、馬を世話する時の癖ですね。ただ、騎士の一部はメガロケロスとドラゴンに、愛着が沸いてしまったのか、アルバトロスで仕事がしたいと言っている者も出て来ていまして、アルバトロスに帰ってからも揉めるかもしれません…」
「騎士ってアルバトロスの騎士ではなく、王宮の騎士って事ですか?」
「そうです。簡単に所属を移動できる身分ではないのですが…」
それは確かに揉めそうだが俺には関係がないので、トリス様が頑張ってくれるだろう。
一ヶ月以内にアルバトロスの目の前まで到着した。予想だと森の中を通るためもっと掛かる予定だったが、ドラゴンとメガロケロスの移動速度は思った以上に早かったようだ。
ドラゴンとメガロケロスを連れてアルバトロスの中には入れないので、騎士が走ってレオン様に到着した事を伝えに行った。
「ベス、アルバトロスはもう直ぐだね」
「ええ。リオが心配でしたが元気そうで良かったですわ」
「そうだね。途中で馬車を用意するかと思ったけど、ドラゴンの背中が大きいのも有るのか疲れが少なそうだ」
「魔法使いがこれだけ居るのですから、どうにかなるとは思っていましたが想像以上に順調でしたわ」
「確かに。誰一人欠けないでアルバトロスに辿り着けたし」
会話をしていると、遠目でも存在感でレオン様だと分かる人が、馬に乗って近づいてくる。
「おお! 本当にメガロケロスが目の前に!」
レオン様のメガロケロス好きは本当だったようだ、凄い喜んでいる。レオン様に遅れてトリス様など人が揃い始める。
「レオン急ぎ過ぎですよ、騎士を置いて行かないのです」
「トリスすまない、メガロケロスに会えると思ったら急いでしまった」
「本当に好きなのですね。隣にドラゴンも居ると言うのに」
「確かに、ドラゴンもすごい数が居るな。だが、どちらも良いな!」
話をレオン様とトリス様がしていると、呆れた様子で声をかけてくるレオン様より少し獣人部分が少ない男の子が居る。
「お父様もお母様も、それよりベス姉様が帰って来ていますよ」
「おお、レーヴェそうだな。ベスよ、良く無事に戻った」
「はい。お父様、無事戻って来ましたわ。メガロケロスを連れて!」
「良くやった!」
ベスとレオン様は好みが同じなのだろう、レオン様は大変喜んでいる。
「お父様も、ベス姉様も仕方ないですね…」
ベスの弟だと思われる人物は呆れ返っている、今なら挨拶できそうなので声をかける。
「失礼ですが、ベスの弟ですか?」
「挨拶が遅れました。レーヴェ・フォン・リング・メガロケロスです」
「俺はエドワードと言います。エドと呼んでください」
「よろしくお願いします。エド」
「レーヴェこちらこそ、よろしくお願いします」
俺とレーヴェの挨拶が済んだところで、トリス様が話しかけてくる。
「エド、レオンが使い物にならないので、メガロケロスとドラゴンの移動先ですが候補がいくつか有ります」
「幾つもあるなんで凄いですね」
「辺境伯の土地だけでなく、王家所有の土地も候補に入れていますから数は多いですね」
「王家所有の土地って良いんですか?」
「ルーシーからも許可は貰っています」
どうやらルーシー様にも、ドラゴンとメガロケロスの話は行っているようだ。船での旅も入れると一ヶ月以上経ったが、ルーシー様は元気にしているだろうか?
「ルーシー様はお元気ですか?」
「ええ。動き過ぎないように注意される位には元気です。馬車でこの場にも来る予定ですし」
「この場に来るんですか?」
「ええ。ドラゴンを見たいと」
メガロケロス目当てのレオン様と違って、ルーシー様はドラゴンを見たいようだ。
「ドラゴンとメガロケロスが住む場所の候補ですが、一番有力なのはアルバトロスの直ぐ近くにある、辺境伯が狩猟する時に使う普段は立ち入り禁止にしてある森です」
「そんな森があるんですか、知りませんでした」
「普段は使いませんから知らなくても当然です。狩猟大会を開く時に使う場所なのですが、最近は狩猟は流行りではないですから。なので立ち入り禁止と言っても、厳重にしている訳ではないです。」
「そういった大会にも流行とかあるんですね」
「ありますね。使ってないならドラゴンやメガロケロスが居たところで、問題はありません。他に狩猟できる場所はありますし」
ドラゴンとメガロケロスがその森を気に入れば移住先は決定かな?
