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しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


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20/151

噂とお願い、そして思いつき

 セオさんは、辺境伯の屋敷に自分の馬車で来たと言うので、薬師組合までは別々の馬車に乗って、組合で合流することなった。

 組合に着いて中に入ると、グレゴリーさんが近づいてくる。


「エマ様、エドワード様、ドロシー様、本日はどのような御用で?」

「今日は以前の相談の続きと、紹介したい人がいて、部屋をお願いできますか」

「分かりました、少々お待ちください」


 グレゴリーさんは部屋を用意してくれ案内される。

 席に座ると、まずはセオさんを紹介することにする。


「グレゴリーさん、紹介したいのはセオさんなんだ」

「商人のセオドアと申します」

「薬師組合のグレゴリーと申します、セオドア様よろしくお願いいたします」

「こちらこそグレゴリーさんよろしくお願いいたします。魔法使いではないので普通に呼んでいただいて問題ありません」

「分かりました、セオドアさん」


 そう言えばグレゴリーさんが俺たちに最初に会った時は、エドワード様と呼んでいなかった気が?

 グレゴリーさんが俺たちを様付けで呼ぶのは、魔法使いだったからだと初めて知った。


「グレゴリーさん、俺も普通に呼んで貰って問題ありませんよ?」

「魔法使いは組合のお得意様ですし、薬師は基本的に魔法使いを尊敬していますので」


 セオさんが、グレゴリーさんの説明を補足してくれる。


「薬師が尊敬していると言うよりは、リング王国民なら尊敬していると言った方が、いいかもしれないですね。強大な魔物を倒し、病気や怪我を治してくれる存在ですから」

「そう言われると、魔法使いは凄い気がしますね」

「気がするのではなく、凄いのですよ」


 ターブ村での生活だと実感したことが無かったが、一般的な視点だとどうやら違うようだ。

 俺が納得していると、グレゴリーさんは俺に話しかけてくる。


「と言うことで、私がエドワード様と呼ぶことを許してください。薬師は最終的な目標として、魔法使いを目指していたりする人もいるので」

「魔法使いを目指しているんですか?」

「正確には、魔法薬を目指しているでしょうか」

「それは薬師として、ちょっと理解できます」

「そうですか、エドワード様も薬師ですね」

「なんとなくですが、分かりました。薬師の中で気にする人がいるって事なんですね」

「その通りです、組合職員としては対応が難しい所なのです。エドワード様は魔法使いになったばかりで、今までとの違いに戸惑うでしょうが、組合職員としてお願いします」


 魔法使いになったことで生活が大きく良い方向に変わった。

 その変化は、俺とドリーを普通以上の生活にしてくれている。

 グレゴリーさんの話を聞いて、尊敬されている魔法使い達のように、俺もなりたいと思うようになった。


 決意を新たにしてし、話の腰を折ってしまったことに気づいて謝る。

 セオさんが気にすることはないと言ってくれる。


「すみません、話が逸れてしまいました」

「いえ、エドさんはこれから更に常識が分からない場所に立たされます。私に答えられることなら答えますので聞いてください」

「ありがとうございます」


 話の仕方的に、どうやらセオさんは俺のことを結構聞いてるらしい。

 組合に来る前にどのくらい聞いているのか、聞いておけば良かったかもしれない。

 グレゴリーさんは、更に分からないことが商会のことだと思ったようだ。


「もしや常識が分からないと言うのは、商会のことでしょうか」

「それもありますが。エドさんはグレゴリーさんに、どこまで説明を?」

