1章 6話 失態。。
1章 6話 失態。。
コーヒーを飲みながら私は無機質な壁に聴診器を当てている。
声は、、
意外と聞こえるな。。
何やら2万とか聞こえる、、
そして、、
始まった、、、
喘ぎ声が耳元で、、
私はらんを見た。
まるで動じる事なく、先程撮ったであろうカメラの写真を見ている。
あらら、、、
これは完全だな。。
さっきの小柄な可愛らしい子が、、
なんて思う程私は純情ではない。大体の女は実はセックす好きだ。
相手次第ではとても乱れる、、
しかし、私は他人の喘ぎ声を聞いても動じない。女の事では動じない。その為に色々経験してきた。
そう、、動じない、、
と思いながら、、
らんを見た。いや、、見てしまう。。
何気に、脚から見てしまう。すらっとしたいい脚。
こんな超美人でも男の経験はあるよな。まあ、それはあるか。でも、意外とこうゆう女にかぎってMなんだよな、、
あーあ、、いい女、、
と、思いっきり動じてしまっている自分がいた。
しかし、、段々と他人の情事を聞いていたが、、最初だけだな興奮するのは。。
部屋の暖房が効いてきたせいか、証拠を録音して安心したからなのか、いささか眠くなってきた。。
らんは何やら携帯を見ている。
ん?名前、、?
『さちこ』とか聞こえたな、、
まあ、。いいか、、先程の2万とかが気になるが、、
私は眠気と戦いながら、必死に壁に聴診器を当てていた。
、、、、
ふと気がつくと、らんが後片付けをしている。
「帰りますよー。」
聴診器を片付けながら私に話しかけていた。
ん、、、
眠っていたのか、、
時間は、、
21時過ぎ、、
3時間近くも経っていた。。
よっぽど疲れていたのか、不覚にも寝てしまった。。
「あ、すいません、、寝てしまったようで、」
私はらんに謝ったが何も言わずせっせと片付けをしている。
「さあ、行きましょう。」
らんは手際よくフロントに電話をして外に出ようとした。
私は気まずいながらもらんに続いて部屋を出た。
先程の『203』の前でしゃがみこみ、何やら拾っていた。
さっき言ってたマイクか、、
らんはすぐにポケットに入れ、エレベーターに向かう。
ホテルの外に出ると私が運転するわ、と言って車の鍵を要求した。
助かった、、
正直私はまだ眠かった、、
らんの運転で事務所に向かった。
車内で私はらんに聞いた。
「隣はもういないんですか?」
「30分前に帰ったわ。」
「途中で寝てしまったので聴診器を壁から離してしまったけど、、」
「大丈夫よ。 こっちのでちゃんと録音されてたから。どうやら出会い系みたいね。。さちこちゃん。」
「え?出会い系?」
「あなたが寝ている間、携帯で出会い系のサイトを色々見てたら、あの子の写真とさちこって名前の子がいたわ。」
ん?
確かに眠りこんでしまう前、らんは携帯を触っていた。
そうか、、あの女の子を調べてたのか、、
不倫調査を軽くみていた私は恥ずかしくなった。
事務所に到着する、、
石井所長がいた。
「お疲れ様、、らん、。石川君。どうだった?」
らんは、
「バッチリ、、これで後は3日後の出張とやらについていけばクライアントのご要望には応えられると思います。」
私は、バツが悪そうに石井所長に言った。
「すいません、、私は部屋に入ってすぐに寝てしまって何もできませんでした、、」
石井所長は、明るく私を励ましてくれた。。
「大丈夫よ。石川君。あなたが一緒にいてくれたおかげで、ターゲットに近づけたのだから、探偵はチームプレイよ。」
私はなんて優しい人だと思った。
提携、、ここの事務所にして良かったなとも思った。
「さ、、今日はもう上がりましょう。次は3日後の1泊2日の出張とやらね、じゃあ、3日後の朝、、」
話しながら、石井所長はらんを見た。
「奥さんの話ですと、朝7時に家を出るそうです。」
らんが答えるのを確認すると、石井所長はうなずきながら、
「じゃあ、朝5時に事務所集合ね。」
私は、分かりましたと言って、今日の時給を受け取り事務所を出た。
少し落ち込んでいた。
途中ラーメン屋に寄り遅めの晩御飯を食べて家に帰った。
ずっとらんの事を考えていた。
あの超美人、、愛想はないけど、中々のやり手だったな。
資料も見ずにナビで住所検索して、車でホテルに入る時もすぐに入ってと指示を出し、隣の部屋のドアにマイクを仕掛ける時の手際の良さ、そして、相手の女の子の名前と顔を見ただけで出会い系のサイトの女と分かり、
何より、時間に余裕を持ってターゲットの会社に向かった。
私はらんという女に尊敬の念を抱きながら眠りについた。