「それならトリス様、その森をドラゴンとメガロケロスに確認して貰いましょう」
「そうですね。その前に確認したいことがありますが、ルーシーも来たようです」
ルーシー様が馬車から降りてくる。
「本当にドラゴンです。驚きですね」
「お母様!」
「リオ、無事でしたか。大変だったでしょう、おかえりなさい」
「大変だったけど、ドリーと一緒で楽しかったです」
「それは良かったわ」
俺はルーシー様に話しかける。
「ルーシー様、随分と体調が良くなったようで良かったです」
「エド、随分と良くなりました。動きすぎだと止められる位には動けるようになりました」
「それは良かったです」
俺と会話をしているが、ルーシー様はドラゴンが気になるようだ。
「ドラゴンを触りますか? リオと仲良くなったようなので、一緒なら触っても問題ないと思いますよ」
「お母様、一緒に触りましょう!」
「ええ」
ルーシー様はリオと一緒にドラゴンを触って感動しているようだ。
「凄いですね、本当のドラゴンです。エドはツヴィ王国の紋章を知っていますか?」
俺は急にルーシー様に訊ねられて戸惑う。
「ツヴィ王国の紋章ですか? すいません知りません」
「ドラゴンなのですよ。ツヴィ王国の貴族はドラゴンが好きなのです」
「そうだったんですか。知りませんでした」
あれ? もしかしてフレッドが養子なのも、ドラゴン族が関係あるのか?
そんな事を考えていると、ルーシー様が周りを見回しながら話しかけてくる。
「先に帰ってきた者たちから聞いてはいましたが。これだけのドラゴンとメガロケロスですか、普通でしたら災害指定されそうです」
「連れてきたら不味かったですか?」
「いえ、ドラゴンの群れが分けられて何処に巣を作られるか分からないより、選んだ場所で巣を作ってくれるのなら王家としても管理がしやすいです」
「それなら良かったです」
「男爵にも私とトリスで手紙を書いておくので安心してください。一部とは言え大量のドラゴンが移動して男爵領に被害がなかったのですから、喜ばれるでしょう」
トリス様が俺に話しかけてくる。
「エド、まだレオンが使い物にならないので、私が代わりにドラゴンに質問をしたいのですが良いですか」
「フレッドを介して会話ができるので、話をするならフレッドを呼びましょう」
「それならフレッドの元に行きましょう」
フレッドにドラゴンとの通訳を頼むと、話しかけたドラゴンが群れの長はガーちゃんだから、話すならガーちゃんが良いと言われたとフレッドが教えてくれる。
「ガーちゃんが群れの長だったんだ」
「拙者も初めて知りましたな」
ドリーの側にいるガーちゃんに話を聞きに行く。
「ガーちゃんが話を聞いてくれるそうですな。ベアトリス殿何を聞くのですかな?」
「それでは、森に住む場合の注意点などを話し合いたいのです。ターブ村のようにアルバトロスや村が破壊されるのは困りますから」
そう言えば、伝えに戻った騎士が帰ってからガーちゃんが村を壊した理由を聞いた気がするので、トリス様には詳しい事情を聞いていないのでは?
「トリス様、ガーちゃんたちが村を壊した理由は聞いてあるので、そちらを話してからにしませんか」
「確かに先に戻ってきた騎士から聞いていませんね」
俺はガーちゃんたちが村を壊した理由の違法な植物についてトリス様に話した。
「あの植物を手に入れて育てたのですか。男爵が処刑を強行した理由が分かりました。ですが尚更、どうやって入手したか知りたかったですね。リング王国では手に入れるのが難しいので、どこからか国内に入り込んだものだと思いますが」
「俺も育てたらダメだとは聞いていましたが、入手も難しいんですね」
「そもそも普通に生えているものではないのです。あの植物は魔獣の一種だとも言われています」
獣ですらないので魔獣とは変な感じだが、植物も魔力を持つのか。
「植物なのに魔獣ですか?」
「生えている植物を確認した魔法使いが魔力があると書き残しています。そんな植物が繁殖していないのが不思議なので、ダンジョンから持ち帰った種子ではないかと言われています」
「え? ダンジョンから持ち出した種子って育つんですか?」
「ダンジョンに生えている植物を採取して育てた記録があります。結果は普通に育ったようなので、ダンジョンを深く潜る冒険者には薬草などを採取する場合は、ギルドも注意をしているはずです」
ダンジョンから魔獣は出てこないが、持ち出した物は育つのか。ダンジョンのウシとか捕まえて外で飼えないのだろうか? 一頭しかいないから繁殖は無理なのか?
「フレッド、必要なことがあれば我々も手伝うので、暴れる前に教えて欲しいと伝えて欲しいです」
「分かりました」
フレッドがガーちゃんに相談すると、ガーちゃんも暴れるのは本意ではなかったようで了承してくれたと、フレッドが教えてくれる。
「それならば森へ案内します」
トリス様はレオン様を呼んで、レオン様が自ら辺境伯が管理していると言う森に案内してくれる。
「此処が管理している森だ。メガロケロスとドラゴンの反応はどうだ?」
「フレッドどう?」
「エド殿、レオン辺境伯、この森で問題はないようですが、しばらくは誰も森に近づけないで欲しいとのことですな。森の中でドラゴンとメガロケロスで何かするようですが、拙者には詳しくは理解できませんでしたな。ですが、森の外への影響は極力出さないようにしてくれるそうですな」
「分かった。立ち入り禁止を厳重にしておこう」
ドラゴンとメガロケロスが何かするとの事で、俺たちは辺境伯の屋敷へと戻る事になった。
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