「すみませんセオさん、逆に質問で申し訳ないんですが、セオさんは俺とドリーの事をどこまで聞いていますか」

「そう言えば、言ってませんでしたね。ベアトリス様とテレサから出自のことだとか、エドさんの今後などは聞いて、協力するようにと言われています」


 グレゴリーさんに聞こえない小語で、セオさんは説明してくれ、俺は納得する。


「それならグレゴリーさんは組合員になる時に、対応してくれた組合職員なので、俺の出自は知っています」

「それならば、協力をこのまま願う為に、エドさんの今後を話しましょう」

「良いんですかね?」

「グレゴリーさんにも、悪い話ではありませんから」


 俺が騎士になる可能性があるのが、グレゴリーさんに悪い話ではないと言うのが理解できないが、口止めすれば話しても問題はないと思うので、話すことにする。


「グレゴリーさん、俺は騎士にならないかと話をされて、とりあえず貴族の知識だけは勉強することになったんです」

「エドワード様が騎士ですか!」

「俺もよく分からないままに、ベスの騎士候補になっています」

「なんと」


 俺の説明不足や、俺も知らなかった事情をセオさんが補足してくれる。


「グレゴリーさん、私が少し補足をします」

「セオドアさん、お願いできますか」

「エドさんが騎士にならないかと言われたのは、エリザベス様の独特な問題があります。エリザベス様について噂は聞いたことは?」

「その…非常に活発な方だと」

「グレゴリーさん、エリザベス様の噂を知っているとは流石ですね、エリザベス様はその認識で合っています」

「それが何故エドワード様の騎士になることと関係が?」

「活発すぎて同年代の騎士候補がいないのです、大半の候補は辞退されてしまいました」

「名誉あることですが、辞退ですか?」

「護衛対象に負ける騎士は、辛くありませんか」

「それは…」


 あれ、セオさんの説明だと俺もベスには負けるんだけど?


「あのセオさん、その説明だと俺もベスには負けますよ?」

「エリザベス様は勝ち負けで騎士を選ぶとは言っておりませんので、候補側が辞退しているだけですね」

「自尊心が保たないと言う話ですか」

「そうです、エドさんはあまり気にしていないでしょ?」

「ベスが凄いなとは思うけど、確かにそれに守るのと勝つのは別だと思うし」

「エドさんの年齢だと、普通そう理解するのが難しいという話ですね」

「なるほど」

「それとエリザベス様が、エドさんを気に入ってるのも大きいと、姉のテレサが言っていました」


 ベスが俺を気に入っていると言うのは、少しだけそうかなとは思っていたが、付き合いの長いであろうテレサさんが、言うならそうなのだろう。

 グレゴリーさんは、納得がいかない顔でセオさんに話しかけている。


「エドワード様が、エリザベス様の騎士候補であると言うのは分かりましたが、私に話をした理由が分かりません」

「グレゴリーさんは、エドさんとドリーさんの出自を知っていますね」

「はい、組合に登録時必要な情報だったので、知っておりますが」

「それを秘密にして頂きたい。手紙で残すのも不味いとの事で口頭ですが、ベアトリス様からの命令だと思って頂ければ」

「分かりました」


 グレゴリーさんは顔を引き攣らせて了承する、そんなグレゴリーさんを見たセオさんは苦笑しながら落ち着かせる。


「貴族間で揉め事にならないためにする事で、出自をばら撒かなければ問題ありませんので」

「騎士となるなら、エドワード様の出自は問題になる可能性がありますね」

「ええ、なので薬師であるとか、魔法使いであるとかの問題なさそうな事は言っても問題ないので」

「分かりました、騎士候補というのも秘密に?」

「とりあえずは、グレゴリーさんだけの秘密にしておいてくれると嬉しいですね。徐々に噂にはなると思いますので、グレゴリーさんまで噂が流れてきた時に、事実だと認めて頂いて問題ありません」

