祝福
アルバトロスの街中を回るという計画は準備をしていくと、徐々に話が変わっていき、何故かドラゴンやメガロケロスに乗って街を回るという話になって行った。
ガーちゃんに相談すると、一緒に街中を回る事に乗り気だった為、実現する事になった。
ドラゴンやメガロケロスの子供も参加するとの事で、警備はしっかりする予定だ。ガーちゃんに管理者になったと伝えて行った時に子供は見せて貰っているが、子供はとても可愛いので女性陣が可愛いと騒いでいた。
ここまで大事になったら俺とベスだけではなく、皆も一緒に街中を回る事になった。
俺とベスが衣装を合わせている間に、回る道や警備が決まっていき、気づいたら婚約発表の当日となった。
「衣装が間に合って良かったですわ」
「トリス様に感謝だね」
俺たちの衣装はトリス様が事前に準備をしていてくれたので、すぐに完成した。
ベスの衣装はリング王国の正装だという軍服にも近いメガロケロスが書き込まれた家紋入りの服を着ている。祝い事なので装飾が多く、ベスの場合は女性なので服装品が多いようで、軍服のようだが華美な見た目で綺麗に見える。
俺はツヴィ王国の正装に近い衣装を用意されて、リング王国の正装とほぼ同じ軍服のような見た目だが、俺にはメイオラニアの家紋が入っている。元の服は似ているのだが、ベスとは男女の差もあって違う見た目をしている。
「エド、皆の準備ができたようですから、私たちも行きますわ」
「うん」
ベスの手を取って二人で皆の元に向かう。俺とベスは最終的な確認をされていたので別に部屋にいたが、出発は屋敷の入り口なので皆とはそこで集合する事になっている。
皆も俺やベスと同じような衣装を着ており、普段と違って着飾っている。
ドラゴンに乗るかメガロケロスに乗るかで色々と話し合いがされたのだが、俺とベスはメガロケロスに乗って、フレッドとアンはドラゴンに、ドリーとリオはガーちゃんに乗る事になっている。
俺とベスが騎乗すると、皆が騎乗をした。その後に、周囲を警備する騎士たちが騎乗を始める。
屋敷の門が開かれると、騎士たちを先頭に隊列が組まれて行進が始まる。
順番に進んでいくと、俺たちが屋敷を出る番になり周囲を守られながら進んでいく。屋敷の中からでも人が大量にいるのは分かっていたが、屋敷から出ると凄まじい人の数だ。
「これは凄いな。遠征帰りより多いんじゃ?」
「ええ。そう見えますわ」
歓声が上がる中で俺とベスが手を振ると、歓声の声が大きくなる。手を振るようにと事前に言われているので、周囲に手を振りながら進んでいく。
隊列はまずエリザベス商会の近くを通る事になる。 エリザベス商会の前にはセオさんや商会の皆が並んでいる。俺とベスが皆に手を振ると喜んでくれているのがわかる
商会の皆が並んでいるだけではなく、エリザベス商会全体が花や布で装飾がされており、いつも以上に見た目が綺麗になっている。
「皆、喜んでくれたみたいだ」
「準備をするのに無理をさせてしまいましたから、喜んでくれたのは嬉しいですわ」
隊列が進んでいくと、次に見えてくるのは魔法協会だ。協会の周りには人が多く、魔法使いも多くいるようだ。ジョーやエレンさんも居るし、知り合いの魔法使いが多く見に来てくれたようだ。
人が多すぎるからか、空を飛んでいる者もいて協会の周りは賑やかだ。
更に俺とベスが通ると魔法の花火が打ち上げられた。華やかになったと同時に歓声が上がる。
「いつの間に花火の魔法を覚えたんだろ?」
「今日のために覚えたのかもしれませんわ」
協会と過ぎると次は薬師組合で、組合の前にはグレゴリーさんや組合の職員が前に出てきているのが見える。
俺とベスが通ると花吹雪が組合から飛ばされた。
飛んできた花吹雪を一つ取ってみる。
「これは薬草の花かな」
「エドの祝いには丁度良いものですわね」
「そうかも」
花びらが舞う組合を通り過ぎると、次はギルドが見えてくる。
ギルドの前にはライノや組合の職員が並んでおり、ライノの隣にはケネスおじさんやオジジの姿もあり、ターブ村から移住してきた皆の姿が見える。ターブ村の皆以外にも冒険者も大量に並んでいる。
俺とベスが通ると冒険者から大きな歓声が上がる。
「ターブ村の皆が居たのは驚いた。それと思った以上に冒険者から祝われるんだね」
「アルバトロスでダンジョンを踏破したのは初めてですから、その為に思ったより人気があるのかもしれませんわ」
街中を順番に回っていく。どうしても俺とベスが貧民街を回りたいと言った為に、準備段階でかなり無理をして貰った。
貧民街に近づいていくと、人の数が増えていく。バーバラさんの薬屋を通ると、バーバラさんやアンの兄弟弟子が集まっている。
バーバラさんの薬屋を通り過ぎると、貧民街へと辿り着く。
新しく通された道を通って工場や倉庫が建設予定の場所へと向かうと、今は広場のように広い場所に大量の人が集まっているのが見える。
俺とベスが広場に入ると、凄まじい歓声が上がった。ベスとの会話もできないほどの歓声だ。
広場を回ると、大きな道が他にないため、元きた道を通って移動する。
「想像以上に凄かったな」
「エドが頑張った結果ですわ」
俺やドリーと似たような境遇の子供を助けたいと思った事が、ここまでの事になるとは思っていなかった。
今も貧民街を無くすために、エリザベス商会やレオン様が色々っと手を打ってくれている。だから俺だけの力ではなく、皆の協力があって、結果的に貧民街はかなり改善されていったと思っている。
「頑張ったか。皆のおかげだよ」
「エドが考えなければ始まらない事でしたわ」
隊列はアルバトロスの街を回って、屋敷に戻ってくる。
屋敷の前で隊列が一度止まると、屋敷の中から魔法の花火が打ち上がる。協会の魔法使いたちが花火の魔法を使えたのはこのために練習していたからなのか。
花火が終わると隊列は再び動き出して屋敷の中に入っていく。ドラゴンとメガロケロスを連れて屋敷の庭に向かう。
街中を回るのは終わったが、これから貴族への婚約の発表と管理者になったことの説明が屋敷の庭で続く。レオン様やトリス様に手伝われつつも、なんとか全ての予定を終わらせられた。
全ての予定をこなした俺とベスは、二人で疲れた体を休めている。
「ダンジョンとは違った疲れがあるよ」
「私はダンジョンの方が楽ですわ」
「ベスらしいな」
休憩をしながらベスと話をしていると、ベスが近づいてきた。
「私は今とても幸せですわ」
「ベス、俺も幸せだよ。アルバトロスに来る前は、こんな事が起きるとは思ってみなかった」
俺はベスを抱き寄せると、顔を近づけた。
終わり方に悩みましたが、このような形になりました。
以降は外伝のような形で不定期での連載をしようと思っています。




