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17話



予定通りスーパーでカレールーと人参を購入。月美は人参が嫌いだったのか手に取ったときあからさまに嫌そうな表情を浮かべていた。嫌いな食べ物とかあるんだな。入れるけど。


その帰り失ったアーゲンダッツを補充しにコンビニへと寄る。


「あ、あのー、ちょっと購入してほしい物がありまして」


申し訳無さそうに彼女は言う。


「お菓子?」

「違います!......あ、お菓子も食べたいけど」


お菓子じゃないのか。てっきりお菓子だと思ったんだが。まあ、お菓子も要求されたが。


「何がほしいんだ?」

「えーと......」


なんか言いづらそうだな。しかしお菓子でないとすると......なんだ?


「.......あ、あれなんですが」


指差す先には女性用下着が。


「す、すまん。気が付かなくて」

「あー、あはは、いえいえ。......なんかすみません」


かあーっと頬を赤くする月美。きっと俺も同じ顔をしているに違いない。


「えっと、じゃあハイ」


俺は一万円を手渡す。


「こんなにっ!?」

「下着以外も必要な物があるだろ。それで足りなかったらまた言ってくれ」


「ふああっ、い、いちまんえん......!」


目をキラキラさせる月美。


「あの、漫画とかお菓子とか買ってもいいけど、程々にな」

「はっ!......た、大切に使います!あはは、は」


欲に支配された顔してたからな。一応釘を刺しとかないと一瞬で一万が消失しそうに思えた。


しかし、やっぱり月美......元は人っぽいな。買い物している姿にもぎこちなさはなく。至って普通のよく見かける若い少女だ。(容姿の可愛さは普通ではないが)


.......まあ、だから何だという話ではあるけど。


「俺、ちょっと外で待ってるわ」

「!、わかりました!すぐに買い物済ませます!」

「いや、急がなくて大丈夫だ。慌てないでゆっくり買い物してくれ」


俺がそういうと彼女はひとつ頷く。親指を立て「りょーかいです!」と笑った。


ドアを押し開け、建物の横に設置されている木造のベンチへ腰掛ける。何気なしにスマホをいじり、時間を潰す。


蛙の合唱が聴こえてくる。ふと見上げると薄く月が登っていた。


(......明日、仕事か)


「へいへーい!」


そういいながら俺の横に座る月美。


「よー、兄ちゃん!ひとりぃ?ちょーっと私とお茶しなーい?」

「......なんで逆ナンされてんだ俺は」

「あははは。いやあ、なんか寂しそうにしてたから」


「......!」


思わず息を呑む。


「まったく〜。私が少し居なかったからって......仕方ない人ですね!私が居ないとダメなんだから〜。はいっ」


左手を差し出す月美。俺はその手を見つめ、ゆっくりと月美の顔へ視線を移す。


「......な、なんですか、じっと見て」

「いや。そうかもなって」

「?、そうかもな......?」


彼女の手を取りベンチから腰を上げ、俺はこう言った。


「月美が居ないとダメかもな」


座ったままの月美が俺を見上げ、きょとんとしている。


「.......え、あ。......あー、ね」


妙な返しをしつつ、月美もベンチから腰を上げ立ち上がる。


「なんでお前が照れてるんだよ。お前が言い出したんだろ」

「あ、いやあ、素直な道定可愛いなぁって......あはは、恥ずかしくなっちゃいますねえ」


可愛い......だと。今までの人生で言われたことの無い言葉。嬉しさと羞恥心が腹の奥から迫り上がってくる。


(ぐっ、がは......やるやないか、月美ぃ!)


カウンターからのカウンター。互いの臓物をえぐり合う。そんな感じの痛み分け。無表情を維持するが、いつボロがでるかも分からない。なので俺は適当に会話を振る。


「月美は歌上手いんだな」

「え?」

「ほら、風呂場で歌ってただろ?」

「ああ、聞こえてたんですか......」

「意外と響くみたいだな。俺もお前が歌ってるのを聞いてはじめて知った。......あれ、なんて曲なんだ?」


「あれはですねえ。......あれは、なんという歌なんでしょう?」

「え?いや、知らんが」


うーん、と顎に手を当て考え込む月美。


「......不思議なんですよね。大好きな曲、だという記憶があるんですが......なぜか思い出せないんです」

「......」


「白いもやがかかっているような......そんな感じで。帰ったらYouTubeで探してみますね。歌詞とか検索かけて」


にこにこと笑う月美。手を繋いでない方の右手がプランプランと激しく振り回されている。褒められて嬉しいのか。


「今度カラオケでも行こうか」

「カラオケ!?」


ばっ!と彼女はこちらを見る。目をまんまるに見開き、口をあんぐりと開けている。


「......カラオケは知らないのか?」

「いえ!知ってますよ!?バカにしないでくださいっ!!わあー!カラオケ大好きです!行きたいです!!」

「おお......そっか、わかった。それじゃあ、来週の土曜日にでも行こう」

「やったあーっ!!」


「!?」


どんっ!と俺の胸に頬ずりをし始める月美。唐突にくりだされた猫的喜びの頬ずりに俺は焦りつつもどうすることも出来ず、なすがまま立ち尽くしていた。


「み、月美!わかった、わかったから!!落ち着け!!」

「ふにゃああ、......はっ!」


ばっ、と離れる月美。身構える彼女に、いやお前からきたんやろと内心ツッコみつつ俺も固まる。


「す、すみません......嬉しくてつい」

「......いや、大丈夫だ」







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