「そういう事ですか」

「はい」


 セオさんとグレゴリーさんが怪しい話をしている。

 騎士候補だという噂をばら撒くのだろうと思うが、出自とかも同時に偽装するのかもしれない。

 セオさんとグレゴリーさんの会話は続いていく。


「後は先ほど話題に出ましたが、商会を立ち上げるので手伝って頂きたいのですが、人材を選んでいるのはグレゴリーさんですよね?」

「人材を選んでいるのはその通り私ですが、やはり商会を立ち上げることになりましたか」

「ええ、立ち上げる商会としては、人材と材料の仕入れを組合からできるなら嬉しいですが、無理なら協会に頼むことになるかと」

「エドワード様とドロシー様が組合員なので、材料に関しては売ることは可能ですが、組合にも在庫が無限にあるわけではないので、量が問題になります」

「ちなみに、量が確保できないものは分かりますか?」

「セオさんも予想していると思いますが、魔法使いでないと用意できないものがあるので、それが一番問題になってきます」


 やはり俺たちと同じ予想で、問題になるのは魔法使いが用意する素材のようだ。

 セオさんは組合に来る前に話した内容を、グレゴリーさんに説明する


「やはりそこが問題ですか。一応解決策みたいなものは、エドさんたちが提案してくれたのですが」

「どういうものか、聞いても?」

「協会内でシャンプーとトリートメントを配っていたらしいのです」

「なるほど。欲しいなら素材を作るしかないと、交渉をするのですね」

「はい」

「それなら何とかなるかもしれませんね」

「ただそうすると売った場合に、どれだけの量が必要かが分からなくなりまして」

「確かに、それは困りますね」

「水車を一基借りられることにはなったので、当分は一基分で作れる量になります」

「となると協会に増産願いを出しつつ、作っていくのが良いかもしれません」

「分かりました、そうしましょう」


 俺は口を挟むことなく、セオさんとグレゴリーさんが、量産について話を詰めてくれて非常に助かる。

 セオさんはまだ続きがあったようで、グレゴリーさんに話しかける。


「後は、グレゴリーさん、商会に名前を貸してくれませんか」

「私の、ですか?」

「はい、お礼も兼ねてですが、ドリーさんが将来薬屋をやりたいと言っているので」

「それならば、私で力になれるのならば名前を貸しましょう」

「助かります」


 グレゴリーさんが名前を貸してくれるらしく、組合との繋がりが強くできるので、商会としては安定しそうだと考えていると、グレゴリーさんが質問してくる。


「ところで、商会の名前は決まったのですか」

「「あー…」」


 俺とセオさんは顔を合わせて、セオさんが仮だと強調して伝える。


「まだ仮なんですが、エリザベス商会と」

「え!」

「エリザベス様は許可を出したのですが、ベアトリス様の許可がまだなので。仮です仮」

「エリザベス様は許可してるって、ベアトリス様の許可が出たら、仮が外れるってことでは?」

「そうです」

「私が、そこに名前を?」

「はい」


 俺の思い付きがグレゴリーさんを絶句させており申し訳なくなる、セオさんが投げやり気味に。


「元々が辺境伯が後ろ盾の商会ですから、ちょっと大袈裟になっただけですよ、ハハハ」


 セオさんの感情のこもっていない笑い声が、部屋にこだまする。

 二人が落ち着いたところで、二人に謝る。


「すみません、俺の思い付きで」

「エドワード様が謝られることではありません、ただ少し荷が重いだけですので」

「私としても、商人としては最適解ですので気にする必要はないですよ。私としても少々荷が重いだけなので」

「すみません」


 ベスの名前を使った商会は思った以上に重みがあるようで、グレゴリーさんとセオさんは悟りを開いたような顔をしている。


「選んでいる人材ですが、もう一段厳しく厳選しようと思います」

「グレゴリーさん、申し訳ないです」

「元々かなり慎重に選んでいたので、問題はありませんよ」

「ありがとうございます」

「現在の候補の書類を見てみますか?」

「良いんですか?」

「ええ」

「ではお願いします」

「分かりました、少々お待ちください」


 そう言ってグレゴリーさんは部屋を出た、書類を取りに行ってくれたようだ。

 少しするとグレゴリーさんは、書類を手に戻ってくる。


「お待たせしました、話を受ける気があるものだけの書類です」

「ありがとうございます」


 見ていくと大半が組合員だったり、組合員の弟子で見習いをしている人の書類が意外と多い。


「こんなに候補が居るんですね」

「アルバトロスは平時には薬師があまり気味ですからね。輸出用に作ったりしているので仕事に困るという事はないですが、緊急時には薬師が足りなくなるんです。難しい問題ですね」

「なるほど、それで多いんですか」

「ええ、気になった方など居ますか」


 グレゴリーさんに尋ねられ、実は見ていた書類で気になった人がいる、薬師で弟子の人数も多いのに、何故か書類が混じっている人が。


「この弟子が多い方は、なんで参加しようとしているんですか」

「どなたでしょう」

「バーバラという方なんですが」

「ああ、バーバラさんですか」

「どういう人なんですか」

「アルバトロスにも治安がいい場所と悪い場所がありまして、バーバラは貧民街の近くで薬屋をやっている方ですね」

「儲からないからって事ですか?」

「いえ、困っている子供を拾ってきては、弟子にしているので余裕がないのです、今回の話を聞くとバーバラさん自身でも、弟子でもいいからと言われています」

「そうなんですか」


 自分の境遇を考えると助けたくなる気持ちもあり、迷っているとセオさんが話に入ってくる。


「エリザベス様の名前を冠した商会が、貧民街の救済という意味でも良いかもしれませんね」

「ベスの迷惑になりませんか?」

「貧民街は消そうと思っても、アルバトロスでは中々消えるものではないので、辺境伯も苦慮していると、噂ですが聞いたことがあります」

「セオドアさんが言ったように、私も同じ噂を聞いたことがあります」

「グレゴリーさんもですか。治安の悪化を抑える意味もありますから、噂は本当なのかもしれません」

「それではセオドアさん、エドワード様、まずはバーバラを有力な候補として、残しておくのはどうでしょう」

「俺はそれで良いと思います」

「商会の名前の事もありますから、私の方から屋敷に戻って一度聞いておきます」


 バーバラさんは有力候補として残し、セオさんがトリス様に尋ねに行ってくれるようだ。

 本日できる相談は以上となって、解散することになった。

総合日間ランキングBEST300内に入ることができました。

読んでくれた方、ブックマーク、評価してくれた方本当にありがとうございます

これからも続けられる限りは毎日投稿していきますのでよろしくお願いします

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